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最近のエントリー

SUBシステムがVersion 3.0になりました

22年10月30日

 当院では数年前から尿管結石の症例にSUBシステムという器具を用いて手術しております。これは腎臓、膀胱にそれぞれチューブを挿入し、それを繋ぐことで尿管をバイパスする尿路を作るシステムです。症例の選択も必要で透視装置など特殊な手術機械を要しますが、設置は比較的簡単で手術時間も尿管切開・縫合術よりも短く済みます。設置後は一定の間隔で洗浄処置が必要ですが、この洗浄処置により尿路の通過性の確認や、閉塞予防をすることができます。

 このシステムによって多くの猫ちゃんの尿管閉塞をレスキューすることができましたが、しかしまだSUBシステムも完全なものではなく合併症が一定の割合で発生してしまうのも事実です。そのため開発者のアメリカの先生方が研究を重ね、SUBシステムはVersion1.0から2.0、そして最近はVersion3.0へと進化しています。ポートの形状の変化とチューブの変更により手術時間の短縮、また懸念であったチューブの捻じれ発生の低下、血餅・結石形成の抑制効果の向上などの改善があるようです。バージョンアップに伴い手術方法も若干異なるのですが、それは今までの技術を応用するだけなのであまり苦労はありません。器具の進化とともに合併症が減り、多くの猫ちゃんが救われるのを期待したいところですが、器具を設置しただけで猫ちゃんの「結石になりやすい体質」が改善するわけではありません。手術以降も適切な食事管理やサプリメントなどを使用することで合併症や再発リスクを低減してあげることも重要だと考えています。

T.S.

SUB.JPG

マイクロチップについてご存じですか?

22年10月28日

みなさま、ワンちゃん・ネコちゃんのマイクロチップについてご存じですか?

今日は、マイクロチップ制度の概要とその有用性についてお話ししたいと思います。

イクロチップとは、直径1.4mm、長8.2mm 程度の小さな電子標識器具です。マイクロチッにはそれぞれに15桁の数字記録されており、皮下に装着されたマイクロチッ番号は、専用のリー読み取ることができます。2019年に動物愛護管理法が改正され、2022年6月1日より犬猫を販売するペットショップやブリーダーなどの繁殖販売業者に、マイクロチップの装着・登録が義務付けられました。また、登録を受けた犬猫を所得する飼い主は、登録変更を届け出ることが義務付けられています。つまり、これから新しいワンちゃんやネコちゃんをお迎えしようと考えられている方は、お迎え後30日以内に届出が必要となります。また、すでに飼われているワンちゃん・ネコちゃんに対しては、飼い主に「努力義務」が課せられ、罰則などはないもののできるだけ装着するように努めなければならない、とされています。2022年2月に保険会社が行った調査によると、マイクロチップの装着率は30.6%(犬 38 %、猫 23 %)であったと報告されています。

では、マイクロチップを装着することにどんなメリットがあるのでしょうか?

もし、大切なワンちゃん・ネコちゃんが迷子になってしまった場合、動物愛護センターや警察で保護された際に、マイクロチップから身元の確認が可能になり、スムーズな返還が可能になります。また、地震などの災害時にはぐれてしまった場合においても、飼い主の元へ帰る確率が高くなることが期待されます。実際に、東日本大震災では1700頭以上のワンちゃんが保護されましたが、飼い主に返還できたのは約半数のみ、ネコちゃんではわずか3%であったと報告されています。また、マイクロチップを装着していたものの指定登録機関への登録がされていなかったため、飼い主を見つけ出すことができなかった事例もあったそうです。

災害や予期できない有事の際に、愛するペットと逸れてしまう可能性はゼロではありません。当院でもマイクロチップ装着を行なっておりますので、災害対策のひとつとしてご検討されてはいかがでしょうか?

