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ハムスターに多い病気

22年12月30日

 ハムスターはその飼いやすさからずっと定番のペットであり、小さいお子さんからご年配の方まで幅広い年代に人気です。昔はヒマワリの種のイメージが強くハムスターといえばヒマワリの種というくらいでしたが、近年では多給による肝臓障害の理解も広がるなど、飼育環境や食事管理についての正しい飼育方法が広まっていると感じます。ハムスターの4大疾病は腫瘍、膿瘍、腎障害、血栓症ですが、それ以外にも飼い主さんが気づきやすく発生の多い病気について紹介していきます。

・ニキビダニ症

ニキビダニ(毛包虫)は常在していますが免疫力の低下などで増殖すると皮膚炎を起こします。二次的に細菌感染も引き起こします。殺虫剤を使用して駆虫します。

・歯の不正咬合

特に切歯(前歯)に多く、ケージの金網や食器を異常に噛むことや、高所からの落下で痛めることで発症します。またヒマワリの種の多給でも発症します。治療は伸びた歯の定期的な切断や、飼育環境の整備を行います。

・頬袋脱(頬袋の反転)

頬袋が反転・脱出して元に戻らない状態です。長時間放置されると浮腫んで傷つき、壊死してしまうこともあります。浮腫みをとって元に戻し、再脱出しないように縫合します。壊死してしまった場合は切除が必要です。

・鼻炎

床材として使われるウッドチップやおがくずによるアレルギー反応によるものが多いとされ、その他タバコの煙やヘアスプレーなどの刺激も原因となります。治療は床材の変更やリスクのあるものを使用しないことで予防します。

・骨折

回し車やケージの金網に挟まることや、人が誤って踏んづけることで発生します。後肢の骨折が多いとされます。

 まだ他にもありますが、飼い主さんが気づきやすい病気としては以上が多いと考えます。かなり多くの病気が飼育環境や扱いによって発生するため、やはり正しい飼育知識が大事なことがよく分かります。小型動物はなかなか体調不良を表に出さないため、健康を損なっていることに気づきにくいです。体重をチェックすることは体調を知ることにすごく役立つため、体のチェックと体重測定を定期的にしてあげてくださいね。

ハム.jpg

T.S.

12月13日兵庫県開業獣医師会症例検討会「診断に苦慮した症例~血液・内分泌疾患を中心に~」

22年12月21日

 当然のことのようですが、正しい治療を行うには正しい診断が必要です。しかし熟練した獣医師であろうといつでも正しい診断を下せるとはかぎりません。講師に山口大学の上林聡之先生をお迎えした今回のセミナーはそんな話題でした。

診断のエラーには見逃し・誤診・診断の遅れといった3種類があります。これらの診断エラーは獣医師個人の力量のみによらず、環境や設備、検査の精度、多過ぎる情報やその精度、伝達の成否、確信・思い込みによる認知バイアスなど様々な要因が関わって起こります。認知バイアスは、人間誰しもが陥る「認知の偏り」、つまり偏った見方・考え方の癖のことです。認知バイアスには様々な種類がありしかもそれらは同時・連続して起こり得ます(図)必要最低限のコスト(検査や通院にかかる時間、費用)で正しい診断をつけることは動物と飼い主さんにとっても最善なことです。 典型的な症状を示す患者が現れた時、普通は最もあり得る疾患をまず疑いますが、決め打ちで限定的な検査のみを行うと同時に見逃しや誤診の落とし穴が隠れているようです。
シグナルメントと赤血球の非再生像からNRIMAを疑った症例念のため追加検査したところ実はバベシア感染症だったと判明するまで100日かかった例
起立困難を示す他院からの紹介症例で、最初に内服中の薬をよく聞かなかったがために基礎疾患にある甲状腺機能低下症に気づくまで1年かかった例
6ヶ月齢不明熱を示す犬の症例で、ステロイドに反応するため経過観察と再発を繰り返すうちに診断が下るまで3ヶ月かかった例
この症例は最終的に先天性の下垂体機能不全による続発性副腎皮質機能低下症と診断されました。この間致命的な炎症性疾患に罹患するリスクを抱えていたことになります。

患者本人が言葉を話せぬ動物である以上、飼い主と獣医師が協力して治療を行うということが獣医療の真髄ともいえるのではないでしょうか再考・反省をかさねて、日々出会うひとつひとつの症例に丁寧に接していきたいと思いした