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よく物にぶつかるようになった... それ本当にただの老化ですか?

22年05月27日

飼っているワンちゃんが散歩中や家の中で物にぶつかる場合があります。これは眼や脳の疾患のサインかもしれません。全く物が見えていないのか、距離感がつかめていないのか、観察する必要があります。

犬が物にぶつかる時に考えられる疾患をいくつか挙げていきます。

一つ目は眼の病気です。

加齢などで、白内障を発症し、眼がよく見えなくなって、物にぶつかることがあります。徐々に見えなくなるため、慣れ親しんだ家の中では、何事もなかったかのように移動している場合でも、知らない場所や、模様替えをして家具の配置が換わったりするとぶつかることがあって、「見えていない」と初めて飼い主が気づくことも多いそうです。 

また、犬種によっては遺伝性の網膜の疾患で進行性の網膜萎縮があります。映像や光を感じ取る網膜とい部分が萎縮または変性することで発症する疾患です。両目に発症し、視細胞の障害によって徐々に視覚が低下してしまいます。視力があるうちは昼間は正常に生活しているように見えますが、夜になると物や壁にぶつかるようになり、最終的には昼夜問わず視覚を消失します。

次に関節の病気です。

骨や関節の病気でも物や壁にぶつかることがあります。犬の骨や関節の病気には様々な進行性の疾患がありますが、早期発見と早期治療が行われなかった場合、少しずつ症状が悪化し、痛みを伴い、手術が必要になる場合もあります。違和感や痛みによって歩行が困難になり、物や壁をうまく避けることができずにぶつかってしまいます。

最後が脳の病気です。

犬の認知機能低下によっても物にぶつかることがあります。認知機能低下とは、加齢により起きる、いわゆる認知症です。 呼んでも反応がない等、ぼんやりする時間が増えるほか、失禁、昼夜逆転、徘徊などの行動障害が現れます。

あと怖いのが、脳腫瘍や脳炎になります。

老犬に発症しやすく、早期発見が難しい病気です。てんかん発作が起こることで初めて異常を感じられることが多いですが、腫瘍や脳炎が起こる場所によっては、その前にいろんな症状が確認できます。主な症状は次の通りです。

✔物や壁にぶつかる

✔動作がゆっくりになる

✔歩くことや走ることを嫌がる

✔元気や食欲がなくなる

✔段差を飛び越えられない

✔徘徊する 落ち着きがない

これらの症状が認められたら要注意です。また腫瘍や脳炎の起こる場所によっては、瞳孔いわゆる黒目のサイズが変わらないことが散見されます。これは簡単にチェックできることなので、物にぶつかるようになったり、動くのを嫌がるようになった場合には、眼の様子も気にして見てみてください。

これらの挙げた疾患以外にも視覚を消失する病気はいっぱいあります。気になる症状があればすぐに病院に相談するようにしてください。深刻な病気が隠れている場合があり、早期発見・早期治療が重要になってくる場合が多いですよ。

視覚が急に消失すると動物も混乱して、その場から動くことが少なくなったり、まれに攻撃性が増したりすることもあります。そのような場合には触る前に声をかけて驚かせないようにしましょう。

視覚障害になってしまったら、なるべく不自由が無く暮らせるように、家具の配置を変えない、段差をなくす、ぶつかりそうな角にはクッションをつける、声をかけてから触るようにする等のケアも気にしてしてあげるようにしましょう。

Y.N.

犬の脳炎

22年05月25日

 若い犬がてんかん発作、ふらつきなどの症状で来院すると、その原因として脳炎が潜んでいることがときどきあります。犬の脳炎は感染性(ウイルス性、細菌性、寄生虫性など)と非感染性に区別され、感染性はワクチン接種が広まっているため少なくなっています。非感染性脳炎は自己免疫性疾患であり、遺伝的素因が多いとされています。中枢神経の自己免疫性疾患は特発性脳炎として分類され、さらに壊死性髄膜脳炎(いわゆるパグ脳炎)、壊死性白質脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎などに細分類されます。若齢~中年齢の小型犬に多く、チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテリア、パグなど日本で人気の子に多くみられます。特に若い子では特発性てんかんとの鑑別が重要なため、診断は症状に基づいてMRI検査を行います。

