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最近のエントリー

肺葉切除

22年11月24日

肺に腫瘍が見つかった時、肺膿瘍、外傷、気胸等で行われます。肺腫瘍がおおく肺葉切除を行っています。以前は肺葉切除は血管の分離、気管の縫合など大変でした。近年になり血管シーリングシステムやステープラーを使用することができるため非常に手術が容易になりました。とくにTAステープラーは、とても便利です。重厚な器具にカートリッジを挿入するタイプは製造中止になり、ディスポタイプになったのは高額な器械を持っていた私としては残念ですが、手術が早く終わり動物に対する負担はかなり軽減されます。危険な肺膿瘍手術のリスクも下げてくれる逸品です。器具の進歩に感謝します。

S.S

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シニアの猫の推奨環境

22年11月22日

めざましい獣医療の発展によって、家庭で飼育されている猫の平均寿命は延びてきています。ガイドラインでは猫の高齢期を11歳以上としており、2021年の犬の平均寿命は15歳を超えるという報告があり、家庭で飼育されている猫の6割以上が高齢期に入っており、飼育猫の高齢化が進んでいます。

高齢になると感覚機能の低下や、活動性の低下、寝る時間が増えるなど、様々な変化が生じるようになります。

猫にとって快適な環境づくりのために5つのコンセプト(柱)がガイドラインの中で述べられています。猫の年齢に関わらず、すべての猫の生活環境に置いて、まずは5つの柱が満たされていることが大切です。

推奨環境の5つの柱

シニア猫は様々な疾患を抱えていたり、加齢にともない若いころと同じように活発に動くことができなくなります。

第一の柱:

安全で安心できる場所を用意すること

猫にとって安全な場所とは、誰にも邪魔されずに安心でき、逃げ込むことができる場所です。

一般的には猫は高い所を好むが、シニア猫においては関節炎などの影響で、高い場所へ飛び乗ることを避けるようになることがあります。

シニア猫にとって安全で安心できる場所は、猫が入りやすい高さにあり、アクセスしやすい経路にしておく必要があります。

気に入って休んでいる場所にいるときは、飼い主や同居猫、同居動物に邪魔されることなくリラックスして過ごすことができるようにしましょう。

第二の柱

猫の必要物資を複数用意し、環境内に複数箇所、それぞれ場所を離して設置すること

猫の必要物資とはフード、水、トイレ、爪とぎ、休息/就寝場所などのことです。

フード

同居猫や同居動物がいる場合は、それぞれの食事を離した場所で与える方がシニア猫にとってストレスが少ない。

頸部痛や関節疾患のあるシニア猫にとってフードの容器を高くすることで食べやすくなります。

1日に食べたフードの量を記録しておくことは、体重減少を防ぐうえで有用です。

シニア猫の飲水容器は、幅の広いものが勧められます。

噴水式給水機を使用したり、水に好みの味をつけることで飲水量の増加につながる場合があります。

トイレ

大きくて、入り口が低いトイレが良い。

スロープを設置したり、夜間でも見えやすいように常夜灯などを設置しましょう。

トイレに入れる猫砂の量は、少なくとも3cmの深さが推奨される。砂が深すぎても使用しにくい場合があります。

爪とぎ

若いころは垂直面への爪とぎを好んだかもしれないが、シニア猫になると関節炎などの影響で、身体を伸ばすことや立ち上がることを避けるようになり、垂直よりも水平の爪とぎを好む場合があります。

シニア猫は爪とぎだけでは伸びた爪の十分な手入れができない場合もあるので、定期的な爪の手入れが必要です。

休息/就寝場所

休息場所や就寝場所に敷く素材は、シニア猫の体の状態にあったものを用意しましょう。

第三の柱:

遊びや捕食行動の機会を与えること

精神的な刺激が認知機能の低下を妨げるという報告からも、シニア猫に適切な刺激を与えることは健康維持やストレス解消につながります。

若い猫の様に活発におもちゃを追いかけたり、ジャンプするような動きは減るが、シニア猫に、遊びや捕食行動の機会を与え、捕食本能を満たすことは大切です。

遊びながらフードを出すことができるおもちゃや、端に毛皮や羽根が付いた釣り竿や杖などを動かし、獲物の様に見せたりする。

若いことのように走り回っておもちゃを追いかけることは期待できないが、その場で手を動かすだけでも捕食本能を刺激することができます。

シニア猫をおもちゃで遊ぶときは、1回の遊びは数分程度の短い時間で十分です。

第四の柱:

