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最近のエントリー

ウサギのヒト単純ヘルペス感染症

16年12月25日

今回は小動物臨床総合誌「J-VET」に大変興味深い記事がありましたので、ご紹介させていただきます。

人の口唇ヘルペスの原因であるヒト単純ヘルペスがウサギに与える影響について書かれたものです。

口唇ヘルペスはヒト単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)によって引き起こされ、全世界で50歳以下の約67%が感染しているとされています。このHSV-1はウサギにも感受性があり、感染実験では鼻腔内や眼球経路のウイルス接種によって感染することが確認されております。

ヒトでは主に口腔や口唇粘膜に病変を形成するのに対し、ウサギでは神経向性がみられ、致死率は接種経路により様々ですが、鼻腔内接種で最大95%、眼球接種で10%と報告されています。鼻腔内にウイルスを接種したウサギでは、接種後最短2日で神経症状を呈し、急速に死に至るという結果が得られています。症状としては、活動の低下/増加、運動失調、旋回運動など非特異的な神経症状に加え、流涎や失明もみられることがあります。また、潜伏感染についても報告されています。

また、口唇ヘルペスが発症したヒトに接触したウサギがどの程度の割合でヘルペスウイルス感染症を発症するのかなど、現時点では不明な点が多いですが、接触により発症の危険があるということは飼い主様にも知って頂き、口唇ヘルペスが発症した際にはマスクや手洗いを徹底してもらうことが予防に役立つかもしれません。

(J-VET 2016年12月号より)

D.T

フェレットの耳疥癬症

16年12月18日

猫ちゃんの外耳道疾患の代表的な原因の一つでもあるミミヒゼンダニは1997年の調査で日本で飼育されているフェレットの60%で感染が見られたという報告があります。
フェレットに感染するミミヒゼンダニのOtodectes属に位置するヒゼンダニは、同じヒゼンダニ類のSarcoptes属などの疥癬虫が皮膚に穿孔してトンネルを作るのに対して、穿孔せずに皮膚小片や組織液を栄養源とするタイプのヒゼンダニです。
ヒゼンダニの卵は3~4日で孵化し、2~3週間で成ダニへと成長します。その寿命は2か月ほどで、耳垢内やその周囲に生息しており、フェレットが頭を振ることによって剥がれた耳垢の接触にってほかのフェレットへと伝播していきます。
症状が激しい場合は頭を振ったり後肢で掻くような行為が見られ、外字の黒色耳垢、びらん、肥厚等が見られますが、
実際に痒みの症状がみられるのは全体の7%程度という報告があり、たとえ感染していても飼い主が気付かないことがよくあります。このことから耳疥癬症の痒みは疥癬虫同様にその死骸や糞に対してのアレルギーの有無が痒みに個体差がある原因と考えられています。
診断は特徴的な黒色耳垢を顕微鏡下で確認することによって診断しますが、実際に虫や卵が取れないこともあり、確認が取れない場合でも疑わしい時には治療をしていくのが一般的です。
治療としてはイベルメクチンの1週間間隔1~3回の経口投与のほか、皮下注射および外耳道への局所投与の有効性と安全性が報告されています。また、犬猫のノミダニの薬であるセラメクチンもヒゼンダニの駆虫に有効と報告があります。
ただし、ヒゼンダニは先ほどの通り、日本のフェレットの60%で感染が見られているという報告から、同居のフェレットがいる場合には症状がなくとも感染している可能性は高く、再発を予防するために一緒に駆虫してあげておくべきです。

S.A

腎性貧血

16年12月11日

慢性腎臓病(CKD)は飼い猫の一般的な障害です。これまでの研究では、老齢猫の15~30%がある程度の腎機能不全または明白な高尿素窒素血症を発症する可能性があるとされています。腎臓は赤血球生成への関与を含め、体内で複数の重要な代謝および内分泌機能を果たしており、腎臓病の悪化によってCKDの猫の30~65%が貧血を発症すると報告されています。

腎性貧血の主な原因は、CKDの進行に伴って骨髄で赤血球産生を調節する腎性ホルモンであるエリスロポエチンの産生が減少することです。また、CKD自体は慢性的な前炎症状態と関連することが知られており、炎症状態により産生される炎症性サイトカインは急性相蛋白であるヘプシジンの誘導によって相対的な鉄欠乏を引き起こしヘモグロビン生成が抑制されてしまいます。CKDの進行によって血液中の尿毒素が増加し、これにより赤血球の生成が低下したり、赤血球の生存期間が短縮したりします。尿毒症は血小板に悪影響を及ぼし、血小板機能の障害が胃腸出血を起こし、さらに貧血が進行する可能性もあります。このように腎性貧血の病態発生には多くの要因があります。

腎性貧血の治療には赤血球造血刺激因子(ESA)製剤を用います。代表的なESAにはエポエチンやダルベポエチンがあります。鉄はヘモグロビン生成および赤血球の機能にとって不可欠で、ESA治療を受けているすべての猫に投与が推奨されています。ESA治療中は定期的な血液検査を実施することで貧血の状態を随時モニターすることがおすすめです。また急性の失血や貧血の重篤な臨床徴候が見られる場合には輸血療法も適応となります。

慢性貧血は多くの経路を介して身体に悪影響を与え、生活の質を全体的に低下させます。したがって腎性貧血を早期に診断し、適切な治療・管理ができるように定期的な健康診断の実施が推奨されます。

H.B.

猫の愛撫誘発性攻撃行動

16年12月04日

愛撫誘発性攻撃行動とは、猫を撫でていると尻尾を振ったり身体をねじったりして、その後人に噛みついたり、抱いていた腕から逃げ出したりする行動の事です。

この行動の背景には、猫の特性が関係していると考えられています。猫は首から上はお互いにすり寄ったり舐めあったりしていますが、首から下は自分でなめてグルーミングしています。よって、猫の身体やお腹を撫でている時は、猫にとっては普通ではない場所を触られていると感じるため、イライラして興奮し、攻撃しています可能性が高いと考えられます。

この攻撃行動を防ぐには、猫のグルーミング行動を理解し、人も猫にならって首から上(頭、顔)を指先でこちょこちょくすぐるように撫でるのが良いです。撫でる際は尻尾の様子を見ながら撫で、尻尾がイライラするように揺れ出したらすぐに撫でる行為を止め、おやつをやるなどして気持ちを落ち着かせるようにすると良いです。

かわいい猫をより長く撫でてあげたい気持ちは分かりますが、無理強いして長く撫でないようにし、猫の特性を理解してより良い関係を築いてあげて下さい。

T.H.