 自己免疫性疾患のため、治療は免疫抑制治療になります。ステロイドのみではコントロールが難しいことが多く、免疫抑制剤や、免疫抑制効果を持つ抗がん剤を併用することで脳炎の管理をしていきます。症状が抑えられても、その後も継続的な治療が必要なためその子に合った治療法を探していく必要があります。いくつかの治療法が提案されてはいますが、治療の反応に乏しく亡くなってしまう子もいるため注意が必要な病気です。

 症例によっては急速に進行するため早期に診断・治療に入る必要があり、迅速な判断が求められる疾病でもあります。近年ではMRI撮影ができるようになったため診断頻度が増えていますが、今後もしっかりと診断・治療していきたいと思っています。

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T.S.

猫ちゃんの行動変化は気になりませんか?

22年05月24日

みなさんは飼っている猫ちゃんが高齢になってくるにつれて

・高いところにジャンプできなくなる

・逆に飛び降りることができなくなった

・爪とぎしなくなった

・グルーミングしなくなる

・人との関わりを避けるようになる

・トイレの粗相

などの変化を感じられたことはありませんか?

これは、他の要因ももちろん考えられますが、運動器疾患が原因である可能性もあります。

運動器疾患といえば、犬では、骨折、変形性関節症、膝蓋骨脱臼や前十字靭帯断裂など多くの運動器疾患があります。当院でも毎月のように犬の運動器疾患の手術がありますし、毎日のように跛行などの運動障害を罹患したワンちゃんが来院されます。対して猫は犬と比べるとあまり馴染みがないようなイメージがあると思います(もちろん骨折や外傷は多いですが)。ですが、実際のところ猫にも多くの運動疾患があります。ある調査では、猫で最も多い関節疾患は外傷による脱臼や骨折、それに次いで変形性関節症となっています。猫では6歳以上で6〜7割の猫で変形性関節症が、12歳以上で9割の猫に変形性関節症があるという報告もあります。意外に変形性関節症が多いのです。

この変形性関節症(OA)は関節軟骨の変性と破壊、関節周辺や下骨における骨増生、2次性滑膜炎を伴う進行性かつ非感染症の疾患と定義されています。犬でもO Aは好発疾患で、通常他の疾患(前十字靭帯断裂などの疾患)に続発したものが多いですが猫では加齢による1次性のものが多いです。

10歳以上O Aを罹患した猫に対して行った調査で最も変形しているのが多かった部位は脊椎、それに次いで手根関節、肘関節の順でした。脊椎ならジャンプしたり飛び降りて着地するのを嫌がりますし、手根関節や肘なら着地や爪とぎも嫌がるようになります。

このように高齢になってくるとOAに伴う様々な行動の変化を伴うようになってくるので

以上の変化が気になったり、飼っている猫ちゃんが10歳を過ぎた段階で身体検査やレントゲン検査などのアプローチをしてみるのをお勧めします。

O Aなどの関節症に関してはサプリメントによる日々のケアなどがおすすめになります。気になる方は相談してみて下さい。

R.I

猫の排便

22年05月20日

高齢化に伴い、猫の排便量についての質問が増えたように思えます。

個体により様々であり、毎日排便する猫もいれば1日おきに排便する猫もいます。

一般的には便が停滞し、規則的な排便が難しい状態を便秘と呼んでいる。

それが長く続き、巨大になった糞塊を自力で出せなくなってしまうことを便閉塞、のちに巨大結腸症へと移行していきます。

原因は骨盤の骨格などの構造的な問題や行動学的な問題を挙げられることがあるが、最も多く遭遇する原因は便の水分不足です。

内分泌疾患のうち、甲状腺機能亢進症や腎不全などの多尿から脱水を引き起こし、結腸での水分吸収が増えることにより便が硬くなってしまうことがあります。緩下剤を使うことで症状の緩和に繋がりますが、便秘が続くようであれば血液検査等が推奨されます。

