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最近のエントリー

うさぎの赤色尿

11年10月25日

うさぎの赤色尿は生理的な赤色尿である場合と、血尿である場合があります。
生理的な赤色尿はポルフィンと呼ばれる赤系色素が過剰に生産され尿中に排泄されたものです。この場合、尿検査で潜血反応はみられず、特に治療を必要としません。
一方、血尿の場合、尿検査で潜血反応が陽性となり、出血の部位は尿路系か生殖器系が挙げられます。雄ウサギの場合には生殖器からの出血はまれでありますが、雌ウサギでは子宮からの出血が非常に多く見られます。避妊手術を受けていない雌ウサギでは子宮腺癌や子宮粘膜過形成などが多くみられ、血尿の原因となります。また、尿路系からの出血として、尿路結石や腎障害などが考えられます。

右大動脈弓遺残症

11年10月11日

 動物は母親のお腹の中にいるときには胎児循環という特殊な循環経路を有しています。胎児循環は徐々に変化し、出生時にはほぼ胎児循環はなくなっています。しかし出生後も胎児循環の一部が残ってしまうという種々の疾患が存在し、そのひとつが右大動脈弓遺残症です。
 この病気の主な症状は吐出です。食道の中心部が心基底部と肺動脈、左側が動脈管索(動脈管開存)、そして右側が遺残した大動脈弓により囲まれてしまうことにより食道が圧迫され、食物が通過できなくなってしまいます。そのためこの病気の動物は他の同腹子よりも成長が遅くなることがあります。
 猫よりも犬のほうが多く、ジャーマンシェパード、アイリッシュセッター、ボストンテリアなどが好発犬種です。レントゲン検査で心臓の頭側部位で食道が拡張し、さらにバリウム検査により拡張した食道がより明確になります。慢性的な吐出により誤嚥性肺炎を引き起こした場合には肺炎の所見が現れます。内視鏡により食道の狭窄あるいは閉塞の他の原因を除外、また可能ならば画像診断により異常血管を検出します。
 この病気の動物に食事を与えるときには高い台上に柔らかくした食事を置いて、立たせた状態で与えます(テーブルフィーディング)。重力によって食道から胃へと食物を送るように、10~15分は立たせたままにしておきます。しかし食道の機能が重度に低下しないうちに、早期に手術をして異常血管を結紮することが必要になります。手術後には吐出が少なくなりますが食道機能が完全には正常にならないこともしばしばで、その際は誤嚥性肺炎の危険は常に伴うこととなるため、十分な理解が必要です。

脾臓摘出手術

11年10月04日

脾臓の役割
脾臓はリンパ系最大の器官であり、その主な役割は以下の4つがあります。
①血液の濾過
 脾臓は赤脾髄という部分で老化した赤血球や病的な赤血球、細菌などを除去しています。
②血液の貯蔵
 脾臓の赤脾髄は赤血球や血小板などを貯蔵する役割もあり、循環血液量の10%以上が貯留していると報告されています。急激な出血などが起こると、脾臓が収縮し貯蔵している血液を駆出します。
③免疫機能
 脾臓は白脾髄という部分で生体防御のための抗体を産生やリンパ球などの産生・成熟を行っています。また、赤脾髄でマクロファージによって細菌の貪食も行います。
④造血
 胎児期には赤脾髄でも血液をつくっていますが、生後は主に骨髄で造血されています。しかし、骨髄疾患などで造血能に異常をきたした時は赤脾髄で造血が行われることがあります。

脾臓摘出を必要とする病気
一般的に脾臓摘出を必要とする病気には、脾臓の腫瘍や重度の外傷による脾臓破裂などがあります。脾臓疾患の症状は非特異的なことが多く、急性から慢性まで様々です。最も多い症状は突然の元気消失、嘔吐、体重減少、貧血などで、腹部の触診で脾腫(脾臓の腫れ)が認められることがあります。様々な脾臓疾患を鑑別するため、また手術を行えるかどうか評価するために血液検査、レントゲン検査、エコー検査などが必要で、場合によってはCTやバイオプシー検査を行うこともあります。脾臓からの出血により、腹腔内に血液が流れ出している場合は緊急手術が必要となります。

手術方法
手術は腹部の正中切開を行い、脾臓を確認、破裂や癒着がないか注意しながら腹腔外へ牽引します。脾臓に出入りする血管を結札・切断して脾臓を摘出します。当院では、血管の止血と切断を同時に行えるエンシールという機械を使用しているので、結札・切断するより大幅な時間短縮が可能となっています。

術後の影響
脾臓を摘出すると、出血性ショックや激しい運動に対する耐性が低くなるという報告もあり、体に全く影響がないとは言えませんが、基本的に脾臓の機能はほかの器官で代償できるものが多いため、脾臓を全摘出しても日常生活にあまり大きな影響はありません。