D.N

抗甲状腺薬チアマゾールの副作用で特に注意してほしい白血球減少

22年10月24日

チアマゾールの副作用はいろいろなものがあります。嘔吐、食欲不振、激しい痒みを伴う皮膚病、高窒素血症、肝炎、白血球減少、血小板減少、凝固不全、貧血、甲状腺機能低下症による突然死というものがあります。そのため血球計算、生化学検査、T4値を治療を開始する前、3、5、8週後の検査、その後3か月毎の検査。また別のものでは、3,6,10、20週後、その後3ヶ月毎の検査等いものが示されています。ここのところ白血球減少の症例が続きます。紹介症例も含めて多くの症例で認められましたのでご紹介しておきます。白血球数は計算版を使用して正確な値を検査したものです。200~2,000個/μlになっており発熱、嘔吐、食欲不振の症例がおきることがあります。中には5㎏の症例で1.25μgの1/2錠1日1回1週間、1.25μgの1/2錠を1日2回を2週間というごく少量短期間で白血球が200になり嘔吐下痢発熱で遺伝子組み換えのG-CSFという製剤で事なきをえた症例もいました。2.4.6.8週の血液検査を推奨している文献もあります。多くの動物病院では検査回数が少ないと言う統計がでています。人間でも白血球低下による死亡例が報告されており、2ヵ月を超えるまでは少なくとも2週間に1回の検査を推奨しています。内服療法の際には血液検査が重要であることをぜひ理解していただきたいと思います。S.S

うにちゃん.JPG

ウサギのSAA

22年10月22日

SAA(血清アミロイドA)とは猫で一般的に測定される炎症反応が起こった際に上昇するたんぱく質の1つで、当院でも診察で活用しています。

今までは猫での利用のみでしたが、ウサギでも活用できるのではないかという報告がありました。

それによるとウサギの食欲不振でよく遭遇する、胃のうっ滞では上昇を示すものの、歯の過長では骨に異常が出るとほど重篤なものを除いてSAAの上昇が認められなかったことがわかりました。他にも泌尿器・生殖器・神経疾患での上昇が認められるなどウサギでのSAA測定の有用性が示唆されています。

ウサギは食欲不振の期間が長くなるとと消化管内の細菌が毒素を放出し、さらなる悪循環となってしまう動物です。そんな時にSAAを測定することで診断のための助けとなればとてもありがたいと思います。

さらなる今後の報告に期待したいですね。

S.A

10月21日 志学会 特別公演「食事による消化器疾患へのアプローチ」編

22年10月21日

北海道 酪農学園大学から鳥巣 至道先生をお招きしての講演会がありました。

鳥巣先生は低侵襲獣医療や肝臓・膵臓などの消化器内科および外科を研究されており、近年ではフードやサプリの開発も手掛けております。

病気に対して薬や食事制限などを行うのは常ですが、鳥巣先生は動物たちが普段食べているフードに着目し、特にアミノ酸の補充により改善を認めた症例の報告を数多く解説されました。

また、食事中に含まれる食物繊維の有用性やそのサプリメント、手作り食を作る際の注意事項など、臨床現場にすぐに使える豊富な知識を得ることができました。

今後の治療方法に活用していこうと思います。

H.F

震えに対する診断

22年10月13日

日々の診察において「飼い犬(猫)がなぜか震えている」ということをよく耳にします。もちろん人間でも震えることはあります。寒さに対する震え、怖いといった感情からの震えなど、様々あります。犬猫の場合は人間と違って言葉で表現できないため、どこか痛いのか?いま寒いのか?など汲み取ることは困難です。

その際に大事になってくるのが飼い主とのコミュニケーションで得られる情報・的確な問診です。飼い犬()に代わって教えてもらうには飼い主が如何に観察しているかということと、その様子を我々獣医師がどこまで引き出せるかということが大切になってきます。

以下に幾つかの問診例を挙げます。

・震えは突然起こるのか、持続的なのか

・いつ、どのようなタイミングで震えるのか

・どんな風に震えるのか

・体調に問題は無いか

・既往歴の有無

震えは脳の異常・内分泌や筋肉の問題など様々あります

病気なのかそうでは無いのかの見極めが大事になってきます。犬.jpg

H.F

ワンちゃんネコちゃんが食べてはいけないものてますか?