好意的かつ一貫性があり、予測可能な人と猫との社会的関係を構築すること

猫との交流は決して無理強いせず、終始猫のペースで行いましょう。

以前は抱き上げられたり、飼い主の膝の上で寝ることを好んでいた猫でも、飼い主の膝には乗らず、そばで撫でられることだけを好むようになる場合もあります。

いかなる状況においても、強い口調で叱ったり、叩く、押さえつける、大きな音で脅かすような嫌悪刺激を使った罰を与えない。

シニアになって、疾患の治療の目的で継続的な薬の経口投与が必要になると、猫が嫌がっているにも関わらず無理に口に薬を入れることの繰り返しにより、関係が悪くなることがあります。

経口投与の際は猫に好物を与え、不快感を軽減させてあげると良いでしょう。

第五の柱:

猫の嗅覚の重要性を尊重した環境を用意すること

シニア猫の住み慣れた環境中の匂いを乱すような、匂いの強いものや刺激臭のあるもの(たばこの煙、アロマキャンドル、ルームスプレー、化学薬品の入った製剤など)の使用はさけましょう。

新鮮な外の空気を室内に取り入れましょう。

動物病院への来院ストレスを軽減するために自宅で出来ること


シニアになって定期的な動物病院への来院が増えると、動物病院への印象が悪くなることで、動物病院へ猫を連れていくためのキャリーケースの印象も悪くなるという現象が起こります。

普段から、キャリーケースが猫の安全な休息/就寝場所となるように、キャリーケースを猫の生活スペースに出して置き、中にふかふかのマットを敷いたり、冬場であればヒートマットを敷いておきたい。猫のフードや好物をキャリーケースの中で与えることも良いとされています。

また、通院に対して猫がストレスを感じている様であれば、内服で不安を軽減することが可能です。

もともと猫は、環境の変化にストレスを感じやすく、環境の変化を好まない動物である。可能な限り安定した生活環境に整え、猫にとって予測可能な日常生活にすることで、猫の不安を減らすことができます。

高齢の猫ちゃんが抱える身体疾患を明確にし、適切な治療を施したうえで、その猫に会った環境的アドバイスも行ってければと考えています。シニアの猫ちゃんで何か困ったことがあればいつでもご相談下さい。

Y.N

血液1滴で「がん」が見つかる。???リキッド・バイオプシー

22年11月10日

犬の死因のトップは「がん」です。㈱メディカル・アークという会社がリキッド・バイオプシーというという新しいがん検診システムを作りました。東京農工大学名誉教授 伊藤 博先生が中心となって開発されたものです。11月14日に葉月会で講演をしていただきます。どこまで医学が進化しているのか楽しみです。良いものであればお勧めしますね。

S.S

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椎間板ヘルニアの季節になってきました。手術・針治療・幹細胞療法

22年11月05日

椎間板ヘルニアに季節なんてあるのなんて思われる方が多いと思いますが、寒くなってくると急に椎間板ヘルニアが増えてきます。椎間板ヘルニアの手術症例がきました。写真のように脊髄の通る穴が椎間板物質によりほとんど埋め尽くされています。幸いにまだ痛覚はあり時間がたっていたために椎間板物質は椎骨に癒着していて時間がかかりましたがほとんど摘出できました。これから鍼治療と幹細胞療法を始めていきます。鍼治療や再生医療を行うようになり痛みを感じない重症例でもほとんど歩行できるようになっています。もし椎間板ヘルニアかなと思ったらできるだけ早めにご来院ください。歩けなくなっていたら食事を与えずにつれてきてくださいね。麻酔が必要なこともありますから。S.S

追伸、この症例のワンちゃんは鍼、幹細胞療法により歩けるようになりました。

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犬のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー、どう違う?

