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最近のエントリー

馬尾症候群

14年08月31日

馬尾症候群とは馬尾と呼ばれる腰部から尾部にかけての脊髄神経が椎間板突出によって圧迫されることで生じる神経障害です。症状としては立ち上がることが遅くなったり、段差を嫌うようになったりすることが特徴的で、他にも運動後の後肢の跛行、尻尾を振ることや上げることを嫌うなどが挙げられます。重症になると肛門の緊張低下や排尿・排便失調が起こります。これらは膀胱炎や皮膚炎などを続発させ、ワンちゃんのQOLを下げるように思えます。馬尾症候群は高齢犬に多く、症状からも老化で片付けられてしまいがちです。完全な治療には手術が必要になりますが、症状を緩和する方法もございます。気になる方はぜひ一度ご相談ください。K.Y

体外循環を行う心臓外科手術

14年08月26日

狭山動物心臓病研究会/白石動物病院の菅野信之先生の心臓外科チームの手術を見学してきました。今後当院が参加している会でタイアップして手術を行っていく予定です。体外循環もおこない先天性心疾患、ペースメーカーの埋め込み、重度の僧房弁閉鎖不全症の犬に対する僧房弁形成術などを行います。難易度はそれぞれ異なりますが、とくに今後弁膜症の手術は需要が増えてくるものと思われます。世界に先駆けて金本先生、上地先生が体外循環による僧房弁形成術を多症例行ってこられ欧米でも非常に高い評価を受けております。菅野先生も手術症例が増えてかなり高い成功率をおさめています。体外循環で心臓を止め開心して行う手術ですのでリスクも伴いますが内科的にコントロール困難な症例に対しては非常に価値ある唯一の方法となっています。今後関西でも手術を受けられるように体制を整えていく予定です。

S.S

犬のレプトスピラ症(Leptospira interrogans)

14年08月24日

レプトスピラとは螺旋状のスピロヘータ類に含まれ、人獣共通感染症で動物からヒトに感染する。犬のレプトスピラ症は犬で唯一の監視伝染病で、罹患又は罹患している疑いがあれば、獣医師は遅滞なく、都道府県知事に届け出なければならない感染症の一つである。
レプトスピラは温暖な地域(沖縄、九州、四国等)でしばしば認められ、近畿でも発生する報告がなされている。因みに、本院が所在する三田市は他の地域と比較し感染リスクが高い。
発症は夏から初秋にかけて頻繁に認められ、その数は大雨の年には増加する傾向がある。感染源は保菌動物の尿で、主に犬への感染は野生のタヌキ・アライグマ・ネズミの尿が多い。尿中のレプトスピラは、体表の擦り傷や健康な粘膜を介して侵入する。また菌は咬み傷、性交、胎盤からも侵入し、さらに汚染された組織、土壌、水、食物その他媒介物の摂取によっても感染する。犬においては肝臓と腎臓内で顕著に増殖し、肝臓病及び腎臓病を引き起こすことがある。犬では、感染後2~3週間後に自然治癒する場合もあるが、慢性進行性肝炎、慢性腎臓病に移行する。甚急性例では、乏尿性・無尿性の急性腎不全を引き起こすリスクもある。
レプトスピラ症は品種・年齢・性別に関係なく感染する可能性がある。症状は、甚急性例では元気消失、食欲廃絶、下痢・嘔吐等の消化器症状、黒色タール便・鼻出血・点状出血・斑状出血などの止血機能異常、乏尿・無尿、肝性黄疸、ブドウ膜炎、発咳など様々な症状を起こし得る。山、池や河川周辺にワンちゃんを連れて行き、このような症状が認められたら最寄の動物病院で一度診察を受けることをお勧めします。 D.T

鳥類のトリコモナス症

14年08月17日

  トリコモナスが寄生することにより発症します。最初はそ嚢に寄生し、その後周辺の器官を次々と侵し、様々な症状を引き起こします。
 鳥の種類により症状は多少異なり、フィンチ類ではそ嚢炎、結膜炎、喉の腫脹、嚥下困難が見られ、インコ類ではそ嚢炎、副鼻腔炎、顔面浮腫、独特の口臭が見られます。また、オカメインコ、大型インコ、オウムの場合では感染が起こっても、感染鳥の体力が低下しているときのみに発病します。
 診断方法は糞便検査、そ嚢内液検査による原虫の検出です。
 治療方法はメトロニダゾールまたはチニダゾールの投与、食欲不振がある場合は強制給餌を行う必要もあります。

