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最近のエントリー

フェレットのアポクリン腺癌

12年02月28日

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フェレットのアポクリン腺は汗腺や肛門周囲腺として皮膚の広い範囲に分布しており、汗腺が集中する部位、特に、頭部、頸部、包皮、会陰部にアポクリン腺の腫瘍は好発します。その中でも、アポクリン腺癌は雌では会陰部に、雄では包皮に好発します。
フェレットのアポクリン腺癌は、硬結し境界不明瞭でび慢性に皮膚浸潤する腫瘤として確認され、腫瘤表面に潰瘍や出血を伴うこともあります。犬や猫におけるアポクリン腺の腫瘍は、良性が多くを占めますが、一方、フェレットのアポクリン腺腫瘍は、その悪性比率が高く、腺癌の発生も多くみられます。アポクリン腺癌は犬猫同様に再発、局所転移や肺転移も認められます。腫瘍を発見後、迅速にかつ広範囲なマージンを確保した上での切除が必要となります。
以上のように、フェレットの会陰部や包皮で腫瘤を発見した場合、悪性のアポクリン腺癌の可能性も考えられます。もともと小さな体のフェレットのこと、腫瘍が大きく育ち手遅れとなる前に一度診察を受けられることをお勧めします。
写真は包皮に発生したアポクリン腺癌です。

皮膚糸状菌症

12年02月14日

 真菌(かび)が皮膚の角質、被毛、爪などに定着することによる皮膚病を皮膚糸状菌症と言います。犬猫以外にもさまざまな動物に感染し、人にも容易に感染することから人獣共通感染症としても問題とされています。
 原因菌はMicrosporum canisが最も多く、他にもM. gypseum、Trichophyton mentagrophytes、T. rubrumなどです。猫ではM. canisが症状がなくとも被毛などに感染することで他の動物に対する感染源になることがあり、特に長毛種が感染源になりやすいです。感染防御力の低い子猫や子犬が感染することが多く、人でも幼児や子供が多いです。感染動物との接触により感染が起きますが、汚染された飼育環境から感染する例も多いと考えられます。
 病変は顔、前肢、後肢に多いとされますが、全身的に現れることもあります。楕円形の
脱毛、紅斑が特徴ですが、症例により脱毛、紅斑、鱗屑などはさまざまなので典型でなくとも疑わなくてはなりません。そのため炎症を伴う皮膚疾患と鑑別しなくてはなりません。M.canisであればウッド灯検査を行えば、感染被毛が蛍光色を発することが知られています。脱毛周辺部の被毛を引き抜き、真菌培養検査を行うことが非常に有用です。蛋白質の代謝により培地のpHがアルカリ性に傾くことにより、コロニーの形成とともに培地が赤く変色することで診断することができます。正確な結果を得るためには毎日培地をチェックすることが必要となります。
 治療はイトラコナゾールやケトコナゾール、グリセオフルビンなどの抗真菌剤を用います。菌を洗い流すためのシャンプーや、さらに再感染を防ぐための全身的な毛刈りが必要になることもあります。また飼い主様による飼育環境の対策も必要であり、手洗いの励行、他の動物との隔離、部屋の消毒などを行うことで蔓延や再感染を防ぐことができます。子犬、子猫、多頭飼育、小さなお子様がいるご家庭ではお気をつけ下さい。

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糸球体腎炎

12年02月07日

犬の糸球体腎炎は免疫複合体やアミロイドの沈着などにより糸球体が傷害を受けることによって引き起こされます。糸球体腎炎では尿中にタンパク質が漏れ出していて、そのタンパク質によってさらに腎臓の傷害が起きます。
初期の糸球体腎炎は無症状であることが多く、進行すると体重の減少、元気がなくなる、多尿などが見られます。蛋白尿が重度になってくると筋肉の消耗、腹水や浮腫などが認められることもあります(ネフローゼ症候群)。
治療は腎臓病用につくられた蛋白制限食をあたえること、血管拡張剤であるACE阻害剤を用い高血圧のコントロールと蛋白尿の軽減を行い、糸球体腎炎の進行の悪循環を抑えること、アスピリンなどのような抗血栓剤による臓器の梗塞や血栓症の予防を行い、少しでも腎機能を長持ちさせることを目標にします。そのため、尿検査や血圧の測定を定期的に行なうことが重要となってきます。
いかに早期に発見できるかが余命に大きく影響する病気なので、健康診断として定期的に尿検査を行なうことをお勧めします。