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最近のエントリー

犬の鼻腔内腫瘍

12年10月19日

犬の鼻腔内腫瘍は、犬の腫瘍のうち1~2%を占める疾患です。多くはない腫瘍ですが、悪性腫瘍の場合が多い疾患です。また、皮膚の表面に出来る腫瘍と異なり、その発見が遅れる危険性が多い疾患です。飼い主様が気づけるような典型的な症状が初期にはほとんど認められないからです。犬の鼻腔内腫瘍の最もよく認められる症状は、片側性や両側性の鼻汁です。この鼻汁は、化膿性の黄色っぽい鼻汁のときも、血様鼻汁のこともありえます。そのほかにもくしゃみであったり、涙がよくでたり、呼吸がしにくいといった症状がでることもあります。鼻の腫瘍は進行すると顔面の変形などがあり、大きくなり脳に浸潤した場合は神経症状が出ることがあります。
診断をするのにCT検査、バイオプシー検査が必要な場合が多い疾患です。
予後は、治療を何もしなかった場合、鼻の上皮系腫瘍(表皮の腫瘍)であった場合、生存期間の中央値は、95日と言われていて、発見後一年生存した犬は12%といわれています。
治療としては、外科的治療、抗癌剤治療、放射線治療などがあり、それぞれに一定の効果が期待できます。
予後に左右される因子の一つはやはり早期発見です。
犬は、口腔内疾患(歯の問題)で鼻血が出ることはありえますが、鼻血は一般的によくおこることはないです。鼻汁も、よくおこる病気ではありません。このような病気が隠されていることがあります。もし、気になることがあれば、一度ご相談ください。
 

ネコの座創

12年10月16日

 ネコの下顎に毛包一致性のふくらみや、黒っぽい付着物が見られることがあります。これは座瘡といって、皮脂腺の分泌物が毛包内に貯留した状態です。
 通常、皮脂腺の分泌物は毛包内に出た後、毛包開孔部から排出されますが、何らかの原因で開孔部がつまると分泌物が毛包内に蓄えられてしまいます。口周りのグルーミングが不足している場合や脂漏症の兆候がある場合に発症すると考えられています。下顎のほか、皮脂腺の多い上下口唇部や側頸部にも見られることがあります。
 主な治療は、軽症例では皮脂を取り除く効果のあるシャンプーによる洗浄で、二次的に細菌感染を起こして重症化している場合は洗浄に加えて2~3週間の抗生物質の内服が必要です。精神的な要因も関わっているとも言われており、ネコちゃんにとってストレスが少ないような環境を作ってあげることも良い効果をもたらすかもしれません。しかし、原因が明らかでないので完治は難しいこともあり、生涯にわたって繰り返す子もいる疾患です。

血管肉腫

12年10月02日

血管肉腫

 血管肉腫は血管内皮細胞由来の悪性腫瘍で、脾臓、右心耳、皮膚や皮下に好発しますが、臨床的には脾臓の血管肉腫に遭遇するケースが最も多く経験されます。脾臓に腫瘤性病変が認めまれた際、ダブル2/3の法則が以前より提唱されています。すなわち、脾臓腫瘤の2/3が悪性で、そのうち2/3が血管肉腫であるとういう法則です。脾臓腫瘤の4/9、つまり約半数が血管肉腫であるということです。脾臓の血管肉腫は、突然の虚脱を主訴に来院されることが多い腫瘍です。腫瘍が破裂したために腹腔内出血により突然死を引き起こします。脾臓破裂をおこした症例では緊急手術が必要となります。
 血管肉腫は非常に侵襲性が強く、高い転移率を特徴とし、約80%で肝臓に転移し、その他、大網、腸間膜、肺など全身に転移病巣を形成します。また、貧血や血小板減少症、播種性血管内凝固(DIC)を高率で引き起こします。血管肉腫はこのような挙動をとる腫瘍のため、手術後無治療での中央生存期間は33日と報告されています。一方、手術後に化学療法を併用した場合の中央生存期間は240日といわれており、化学療法が奏功する腫瘍の一つです。
 しかし、可能であれば、腫瘍が破裂する前に発見し、手術を行い、化学療法を行いたいものです。早期発見であればあるほど長期生存が期待できます。その為には健康診断が何よりも重要になってきます。特に、血管肉腫の好発犬種であるジャーマンシェパード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーでは定期的な腹部エコー検査を強くお勧めいたします。