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フェレットの膵臓腫瘍

22年07月29日

フェレットは腫瘍性疾患が多い動物です。ある報告では、来院したフェレットのうちの腫瘍性疾患が全疾患の40%だったというのもあるくらいです。そのうち、フェレットではインスリノーマ、副腎腫瘍、リンパ腫が3大腫瘍と言われているくらい、その多くを占めています。今回はインスリノーマという腫瘍に次いて記述していきます。

インスリノーマは、膵臓の膵島のインスリンを分泌するβ細胞が腫瘍化して過剰にインスリンを分泌することによって、低血糖になり低血糖性の痙攣発作や、ヨダレが出たり、抵抗ができないくらい力が入らない状態になったりする疾患です。フェレットで特徴的な症状として時折みられるのが"前肢で口を掻く"というのが挙げられます。インスリノーマの診断はこういった症状や、血液検査での血糖値の低下から疑うことができます。腫瘍のサイズが比較的小さいことが多い為エコーやC T、M R Iでの検査はあまり検出率が高くないので推奨度は低いとされています。治療はこまめな食事管理、ステロイドやジアゾキシドによる内科治療、膵臓結節の外科的切除などの治療法を選択していきます。

食事管理は、"低血糖を作らせない"というのが大事になってくる上で重要になってきます。高齢のフェレットが罹患するケースが多いので、寝る時間が多く、自分でご飯食べないという相談も多く受けますが、このように自力での摂食では追いつかない場合ではご家族の皆様が4〜6時間おきくらいに給餌をするようにして下さい。食事は通常のフェレットフードを使用するのがよく、逆に糖分を与え過ぎると、インスリンの放出を促進してしまうので

おやつや砂糖を極力与えないように注意が必要です。ただ、多くのご家族の悩みとして、普通のフードを頻回に決まって食べてくれないという事態もあるかと思われます。アイソカル(®︎ネスレ日本株式会社)を用いたダックスープや、クリティカルリキッド、a/d缶などの高栄養サポート食はフェレットにとって嗜好性の高い食事になるので、相談してみて下さい。

 外科療法ですが、インスリノーマは膵臓内で単一の結節としてではなく、多発しているケースが多いので全て病変部を切除することができないケースが多く存在します。この場合可能な範囲で切除しますが、術後再度の低血糖を認めるケースが多いと言われています。しかし、切除したことによって症状や低血糖が改善されることもしばしばみられているので、外科切除はリスクもありますが、低血糖の改善や長期間の投薬をしなくて済む可能性が期待できるという面では有用な治療法の一つであると思っています。

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柴犬の慢性腸症と胃腸リンパ腫

22年07月25日

 慢性腸症とは3週間以上持続する慢性下痢の原因の約7割を占めている病気です。検査や治療反応から食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、免疫抑制薬反応性腸症などに分類され、それらに分類されない治療抵抗性腸症もあります。日本で人気の柴犬はこの慢性腸症の発生が多く、慢性下痢と食欲不振、削痩や衰弱が顕著でどんどん弱っていってしまいます。また慢性腸症の中には、胃腸管リンパ腫が隠れていることもありその診断がとても重要になりますが、柴犬はどちらも発生率が高いため特に注意が必要です。

 慢性腸症が疑われた場合は先述したように、まずは食事療法や抗菌薬、ステロイドなどで診断、治療していきます。どれも反応が乏しい場合は画像診断や内視鏡検査に進みますが、エコーの検査では腸壁や腸間膜リンパ節に異常を呈する場合もありますが、何も異常がないことも多々あります。エコー検査で何も異常がなくても、次は内視鏡検査で腸の生検を行い病理診断を行います。この段階ですでに体重も減少し一般状態が悪い子が多いのですが、それでも麻酔下での内視鏡検査は重要です。

 特に柴犬の場合は慢性腸症も胃腸管リンパ腫も厄介なのですが、慢性腸症からリンパ腫へと変化していくのではないかと近年言われてます。慢性腸症の治療経過中に、反応が悪くなり状態が悪化した場合はリンパ腫へ移行した可能性を考慮せねばなりません。柴犬は海外では少なくあまり研究論文が今までなかったのですが、日本を中心とした報告が近年多くなってきていますので、これからの研究報告をチェックしていきたいと思います。

T.S.

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犬の発情周期

22年07月13日

犬の発情間隔は3.5~13ヶ月というデータがあり、この間隔は個体差や犬種の差もありますが同一個体においても一定であったりバラバラであったり様々です。

繁殖関連の診察をしている中でも規則正しい個体もいれば、今回は早い、遅れているというお話もよく伺います。

主観的にはこの発情間隔と繁殖の成績はあまり関わっていないようにも感じますが、繁殖回数や年齢の上限が決まったこともあり今後もきちんとデータ収集していきたいと思います。

発情周期に影響を及ぼす因子はその個体の要素が最も大きいですが環境因子も多少関わっています。

一つは発情していない個体と発情中の個体を近くに置いておくと発情が同期して起きやすいと言われており、フェロモン誘発性と考えらえています。

また季節性も言われており、春や秋に発情する個体が多い傾向にありますが12時間明:12時間暗や14時間明:10時間暗で飼育し続けるとこの季節性は無くなると言われています。日照時間の変動は多少発情周期の始まる要素になっているのかもしれません。しかしながらその明条件が長ければいいとか短ければいいとかはまだ分かっていないと思いますしストレスがかかるような環境はふさわしくありません。季節を感じさせてあげるぐらいがいいのかもしれませんね。K.Y