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最近のエントリー

尿管結石

14年03月30日

ヒトでは非常に痛いと言われている尿路結石による尿路閉塞ですが、動物も同様です。腹部の激しい疼痛が突発し、不安、沈鬱、腹部の緊張、嘔吐などを示します。疼痛の原因は腎臓で形成された結石が尿管に下降し、尿の通行障害を起こすことで集合管や腎被膜が拡張することによります。しかし、疼痛部位の確定は困難でレントゲン撮影や超音波検査を行う必要があります。尿路結石の原因は多岐にわたりますが、何らかの尿路通行障害があること、尿路感染、水分摂取不足、食事、血中カルシウム濃度が高値を示すクッシング症候群などが関与しています。治療法は、閉塞の程度と動物の状態、感染症の有無によって決定しますが、尿路感染症がない場合は外科手術は急がず、4~8週間腎臓にダメージが及ばないようにモニタリングを行います。ただし、腎臓にダメージが認められる場合は直ちに外科手術を行う必要があります。
尿路結石で疼痛を示していた犬は、1か月ほど毎日皮下注射をしていましたが、ようやく結石が流れました。治療中は非常に痛そうで、鎮痛薬もあまり効かないようでしたが、結石が流れてしまうと見違えるように元気になりました。また、昨日は尿管結石の猫が来院し、腎臓へのダメージが認められたので急遽尿管結石摘出術を行いました。                                 M.M.  

がん患者における栄養

14年03月23日

 がんの動物ではがんの発育による全身の衰弱から体重減少を呈し、また一般状態の悪化から食欲不振となることでさらに栄養不良となることで悪循環となり、動物はますます体重減少してしまいます。この状態をがん性悪液質といいます。このことで免疫機能、心肺機能、消化機能などさまざまな症状を引き起こします。
 炭水化物は腫瘍の最も好む栄養素であり、動物にとっては高インスリン状態であるためうまく炭水化物を利用することができません。また炭水化物を腫瘍が嫌気的に分解することで乳酸が発生し、乳酸を還元するために動物はさらにエネルギーを奪ってしまいます。逆に腫瘍は脂肪をうまく利用することができませんが、動物はがんであっても脂肪を酸化することでエネルギーとして利用することができます。そのためがん患者では、低炭水化物、高脂肪、良質な高タンパクの食事が有用となります。
 短期間食べないだけで悪液質となることから、食欲増進剤やチューブでの経腸栄養など早期の栄養管理が必要となります。粘膜の健康を保つグルタミン、免疫機能に関与するアルギニン、抗腫瘍効果のあるEPAやDHAなどを添加することでさらに効果的となります。ただでさえがんと闘っている動物ですから、不快な症状を取り除くことで普通に食べたり飲んだり、生活の質を維持したいものです。そしてそれが動物の命をつなぐことにもなります。
T.S.

マンソン裂頭条虫症について

14年03月16日

春になり暖かくなってくると、道端でヘビやカエルを見かけることが多くなると思います。
外飼いされている猫や犬、また散歩中に間違ってカエルやヘビを食べてしまうことでマンソン裂頭条虫症にかかる恐れがあります。
マンソン裂頭条虫症は多数の成虫が寄生した場合に粘血便を伴った慢性的下痢、食物の通過及び消化障害、それに伴う幼犬、幼猫での栄養不良がみられます。また、食欲の亢進や異食症などがみられることもあります。
診断は検便による糞便内の虫卵の検出や、糞便内の虫体を肉眼的に確認する方法があります。
治療法は駆虫薬の投与であり、その後の検査において虫卵が確認されないか検査する必要があります。
予防法としてはヘビ、カエルの捕食をさせないことであり、散歩のときは十分に注意してあげましょう。
D.T

犬の直腸腺癌

14年03月09日

犬の大腸腫瘍症例では、症状として血便や排便の異常などが認められることが多くあります。犬の大腸腫瘍の6割近くは腺癌が占めますが、そのほかに平滑筋肉腫・GISTなどの肉腫、リンパ腫、形質細胞腫など様々な種類が存在します。細胞診断や組織生検などを行なうことで、腫瘍の確定を得ることができます。また全身的な画像検査(レントゲン検査、腹部エコー検査、内視鏡検査、CT検査など)によって腫瘍の詳細な発生部位、リンパ節転移などの腫瘍の進行度を把握することができます。

先日、5歳のワイヤーフォックステリアの直腸粘膜に発生した腫瘤を外科手術にて摘出しました。術前生検および摘出した腫瘤の病理組織検査の結果、直腸腺癌(低悪性度)と診断されました。腫瘍はとりきれており、今後の経過も良好と予測されますが、直腸腺癌は多発傾向にあることから、新たな病変の形成について経過に注意していきたいと思います。
H.B.

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犬の疼痛

14年03月02日

「何か痛がっている」ということを飼い主様が感じ、当院に受診されることがあります。 それは、なんとなくであったり、じっとしていたり、震えていたり、急に鳴きだしたり、食べ方がゆっくりであったり、肢を着かなかったり、様々な違和感で感じられることがあります。原因はいわゆる痛みであったり、実は、何かの病気で体がしんどかったり、頭の疾患であったりと様々です。 また痛みも、皮膚の潰瘍などの痛み、骨格筋の痛み、胸部、腹部痛、尿管結石等の痛みなど多岐に渡ります。肢を庇うので、その肢に原因があると考えられていたものが、実は肢ではなく神経の病気であったとの報告もあります。また後ろ肢がふらつく犬で足腰が弱くなったかのようにみえますが、実は尿路感染症であったり等もあります。 診断に必要な検査には触診、歩行検査、血液検査やレントゲン検査、尿検査、エコー検査、CT,MRI検査などがあります。 いろいろな検査を組み合わせて診断していきます。どこが痛いのか、苦しいのか、漠然としたものから絞り込む必要があります。 飼い主様からの問診も重要な手掛かりになることがあります。 飼い主様の違和感をしっかり受け止め、よく話し合い、診断に繋げていきたいと思います。 M.N