H.F

猫砂の上で踏ん張る猫のイラスト

帝王切開後の哺乳

22年05月15日

帝王切開後の新生子の吸乳のタイミングですがこれは母体が安定しており許容する姿勢を示せばなるべく早いほうが良いです。これは新生子の吸乳によってオキシトシンの分泌が促進されるためです。オキシトシンは母体の子宮修復を促す作用、乳汁の射出、母性の発現ともかかわっています。当院では帝王切開時にオキシトシンも併せて使用しておりますが新生子を早めにつけてあげることは母体にとってもいい影響があります。もちろん初乳に含まれる抗体で新生子の免疫をあげる意図もあります。

一方でつけないほうがいい場合や人工哺乳を足す必要がある場合もあります。つけないほうがいい場合は母体がヒステリーを起こす場合や母体の子宮炎や子宮退縮不全により乳汁中に細菌の毒素が混入する場合です。後者では新生子の腹部膨満や緊張を特徴とする乳汁中毒症候群を引き起こす場合があります。また母乳の出る量は正確に評価することはできません。新生子の体重が乳汁がきちんと出ているか、飲めているかの指標になります。新生子の体重が予定通り増加しない場合にも人工哺乳する必要があります。 哺乳瓶での人工哺乳やカテーテルをもちいた方法があります。お困りの際はご連絡ください。

K.Y

犬の胆嚢粘液嚢腫の手術

22年05月07日

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を1時的にためて濃縮しておく器官です。胆汁は脂肪の消化吸収を助ける働きがあり胆嚢から総胆管を通って十二指腸から消化液として分泌されます。胆嚢粘液嚢腫は胆汁の過剰濃縮と変性により胆泥となったものや胆石が引き金となり胆嚢壁での粘液の産生が過剰になり運動性が低下し胆嚢内容が肺摂津できなくなり病気です。4月は3頭の犬の胆嚢粘液嚢腫を手術いたしました。1頭の胆嚢内容物は硬化し完全な塊になって胆嚢に張り付いておりました。(写真)2頭はどろどろで粘張性が高くスライムのような状態で取り出すのに苦労しました。胆嚢粘液嚢腫は年々増加している病気です。エコーで確認し、CTで総胆管に結石がないかどうかを確認したのち肝臓から胆嚢を分離して総胆管で結紮、摘出します。手術のタイミングが難しい病気と言われておりますが多数の手術を行っておりますのでご相談ください。

S.S

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ウサギの去勢手術

22年05月05日

ウサギの去勢手術のメリット、デメリットを記載してみました。メリット:(繁殖制限)非常にかわいくて一見温和に見えるウサギではありますが、多頭飼育を行うと生死にかかわるようになくらいの派手な喧嘩をすることも多くお勧めできません。多頭飼いにならいためにも不要な妊娠は避けることは非常に大切なことです。(精神的ストレスの軽減)ウサギは非常に高い繁殖能力をもっており、それゆえ交尾をしないことにより、ストレス状態が続き性格の不安定が生じることがあります。また、尿スプレーのようなマーキング行動で縄張りを主張したり、さらに意識が強くなると飼い主に対して攻撃的になることもあります。(生殖器関連の病気予防)メスは子宮関連の病気により非常に短命になることが分かっています。オスはそれほど頻度は高くありませんが、精巣腫瘍は起きてくるため予防に役立ちます。去勢後は性格が穏やかになる子が多く、尿スプレーは90%以上がなくなります。精神的なストレスから解放するだけでなく、にんげんと一緒に暮らすコンパニオン・アニマルとして好ましい状態に近づきます。デメリット:(麻酔)残念ながら手術には麻酔がつきものです。ウサギは麻酔に弱い動物として知られておりますが近年麻酔薬や技術の向上によりリスクは確実に低くなっています。麻酔関連リスクは1%未満です。(術後の肥満)去勢手術を受けたことにより肥満傾向を示すウサギもいます。体重を計測しフード{ペレット}を減らす、カロリーの少ない牧草に変更する{アルファルファ→チモシー}など工夫をすることで対処できます。

去勢をすることは「自然なこと」ではありません。自然界であれば周りにメスがいて交尾をし、子供を増やすことができます。しかしコンパニオンアニマルとして家族の1員として迎える以上自然でない状況は避けることができず新たなストレスが起きてきます。病気の予防ももちろん重要ですが、問題行動(性格・尿スプレー・マーキング、マウンティング)にお悩みであれば去勢手術もご検討ください。

S.S

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