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最近のエントリー

咀嚼筋炎

15年11月29日

咀嚼筋炎は犬における咀嚼筋(顎二腹筋、側頭筋、咬筋)の炎症性ミオパシーです。別名好酸球性筋炎とも呼ばれる免疫介在性疾患であり、咀嚼筋の2M型筋線維に対して自己抗体が産生されます。ジャーマン・シェパードやレトリーバー種などの大型犬種に好発します。症状としては開口障害が一般的で、咀嚼筋の腫脹や顔面筋の疼痛が急性に発現します。進行すると咀嚼筋は萎縮し、眼球陥没がみられ、はては顎関節が開かなくなり、摂食不能に陥ります。

診断は、本症の特徴的な臨床症状と、血清中の2M型筋線維に対する自己抗体の検出によって行われます。血液検査では、急性期にCKASTCRPといった項目が高値を示したり、好酸球数が増加したりといった特徴が診断の一助になることもあります。また筋組織の生検を行い、病理組織診断を実施することで、筋肉組織の損傷の程度が把握でき予後判定に役立ち、また免疫組織化学的に2M型筋線維への免疫グロブリンの沈着も確認できます。

治療はコルチコステロイドやその他の免疫抑制剤による免疫抑制療法が中心となります。長期間のコルチコステロイドによる治療を必要とするケースも多く、臨床症状の程度や薬剤による患者への影響を常にモニターして経過をみていくことが重要となります。

急性期に適切な治療が行えれば予後は良好ですが、一度治癒した症例でも再発が認められることもあります。また慢性期に移行して咀嚼筋の線維化が進んだ症例では開口障害が残るため、固形物を食べられなくなり、流動食の給餌や胃瘻チューブの設置が必要なケースもあります。

H.B.

胆泥

15年11月22日

胆泥とは、胆嚢内の超音波検査で、音響陰影を伴わない低エコー性で流動性のある泥状または砂状物として認められるものの総称です。胆泥の成分は、ヒトにおいてはコレステロール結晶やビリルビンカルシウム微細顆粒であり、胆泥は胆石形成の前駆状態と考えられていますが、イヌやネコにおいても同様であると考えられています。

胆泥の発生機序は十分に解明されていませんが、胆嚢収縮能の低下による胆嚢内胆汁うっ滞や、コレステロールやカルシウムなどの胆汁内成分の変化が発生の要因として有力であると考えられています。

 胆泥は、それ自体が胆嚢疾患というよりは、何らかの疾患に続発して発生している所見であることが多いと考えられています。イヌやネコにおいて臨床的に胆泥を認めやすい病因としては、胆嚢炎、肝炎、肝外胆管閉塞症、腸炎、膵炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などが挙げられ、中年以上のイヌで多く、超音波検査で偶発的に認められるケースも多いです。ヒトでは、胆泥の認められた患者に疝痛発作や急性膵炎、胆嚢炎などが認められたという報告がありますが、イヌやネコにおいては、現在のところ胆泥が直接的に他の疾患を惹起するかどうかは明らかではありません。しかし胆石症や胆嚢粘液嚢腫(特にイヌ)へと進行するとそれに伴い臨床症状を発現する可能性があります。

 胆泥の治療法は、治療そのものの必要性も含めて原因疾患によって異なります。肝外胆管閉塞や甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など原因疾患が判明しているのであれば、その疾患に対する治療を行います。原疾患が明らかでない場合は、進行性の閉塞性黄疸示す速やかな外科手術が必要と考えられる肝外胆管閉塞を除き、まずは利胆剤や肝庇護剤などの内科的治療で経過を観察するのが一般的です。

臍ヘルニア・鼠径ヘルニア

15年11月15日

臍ヘルニアは最も一般的なヘルニアで、先天性異常です。臍ヘルニアの好発犬種はエアデールテリア、バセンジー、ペキニーズ、ポインター、ワイマラナーなどが挙げられます。胎生期に臍血管、卵黄管、尿膜管が通過していた臍輪が出生時に閉鎖しない事が原因ですが、その発生機序は不明な点が多いです。母体に大量のNSAIDsを服用させた、αフコシダーゼ活性の欠損による家族性の報告がされています。生後6か月までは自然治癒もあり得ます。

鼠径ヘルニアは、内股の鼠径輪から腹腔内の臓器や組織が突出することです。好発犬種はバセンジー、ペキニーズ、プードル、チワワ、コッカ-スパニエル、ダックスフントなど多岐にわたります。鼠径ヘルニアの特徴として先天性のものと後天性のものがあります。先天性は、精巣の下降と関連して発生するのでメスよりもオスで発生が多いです。会陰ヘルニアと併発して起こることもあります。後天性のものは中年齢の未避妊メスが多く、エストロゲンによる筋肉の菲薄化が関与しているのではないかと言われています。右よりも左側での発生が多いですが、トイ犬種やシャーペイは17%が両側に発生します。ヘルニア内容物として子宮が多いのが特徴です。

オスの鼠径ヘルニアには、ヘルニアが鞘膜腔に出てくる陰嚢ヘルニアもあります。通常片側性で起こり軟骨異栄養犬種やシャーペイで好発します。小腸が出てくることが多く痛みを伴います。陰嚢ヘルニアが存在する場合、精巣腫瘍の発生率が上がるので同時に去勢手術を行うことをお勧めします。

臍ヘルニア、鼠径ヘルニアとも、治療法は外科的整復です。ヘルニア内容物を戻して筋肉、靭帯を縫合して隙間を閉じます。一般的に予後は良好です。

ヘルニアは大網や脂肪に加え、場所によっては小腸、子宮、膀胱、脾臓などの臓器が腹腔外に突出してしまいます。これらの臓器が絞扼されると命にかかわることもあります。新しい子を家に迎えたら、よく体を触って観察してあげてください

M.M.

耳ダニ症

15年11月08日

 耳道の中に生息するキュウセンヒゼンダニのOtodectes cynotisが原因で発生する外耳炎で、犬猫ともに感染しますが特に子猫で多くみられます。このダニは感染性が強く、大人の猫はキャリアとしてダニを保有していることも多いです。猫の外耳炎の原因としてはこれがもっとも多いとされています。

 特徴的な暗い茶色や黒色の耳垢が蓄積し、細菌感染が合併した場合には膿状となります。掻痒感は強く、動物は耳を派手に掻くために脱毛や皮膚が傷ついていることが多いです。また耳だけでなく頭部や頸部、体幹部の皮膚にも掻痒感を現すことがあります。

 耳鏡検査を行うと、直接ダニが動いているのが白い点々として見えることがあります。あとは耳道のカサブタや耳垢からダニを顕微鏡で確認することで診断することができます。治療は耳道内のダニを耳垢とともに洗浄することと、殺虫効果のある薬剤を使用することです。現在ではセラメクチンの外用が最も使用されています。しかしミミダニは感染性が強いために、感染した動物が接触した可能性のある動物もいっしょに治療を行った方が良いとされているため注意が必要です。

 外耳炎の原因はこれ以外にもたくさんあります。耳を気にしている動物さんがいましたら是非ご相談ください。

T.S.