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「目が白い」=「白内障」?

24年07月19日

歳をとるにつれて愛犬の目が白くなったと感じている方は多いのではないでしょうか。

「これって白内障ですか?」というご質問をよくお受けします。

実は「目が白い」=「白内障」ではありません。

今回は高齢のわんちゃんの目が白く見える代表的な疾患である「白内障」と「水晶体核硬化症」についてご紹介したいと思います。

※若齢の場合や、急に目が白くなった場合、痛みを伴う場合は別の疾患の可能性や早期の対応が必要になる可能性がありますのでお早めに獣医師にご相談ください。

「白内障」と「水晶体核硬化症」は、どちらも「水晶体」という目のピントを合わせる役割をしている構造物の変化により生じる疾患です。

「水晶体」の線維は一生涯成長を繰り返しますが、水晶体の大きさはさほど変わらないため、加齢とともに線維数が増加し、中心部分(核)の密度が高くなり固くなります。これが「水晶体核硬化症」です。水晶体線維の構造や配列は正常であるため、視覚にはほとんど影響しませんが、水晶体が青灰色に見えるため、白内障と誤認されることがあります。この「水晶体核硬化症」は10歳齢までに50%以上の犬、13歳齢以上ではほぼ全ての犬が罹患すると報告されています。加齢性の変化であり、視覚にもほとんど影響しないため治療対象にはなりません。

 

一方で「白内障」は、本来透明であるはずの水晶体が様々な原因で変性し、不透明になった状態で、進行に伴い様々な程度の視覚障害を引き起こします。さらに、水晶体起因性ぶどう膜炎を発症し、緑内障や網膜剥離、水晶体脱臼を引き起こす可能性もあります。

白内障は老齢性(加齢性)以外にも、遺伝性や先天性、代謝性、外傷性などの原因により分類されますが、老齢性の白内障は大型犬では7歳齢以上、小型犬では9歳齢以上で見られると報告されています。

白内障の根本的な治療は白内障手術です。専門的な手術なので実施可能な病院は限られています。当院では手術が適応になる可能性がある症例は専門の病院を紹介しております。

手術が適応にならない症例においては、定期的な経過観察および水晶体起因性ぶどう膜炎の治療を行います。老齢性初発白内障の進行防止剤として承認されている点眼薬や、人の白内障進行予防に有効とされている成分を含む動物用サプリメントを使用する場合もあります。

「水晶体核硬化症」と「白内障」が併発している場合も多いため、愛犬の目が白くなってきたかも?と感じられた際はお気軽に獣医師にご相談ください。

Y.O.

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腹部超音波実習

カテゴリー:セミナー

24年07月16日

71516日に福岡県で実施された腹部超音波集中実習に参加いたしました。

講師はアメリカ獣医放射線学会認定専門医の宮林孝仁先生です。

まずはそれぞれの臓器の超音波解剖を学び、実際に宮林先生の飼育されているわんちゃんとねこちゃんに協力していただき、臓器の描出の練習をしました。

エコープローブの持ち方にもコツがあり、解剖を理解し決まった流れや角度で当てることで、臓器を確実に描出することができ、見逃しも防ぐことができます。また、動物の保定方法でエコーの当てやすさが大きく変わることも学びました。

すばやく確実に臓器の描出ができれば、わんちゃんやねこちゃんの負担も減らすことができます。今回の実習で学んだことを日々の診療に活かしていきたいと思います。

Y.O.

猫ちゃんの特発性膀胱炎

24年07月12日

猫ちゃんの下部尿路(膀胱や尿道)疾患である膀胱炎では「特発性膀胱炎」と呼ばれるものが1番多く、再発率も高いです。

「特発性膀胱炎」とは、細菌や結石、腫瘍、奇形などではなく、原因が明らかでないものを言います。

無治療でも1週間程度で改善することもありますが、繰り返す場合や症状が重い場合は猫ちゃんのQOLの低下や炎症により尿道閉塞などを起こす可能性もあるため早めの治療が必要です。

要因としては、ストレス、ドライフードのみの食生活、肥満、飲水量が少ないなどが考えられます。

症状は、長時間の排尿姿勢、有痛性排尿(唸ったり、鳴いたりする子もいます)、頻尿、トイレ以外での排尿などがあります。

このような症状がある場合、尿検査や画像検査、血液検査等を行い、結晶や結石、腫瘍、細菌感染、奇形などが明らかにない場合特発性膀胱炎と診断します。

治療法は、トイレや飲水装置などの生活環境の改善、ウェットフードへの変更、お薬(三環系抗うつ薬、抗生剤、鎮痛剤など)の使用などが主です。

猫ちゃんのQOL維持のため、膀胱炎の症状があれば早めにご相談ください。

また、お家の猫ちゃんのトイレなどの環境(例えば、猫ちゃんのトイレは猫ちゃんの数+1つ)を1度見直してみましょう!

M.I.

ネコちゃんのうんちに虫が...!!

24年07月05日

愛する家族であるネコちゃんを脅かす病原体は細菌やウイルスだけではありません。寄生虫もまた飼い主様が注意してあげなければならない病原体の1つです。 

今回は数ある寄生虫のなかでも「マンソン裂頭条虫」と呼ばれる寄生虫を紹介します。 

 

マンソン裂頭条虫はいわゆる「サナダムシ」と呼ばれる寄生虫の仲間で、成虫は1~2メートルほどの白くてやや幅広い、まるできしめんのような見た目をしています。マンソン裂頭条虫は主に誤ってカエルを食べてしまったネコちゃんの小腸に感染します。 

 

この寄生虫に感染した場合、実は激しい症状を示さないこともあり、飼い主様がネコちゃんのうんちの中に出てきた虫体を発見して動物病院に連れてこられる例も多いです。ただ寄生虫の虫体が非常に大きいため、小腸での栄養の吸収を邪魔して痩せてしまったり、なかなか治らない下痢を引き起こしたりすることがあります。 

 

また、同じくカエルを食べることで感染する「壺形吸虫」と呼ばれる寄生虫に同時感染してしまうケースもあり、このケースではより頑固な下痢や栄養障害を引き起こします。 

 

マンソン裂頭条虫はネコちゃんのうんちの中に含まれる虫卵を顕微鏡で探すか、うんちと一緒に出てきてしまった虫体を確認することで診断します。なので、もしうんちの中にきしめんのようなものが混じっていたら、うんちを持ってきていただけるとスムーズに診断することができます。 

 

治療方法としては、プラジカンテルという駆虫薬を使って虫下しを行います。また、下痢による脱水がみられる場合は水分を補充するための補液を行うこともあります。 

 

この寄生虫の感染の予防法は意外と単純です。というのも、外でカエルを捕まえて食べてしまったと思われるネコちゃんの感染例が多いため、ネコちゃんを外に出さず室内飼育するだけでも感染予防になるのです。ネコちゃんの屋内飼育は寄生虫に限らず、交通事故や野良猫とのけんかなどのリスクもなくすことができるので、極力ネコちゃんは外に出さないように飼育しましょう。 

 

もしペットのうんちの中に変わったものが混じっていたら、お気軽に動物病院までご相談ください。 

 

SS