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最近のエントリー

多発性関節炎・多発性筋炎

15年04月26日

犬、特にスパニエル種にみられる。多発性筋炎と多発性関節炎のみを発症し、その他の免疫介在性疾患の症状は発症しない。左右対称性の非びらん性多発性炎症性関節症がみられる。
診断方法はX線検査、滑液検査、血液生化学検査、複数箇所の筋生検によって行われる。
また、同時に左右対称性に全身的な筋萎縮・筋拘縮を特徴とする多発性筋炎もみられる。
治療はプレドニゾロンあるいは免疫抑制剤の投与である。プレドニゾロンは初期は免疫抑制量で投薬し、数週間以上かけて減量する。その後休薬は可能であるが、再開する必要がある場合もある。免疫抑制剤はシクロホスファミドやアザチオプリンなどが使用される。投薬期間は通常3ヶ月以内である。

D.T

犬の精細胞腫

15年04月19日

RIMG1503.JPG

先日、ゴールデンレトリーバー(7歳、未去勢雄)の睾丸の1つが腫れているとのことで、手術にて精巣を摘出しました。
(写真はそのときに摘出した精巣です。写真の左側の精巣がもう片方の精巣よりも明らかに腫大しております。)
病理診断の結果は「精細胞腫」でした。
精細胞腫は精祖細胞に由来する胚細胞腫瘍であり、間細胞腫やセルトリ細胞腫とともに精巣も発生する代表的な腫瘍の一つです。一般には潜在精巣(腹腔内や鼠径部に精巣が停滞している状態)では腫瘍発生のリスクが増加すると言われておりますが、今回は陰嚢内の精巣が腫瘍化したものでした。
精巣に発生した腫瘍の中には、ホルモン産生異常を起こして雌性化症候群や骨髄抑制など様々な腫瘍随伴症を呈するものもあるので、未去勢犬の飼い主の方は睾丸の大きさなどに異常を感じましたら、当院までご相談下さい。
H.B.

ウサギの食欲不振

15年04月12日

ウサギの食欲不振は、様々な原因で起こりえます。まず、一番最初に注意しなければならない病気は、歯の臼歯過長症です。普段症状が出なくても、ちょっとした理由で咀嚼頻度が下がったりすると、臼歯が尖って舌を傷つけ、食欲不振になります。また他に消化器疾患があり、ウサギ消化器症候群と言われています。これらは原発でも、二次的にでも起こり、盲腸便秘や、鼓張、胃腸閉塞などが症状として現れます。もちろん、他にも腫瘍や、腎疾患、肝疾患、重度の感染症、心臓病、子宮疾患など様々な鑑別すべき病気はあります。
ウサギは、見た目に元気がない場合は、かなり深刻な症状であります。
野菜など好きなだけは食べるのも、食欲低下と考えられます。
糞の大きさが変わったり、軟便になったりすることがあります。
普段の便量からみて、明らかに少ない、食べないといった症状が出れば、早めに受診してください。
                                     M.N

不整脈原性右室心筋症

15年04月05日

かつて「ボクサー心筋症」と呼ばれていたこの疾患は、臨床所見や発生原因、病理組織像がヒトの不整脈原性右室心筋症に類似することが分かったため、現在ではこの名称で呼ばれています。近年、ボクサーの不整脈原性右室心筋症の病態に深く関連しているストリアチンの遺伝子上に8塩基対の欠失が認められることが明らかになり、常染色体優性遺伝の疾患であることが分かっています。この疾患の臨床所見は、ときおり心室性期外収縮が認められるが無症状であるものから心室頻脈性不整脈により失神、虚脱、運動不耐性などが起こり、さらにうっ血性心不全、突然死などが認められるものまで様々です。診断は、胸部X線検査や心電図検査、心臓超音波検査などの心臓の検査に加え、他の疾患を除外するための血液検査や腹腔内腫瘤が心室性不整脈の原因となる場合があるため腹部画像検査なども行います。中でも重要なのが不整脈原性右室心筋症が心室不整脈を特徴とする疾患であるため、心電図検査は必要不可欠となります。院内での短時間の心電図検査では、間欠的に生じる心室不整脈を検出できない場合があるため、正常であっても不整脈原性右室心筋症を除外できるわけではありません。よって24時間型心電図検査(ホルター心電図検査)が有用であり、心室不整脈の頻度を調べることによって無症状の症例の治療開始の目安としたり、治療効果の判定に用いることも可能です。治療は症状が発現している場合に各種の抗不整脈薬を用いたり、うっ血性心不全兆候が見られる場合には強心薬や血管拡張薬などを用いたりします。最近の研究では、ω3脂肪酸を補うことで心室性期外収縮が減少したとの報告もあります。不整脈原性右室心筋症は上述の通り遺伝性疾患であり、根治が困難な疾患であるため、疾患の遺伝を起こさないよう遺伝子検査を行って繁殖のコントロールを行うことが望まれます。 T.H.