d.t

猫の扁平上皮癌

14年08月10日

扁平上皮癌は猫の皮膚に発生する一般的な腫瘍です。特に外に出る猫では紫外線が刺激となり、耳、顔面、眼瞼、鼻梁などに強い炎症がおこりその部分が癌化することがあります。これは毛の色の薄い猫、あるいは白猫によく見られます。また外耳炎が慢性化したような場合にも分泌された耳垢に刺激物質が含まれており、それが癌化を促進させるとの報告もあります。このような誘因により発生するため、扁平上皮癌の多くは顔面の組織に発生する傾向があります。
症状は、一般的な腫瘍病変と同様にしこりを形成するのみではなく、炎症性疾患が原因である場合は強いかゆみなどの症状をおこし、皮膚のびらん・潰瘍病変を形成し周囲の組織へ浸潤しその機能を障害します。末期にはその組織の機能障害を強く起こすとともに、腫瘍性の悪液質(衰弱状態)に陥ります。
診断は一般の皮膚腫瘍と同様に、針吸引生検に代表される病理組織検査により診断することが可能です。
治療は外科的切除が第一選択で、耳介、耳道、眼球、下顎に発生した腫瘍は完全に切除できれば良好な予後が期待できます。しかし顔面の器官に腫瘍が発生した場合、切除すると生活レベルに支障が出る重要な器官である場合が多いので切除不能な場合も多々あり、早い例では1,2カ月で腫瘍の侵襲が進んでしまうなど予後は悪いです。また治療としては確立していないのですが、切除不能な症例に放射線療法や抗癌剤あるいはインターフェロンによる治療などが効果があったとされる報告もあります。
猫では、紫外線の刺激、外耳炎などからの発生例が報告されていますので、長時間外に出さない、外耳炎の治療をきちんと行うなどのことは扁平上皮癌の発生をおさえるのに有効だと思われます。
H.B.

犬の誤飲

14年08月03日

動物が、食べてはいけないものを食べてしまったという連絡が多くあります。誤飲してしまったものを、体の外に出すのには、①経過をみる ②嘔吐させる ③胃洗浄 ④内視鏡 ⑤お腹をあけて取り出す という選択肢があります。①は、明らかに細かく食べたりして小腸を通過できると判断できるものや、食べてはいけないものでも少量なら様子を見ていただくことがあります。意外に思われる飼い主様もいらっしゃるのですがチョコレートなどもごく微量なら、問題ないので様子を見て頂くことがあります。しかしそれは量によりますので、何キロの犬が、どの種類(ダークチョコや、ミルクチョコ)をどれくらい食べたかの確認が重要です。②は、嘔吐をさせても大丈夫なものを食べた場合や、胃洗浄までいかなくてもアスピリンなど、少しでも吸収を防ぎたい場合に行います。嘔吐は、お薬でおこないますが、嘔吐しない場合や嘔吐したくても出来ない場合は③の胃洗浄か、緊急でないなら内視鏡を試みます。③の胃洗浄はどろっとしたものを大量に食べてしまった場合や、危険な内服薬などを大量に飲んでしまった場合に麻酔をかけて行います。④内視鏡は、胃と胃の出口、小腸の一部まで見ることが出来ます。麻酔をかけないと出来ませんが、確実に溶けない異物が胃の中にあるかを確認することが出来ますし、もし異物があれば摘出できる方法です。しかしながら食べ物が少しでも入っていると内視鏡では見ることが出来ないので、食事を抜いて頂くことが重要です。⑤の開腹の選択肢は最終的なもので、胃を通り越してしまって内視鏡が届かない場所で詰まってしまったり、紐状のものが絡んでいたり、大量や大型の物を食べてしまった場合に行います。手術ですので最も負担はかかりますが、それ以外の選択が出来ない場合に行います。
 犬は、時にびっくりするようなものを食べます。一瞬であるのと、飼い主様が急いで取り上げようとすると逆に飲み込んでしまうことが多いです。近くに置かないというのはもちろんなのですが、飲み込んでしまった場合は、何をどれだけ、いつ飲み込んだかをまず当院に電話をして頂き、商品のパッケージや残り、同じものがあればそれを持ってきていただければ、速やかな対応が可能です。上記に示した通りいろいろな方法がありますので、もしそのようなことがあれば来院前にまずご連絡ください。 M.N