22年10月04日

 私たちの身近にある食べ物や生活用品の中にはワンちゃんネコちゃんにとっては有害なものになってしまうものがあります。今回は我々の身近にあるもので、ご家族の皆様にぜひ知っておいて欲しい危険な有害物質をいくつかピックアップして紹介します。

・チョコレート中毒

ご存知の方も多いと思いますが、チョコレートは動物たちにとって有害であります。

チョコレートに含まれるメチルキサンチンと呼ばれるカフェイン、テオブロミンが原因物質です。その症状の出やすさは、このメチルキサンチン含有量に依存しており、ココアパウダー>>>ダークチョコレート>ミルクチョコレート>>ホワイトチョコレートの順で含有量が多いです。主な症状は摂取後1〜6時間後に発現し、落ち着きがなくなる、嘔吐下痢、震え、痙攣発作、不整脈が見られ、最悪の場合死に至るケースも少なくありません。

・タマネギ中毒(ネギ類のニラやニンニクも含みます)。

こちらもペットに対する中毒物質で有名ですね。ネギ属に含まれる有機硫化物による赤血球のヘモグロビンを酸化するということに起因して結果的に赤血球が破壊されていくという怖い中毒です。タマネギ中毒は犬で15〜30g /体重kg 猫で5g /体重kg摂取すると中毒が出ると報告されており、ごく少量なら問題ありませんが一度に多くの量を摂取したり、少量でも継続して摂取すると中毒症状が発現します。

また、誤解しないでいただきたいのが"原因物質の有機硫化物は加熱処理をしても毒性は消えない"という事です。すき焼きの残り汁をいつものご飯にかけて、犬や猫に与えたところ中毒症状が発現してしまったという事故もあります、注意してください。

・ブドウ・レーズン中毒(犬しか報告なし)

ブドウ中毒は知らない方は多いと思います。生のブドウ、干しブドウ、調理されたブドウどれでも中毒が起こり、生のブドウよりもレーズン(干しブドウ)の方が中毒症状示しやすいという報告があります。今のところ原因物質は特定されていません。気になる中毒量ですが1kgのブドウを食べても無症状だった犬がいる一方で、4,5粒のブドウを食べたら中毒症状が発現した犬もいるという報告があるので、一説では特異体質が原因なのではないかという考えも出てきています。中毒症状としては、摂取後24時間で嘔吐下痢などの消化器症状、48時間で急性腎不全を発症します。急性腎不全による乏尿、無尿を呈した症例は予後不良であるケースが多いです、食べたと思ったらすぐに動物病院を受診してください。

・ユリ中毒(猫)

ユリの花びらや葉、茎、花粉を少量でも摂取すると中毒症状が発現します。ヘメロカリス属の勿忘草も危険性を示唆されています。原因の中毒物質は特定されていませんが、水溶性が高く、腎臓の尿細管を傷害することで急性の腎不全を引き起こします。ユリ中毒は、摂取後どれだけ早期に対応できたかで予後は大きく左右されます。気づいたら迅速に動物病院を受診しましょう。

・キシリトール(キシリトールガム、歯磨き粉)、

大量摂取(0.1g /体重kg以上)によってインスリンが大量に放出されることによる低血糖状態と肝臓壊死が引き起こされます。低血糖症状は摂取後30分〜60分で引き起こされ、嘔吐や運動失調、さらに経過すると発作や痙攣を起こします。肝臓壊死によって血液凝固障害が二次的に起こることがあり、この場合必要に応じて輸血を行う必要があります。

その他にもエチレングリコール(車の不凍液や一部の保冷剤、工業用の溶剤が代表例)タバコ、漂白剤(強アルカリ性なので消化管における炎症、皮膚や粘膜に付着すると腐食性の傷害)、防水スプレー(撥水成分、防水成分共に肺に障害を引き起こす事で呼吸障害)などたくさんの身の周りにあるものが犬猫にとって有害な"中毒物質"になってしまいます。

いずれの中毒疾患もいかに早期に対応(摂取後数時間までなら催吐処置、胃洗浄、除染できなければ輸液療法をできるだけ早く)するかどうかで予後は大きく左右されます。一番の対策は原因物を犬猫の手に届くところに置かないというものですが、もし摂取、曝露するような事故を確認した場合にはすぐに動物病院に連絡し受診されるようにしてくださいね。

R. I