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最近のエントリー

猫の甲状腺機能亢進症の手術

17年03月30日

猫の甲状腺機能亢進症の甲状腺における上皮小体の位置が、本来の解剖学上言われていると頭側でない症例が増えてきております。今回の手術も中央部で固着しておりました。手術は難しくなりますが、幸い低カルシウム血症になった猫は全くおりません。甲状腺中央にある少し光った白いものが上皮小体です。頭側から伸びている血管を付けた状態で剥離し筋間に埋め込みました。  S.S

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猫の肝アミロイド症

17年03月26日

肝アミロイド症はまれな疾患ですが、猫の肝疾患の中では最近増加傾向にあります。歴史的にはアミロイド症は腎臓と肝臓の両方に病変を形成し、シャム猫の家族性(遺伝性)疾患として知られてきました。しかし最近では雑種猫を含む多くの品種で肝臓のみに病変を形成する症例が散発的に報告されています。

アミロイドとはタンパク質の折り畳み異常によってできるでんぷん様の物質で、この異常タンパクが結合して線維状になり、組織や臓器に沈着した病態をアミロイド症といいます。アミロイドはその前駆体タンパクが何かによって数種類に分類させていますが、猫の肝アミロイド症で沈着してくるアミロイドは炎症によって生じるアミロイドAです。

慢性の口内炎や歯肉炎があって慢性の炎症を起こしている場合、その炎症から炎症性のアミロイドを作ってしまい、アミロイド沈着の引き金になることがあります。そのため猫エイズやヘルペス性口内炎を持っている猫は特に注意が必要です。

罹患した猫の肝臓は腫大し、硬くなり、ジャンプなどの日常的な行動によっても傷害を受けやすく、肝臓破裂が起こりやすい状態です。症状としては嗜眠、食欲不振、可視粘膜蒼白、跳躍脈、肝臓破裂を起こした場合は貧血、低血圧になります。診断は肝臓の病理組織学検査によって、FIP、肝リピドーシス、肝臓リンパ腫との鑑別を行います。アミロイドは針先吸引検査では検出されないためFNAによる細胞診は有用でありません。

現在のところ特異的な治療法は無く、症状を緩和させる支持療法がメインになります。炎症がアミロイド沈着の引き金になるので、炎症のもととなっている基礎疾患の緩和、抗酸化剤やビタミンKの補充を行います。漢方薬、サプリメント、オゾン療法、免疫療法なども組み合わせて維持治療をしていくことになりますが、長期予後は悪いです。

病気にならないためにできる事とすれば、口内炎が慢性化しないようコントロールしてやることかもしれません。

M.M.

抗がん剤治療について

17年03月16日

 近年では家庭動物の高齢化に伴い、犬猫の腫瘍性疾患も多くなってきました。腫瘍治療の3大柱といえば、外科療法、放射線療法、そして化学療法である抗がん剤療法です。当院でも抗がん剤治療を行っている患者さんはとても多く、代表的な疾患でいうとリンパ腫は最もがん剤の効果を得ることのできる腫瘍であり、また手術後の再発・転移防止を目的に血管肉腫、肥満細胞腫などで適用されます。

 しかし抗がん剤治療を飼い主さんに説明するときにあまり好意的に考えられない方が多いような印象を受けます(当たり前かもしれませんが)。人医療において抗がん剤が患者さんにとって負担の多いものであることが理由かもしれませんが、動物医療においては人ほど重篤な副作用が出ることは多くありません、むしろそれはまれなのです。動物医療において、治療において長期的に生活の質を大きく下げることはその子の生きている意味を失うことになります。なので副作用は最小限に、だけれども治療効果も十分なものを見込めるように抗がん剤の計画が立てられています。抗がん剤で苦しんでいる動物さんを見るのは飼い主さんの苦しみにもつながってしまうからです。

 抗がん剤の副作用で代表的なものは骨髄抑制(血球が少なくなり免疫が弱くなる)、消化器症状(食欲不振、下痢、嘔吐)、脱毛です。しかしいずれもさほど重篤なものが現れることはまれです。もちろんいくつかの抗がん剤を併用する場合は、どれかひとつは体質的に合わないことがありますが、それも対症療法で最小限に抑えることができます。そのため抗がん剤療法は動物のがん患者のおいては付きあいやすい治療法といえます。

 患者さんの状態や腫瘍の種類によっては、もちろん適用の是非を検討する必要があるのは言うまでもありません。飼い主さんとよく相談してベストの治療法を決めていきたいと思っています。

T.S.

仔犬が立てない?

17年03月05日

生れて10日程経ち、他の子犬たちがおぼつかない足取りでがんばって歩くなか、四肢を体の下に入れて歩けない子がいる場合があります。それはスイマーパピー症候群かもしれません。

これは可逆性の運動障害で原因は不明ですが、大型犬種・滑りやすい床・人工乳での飼育・母親がいない環境で多くなるといわれています。長引くと胸郭が扁平になってしまったり関節が変形してしまったりします。起立の練習をたすけてあげることで改善することが多いので、立ち上がるのが遅い子にはお手伝いしてあげるのもいいかもしれません。K.Y