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動物愛護管理法 改正

13年11月30日

平成25年9月1日より、改正された動物愛護管理法が施行されました。
主なポイントとして、
・終生飼養の徹底
・動物取扱業者による適正な取扱いの推進
・罰則の強化
などがあります。
終生飼養の徹底として、迷子札や犬であれば狂犬病の鑑札をつけたり、マイクロチップを挿入することで、誰が飼っているのかを明確にしましょう。また、マイクロチップは皮下に埋め込むので、災害時や首輪などがなくなった時でも役に立ちます。
また、都道府県等は、終生飼養に反する理由による引取り(動物取扱業者からの引取り、繰り返しての引取り、老齢や病気を理由とした引取り等)を拒否できるようになりました。

動物取扱業者による適正な取扱いの推進として、第一種動物取扱業者(哺乳類、鳥類、爬虫類の販売を業として営む者)は、 販売に際してあらかじめ、購入者に対して現物確認・対面説明をすることが義務付けられました。ネットのみでの販売が原則禁止となりました。
幼齢の犬猫の販売制限が設けられました。幼少期に親兄弟と離れた場合、吠え癖やかみ癖などが生じやすくなります。改正動物愛護管理法では、生後56日を経過しない犬及び猫の販売、販売のための引渡し・展示が禁止されました。(改正動物愛護管理法の施行時(平成25年9月1日)から3年間は、生後45日を経過しない犬及び猫の販売等が禁止)

他にもさまざまな点が改正されていますが、この改正によって、刹処分される動物の数が減り、動物を飼う楽しみが増えれることを期待します。

血栓症

13年11月11日

 血栓症とは、心腔内や血管内腔に凝血塊が形成されることです。凝血塊は主に左心房や左心室内で形成され、その凝血塊が末梢血管を閉塞することで血栓塞栓症が発生します。
 血栓形成には、「Virchowの3要因」と呼ばれる、①血管壁の性状変化、②血流の変化、③血液成分の変化、といったこれら3つの要素が関連していると考えられています。
①血管壁の性状変化とは即ち血管内皮細胞の損傷を意味しますが、そのような病態を引き起こす疾患としては、敗血症やフィラリア症、悪性腫瘍、再灌流障害、血管炎などがあります。
②血流の変化には、主に心疾患による血流の停滞が挙げられますが、それ以外にも腫瘍による血管の閉塞なども挙げられます。
③血液成分の変化による凝固亢進状態を引き起こすものとしては、アンチトロンビン欠乏を起こす蛋白漏出性腎症や蛋白漏出性腸症、播種性血管内凝固(DIC)などに加え、敗血症、免疫介在性溶血性貧血、急性膵炎、クッシング症候群などが挙げられます。
 血栓塞栓症による症状は、形成された血栓が阻害する血流の程度と塞栓部位によって決定されます。血栓が塞栓する部位として、大動脈腸骨動脈分岐部、肺動脈、門脈、前大静脈、右腕頭動脈、腎動脈、腸間膜動脈などが知られていますが、どの部位にでも塞栓する可能性があります。
特に大動脈腸骨動脈分岐部に起こる大動脈血栓塞栓症は、ネコで心筋症に伴って引き起こされることが多い疾患です。甚急性に片不全麻痺、異常な発声、非常に激しい疼痛等を発症します。
 血栓塞栓症の診断には特異的なものはなく、臨床兆候、身体検査、画像検査、臨床検査を総合的に判断する必要があります。超音波検査によって塞栓した血栓を描出できることもありますが、血栓の大きさや塞栓部位によっては描出が困難な場合も多くあります。CTでは血栓の大きさや位置だけではなく側副血行路の様子も同時に評価できます。臨床検査では、D-dimer、FDPなどの線溶マーカーやアンチトロンビン、トロンボエラストグラフィーなど獣医学領域でも利用できる機会が増えてきています。
 治療には、外科手術による血栓除去術が直接的で有効な治療法となりますが、高い麻酔リスクや摘出後の再灌流障害などの問題から、内科的治療を選択されるケースも多くあります。
医学領域では様々な抗血栓薬が研究され、血栓症のリスクがある患者のほとんどにおいて投与されていますが、それに対して獣医学領域では臨床データが少なく、まだ確立したものがありません。すでに形成されている血栓を溶解する組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)製剤、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼなどの血栓溶解剤や、新たに血栓が形成されないようにする低分子量ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬、ルンブルクスルベルスなど血栓予防効果が期待されるサプリメントなどが使用されます。
 血栓塞栓症は、引き起こされると治療が困難になるケースが少なくありません。血栓症を引き起こす可能性のある疾患の早期発見とその疾患に対する治療および血栓予防が重要となります。   T.H.