22年11月03日

犬のアトピー性皮膚炎(CAD)食物アレルギーは皮疹の分布パターンが似通っており(左右対称性、眼や口の周囲、耳介内側、前肢の屈曲部、腋窩、腹部、鼠径部、会陰部、肢端)、一見混同されがちです。両者の違いを端的にいえば食餌を除去食に変更すれば治るのが食物アレルギーであり、食餌変更だけでは治らないのがアトピー性皮膚炎です。CADは多因子疾患であるため、根治させることは多くの場合困難であり、生涯にわたって症状を抑制するための治療(投薬や食餌療法、環境の清浄化など)が必要です。治る病気なのか、それともずっと治療を続けなければならない病気なのか判定すること、ここにCADと食物アレルギーを鑑別する意義があります。ところが、搔痒の原因が純粋な食物アレルギーによるケースは非常に少ないとされています。実際にはCADと食物アレルギーの併発(食物抗原が原因のひとつとなっているCAD)が多いようです。食物アレルギーとの合併を疑うポイントは消化器症状の有無です。嘔吐や下痢といった明らかに認識しやすいものだけでなく、軟便(程度に幅あり)や排便回数の多さ、嘔気(いわゆる「げっぷ」)も消化器症状といえます。とくにこうした症状が幼いころからずっと続いている場合はその個体の体質(その個体における正常)だと捉えてしまいがちです。CADと食物アレルギーの併発は一見厄介ですが、逆にいえば、CADであっても除去食への変更によって症状の改善が期待できるともいえますまた、食物アレルギー単一疾患であることは少ないとはいえ、食餌変更だけで治るのであれば決して見逃したくない病気です。

 両者を区別する唯一の方法は除去食試験および負荷試験です。除去食試験と負荷試験は2つで1つとして捉え、必ず両方行う必要があります。簡単にいうと、除去食試験では「何を食べてもいいのか」を見つけ、負荷試験では「何を食べてはいけないのか」を見つます。食物アレルギーにしてもCADとの併発にしても、食餌療法のゴールとなるのはその患者に適した食餌を見つけることです。従来の除去食試験・負荷試験は患者の食歴とアレルギー検査(抗原特異的IgE検査やリンパ球反応試験など)の結果を参考に食餌内容を決めることから始まります。1つの除去食の反応を見るのに2か月かかるため非常に忍耐の必要な試験ですが、最近では新しい皮膚疾患用療法食の誕生によってより便利になっているようです。

 ヒルズから新しく発売されたオールスキンバリアは卵を主蛋白源とした今までにないフードです。犬の食物アレルギーおよび食物抗原が関与するCADにおいて卵がアレルゲンとなる確率はわずか4%であるとされ、除去食試験・負荷試験に最適といわれています。食物アレルギー対策、皮膚バリア機能の向上と炎症の抑制を3本の柱としており、CADと食物アレルギーの併発症例において良好な反応を示したという報告がいくつも上がっているようですぜひご興味があればご相談ください R.S コラムの図 22.11.JPG

猫の甲状腺機能亢進症の甲状腺摘出手術を毎月実施しております。

22年11月02日

猫の甲状腺機能亢進症では、基本的に完治を目指したいものです。日本においては、放射性ヨウ素療法が行えないため摘出手術のみが根治的治療になります。毎月1~多いときは3頭手術を行っています。手術を受けに来る方々は、近くの方だけでなく遠方のクライアントの方も多くおられます。近隣のかかりつけの先生方と連絡をとりながら対処させていただいております。猫は自動車にのせると大変だからときめてかかっている方もいますが概して問題はないようです。手術により完治すればその後の長寿も期待でき、ほとんどの症例で内服を続ける必要もなく内服による副作用やコントロールできない高血圧や心臓の問題も治癒します。手術中の様子は術後クライアントの方に画像をお見せいたします。甲状腺線種や甲状腺の腺腫様過形成のような良性のものから濾胞腺癌のようなものまで様々です。症状や甲状腺の値によって判断することは困難ですがCTで判断可能です。一度に多くの費用が掛かるのがたいへんですが内科療法を行う費用と比較して安価になるのが一般的です。手術を検討している方はご相談ください。