鳥の皮膚病

13年11月10日

鳥にもたくさんの病気が存在します。感染症,そのう炎,卵詰まり,毛引き症,痛風,結膜炎,アボカド中毒,アルカロイド中毒,腫瘍などなどです。今回は非感染性の皮膚や羽の疾患について少し紹介します。

●換羽障害
オウム類の換羽は,飛行能力を損なうことなく1年を通じて進行します。オウムの場合,換羽は春先から夏にかけてピークを迎えます。ホルモンバランスに障害があると換羽のパターンが不規則になったり,換羽が全く起こらなかったり,羽毛が変色するなどの異常が見られます。換羽の際,鳥がかゆみから羽毛をついばんだり,引っ張ったりする事がありますがこれは異常ではありません。羽毛のコンディション維持には十分な栄養摂取が大切で,特に硫黄加アミノ酸の摂取が重要です。

●毛引き症
これは皮膚・羽毛の疾患,掻痒を伴う代謝障害が起こっているか,または飼育環境に問題があるときに見られます。運動・刺激の不足,性的な欲求不満,攻撃性を抑圧されたとき,オーナーが変わった,食事内容の変化,ケージの位置の変化などが引き金になることがあります。たいていの場合,頭と頸だけに羽毛が残った状態になります。治療はまず,可能性のある疾患の治療を行い,次に環境面の原因を取り除くと同時にビタミンの補給を行います。玩具を与える,ラジオを流す,他の鳥を同伴させるなどで鳥の気を散らす方法や,エリザベスカラーの装着,羽に苦い味のするスプレーをかけたりもしますが,常に成功するとは限りません。毛引きが癖になってしまうと大変治りにくいので,なるべく早めに治療を始めてあげましょう。
                                                            M.M.

猫の甲状腺摘出手術

13年11月09日

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甲状腺機能亢進症の16歳の猫の甲状腺摘出手術です。長期にわたり抗甲状腺剤を投薬されておりましたが状態が安定しなくて来院されました。高齢で腎不全もあるためご心配されていましたが手術後体重も増えて良好です。反対側は委縮しており術後甲状腺値は低値ですが、甲状腺ホルモン剤の補充追加の必要もなく元気に過ごしてくれております。猫の甲状腺機能亢進症の手術は、投薬の手間も費用もなくなり満足していただける症例がほとんどです。
S.S

乾性角結膜炎(ドライアイ)

13年11月03日

 ドライアイは犬によく見られ、涙液減少による角結膜炎を引き起こし、粘性眼脂の付着や結膜充血が主な症状として見られる疾患です。角膜表面が常に乾燥しているため、角膜に傷をつけやすいのが最も懸念される問題点です。
 原因は涙腺に対して自己免疫が働いてしまう免疫介在性が最も多く、他に先天性、感染性(ジステンパーウイルスなど)、外傷性、薬剤性(アトロピン、サルファ剤など)、内分泌性、瞬膜腺切除後によるものなどがあります。好発犬種はシーズー、キャバリア、コッカースパニエル、シュナウザーなどですが、どの犬種でも発生はみられます。
 診断は涙液のうち油層と水分層の評価ができるシルマーティアテストや、ムチン層の評価ができるローズベンガルテストなど、涙液の定量試験により行います。また角膜の傷があるかどうかをフルオレセイン染色でチェックすることも重要です。
 治療としては涙腺に対する免疫反応を軽減させるため、シクロスポリン眼軟膏やタクロリムスなどの免疫抑制剤を使用します。また感染も併発しているため抗生物質や、涙液補充のための人工涙液の点眼なども併用します。ピロカルピンなどのコリン作動薬は涙腺刺激の作用も持ち、経口投与します。一般的ではありませんが、耳下腺管転移術という手術法もあります。
 眼に傷がついてからドライアイを疑う症例が多いのですが、ドライアイではその傷が治りにくく大変苦労します。眼ヤニが多い、眼が赤いなど、気になることがございましたご相談ください。
S.T