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最近のエントリー

犬の股関節脱臼

15年01月25日

股関節脱臼は、大腿骨頭が寛骨臼から変位した状態をいいます。
大型犬の場合は股関節形成不全という股関節の発育異常が多いです。遺伝的要因が第一に考えられ、体重の増加と、関節を支える支持軟部組織の発育不均衡が生じ脱臼しやすくなります。また、繰り返す軽度の外傷により滑膜炎が起きた場合にもその修復過程で関節が不安定になります。
関節の緩みが生じ、関節軟骨に異常な負荷がかかってくると成犬になって変形性関節症を起こし痛みが生じます。
治療には内科療法と外科療法があります。内科療法では脱臼直後は絶対安静が必須です。関節の可動域を維持し、疼痛を減らすために補助的なリハビリテーションが有効です。痛みがひどい場合には抗炎症剤を使用します。外科療法は保存療法に反応しない老犬、高い運動能力が必要とされます。若齢犬、もしくは変形性関節症の進行を遅らせ長期的に機能を保持するために適用されます。

股関節形成不全のない犬でも股関節脱臼は起こります。最も多いのは外傷によるものですが、自然発症することもあります。大腿骨頭の靭帯の損傷が原因となります。股関節周囲の軟部組織に対する持続的な影響と、関節軟骨の変性を防ぐためにできるだけ早期に脱臼を整復する必要があります。整復が不可能な場合やすぐにまた脱臼してしまう場合には外科手術が適用になります。
関節の安定化には関節包の縫合やトルグ・ピン法、人工関節がありますが、これで整復の維持ができない場合大腿骨頭切除などが選択されます。
M.M.

猫の甲状腺の両側摘出

15年01月19日

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今回の手術は猫の甲状腺の両側摘出です。猫の甲状腺機能亢進症は日本では、大きくなった甲状腺を摘出することが理想的な治療となります。内科治療とことなり継続的な治療は必要ではなく、両側摘出した猫の98%以上は甲状腺ホルモンを与える必要がなく手間もいらず経済的にもストレスからも解放されます。ただ、甲状腺摘出の際に上皮小体にダメージを与えずに残すことが難しく、ほとんどの動物病院において手術を行わない原因になっているようです。アメリカでは放射性ヨード療法という特殊治療があります。日本の法律では現段階ではおこなうことはできません。
今回は以前に片側を摘出していた猫が再発したために反対側を取る手術でした。両側摘出ですが問題なく生活しております。頭側に上皮小体が認められます。

S.S

細菌性心内膜炎

15年01月18日

 心臓にも感染症は起こり、心内膜組織に発生し特に犬猫では僧帽弁と大動脈弁に多く見られます。ぶどう球菌や連鎖球菌などが多く近年ではバルトネラも報告されており、大腸菌はそれほど多くないと言われています。猫では稀で、犬でも多くはないですがジャーマンシェパードとボクサーはリスクが高いです。細菌の侵入経路はハッキリしないことが多いですが、前立腺炎、腎盂腎炎など他の臓器の感染に起因したり、歯周病が原因となり口腔内細菌が侵入して成立することもあります。また心臓の先天的奇形や、弁膜疾患との関連も指摘されています。
 心臓の弁に疣贅が形成され、弁の変形や破壊を引き起こしやがて弁は機能しなくなります。それによりうっ血性心不全が急速に進行することもあります。罹患すると元気食欲の低下、再発性の発熱(不明熱の原因となる)、失神などがみられます。心雑音がほとんどの患者で聴取され、新たに発見された場合はこの病気を考えます。また獣医領域では拡張期の心雑音は稀ですが、聴取された場合は大動脈弁の心内膜炎も疑われます。
  心エコーでの疣贅形成、症状、治療への反応などから診断されます。 血液培養では患者の60_80%で細菌が検出されるとのことですが、確定診断を行うのは困難と言われています。 併発症として腎臓(梗塞、膿瘍、糸球体腎炎)に障害を及ぼしたり、血栓症のリスクも高いです。
治療は抗生物質の投与を長期間(6週間以上)続け、心不全や不整脈への対処、血栓症やDICが疑われる場合には抗血栓療法などを行います。
 前述しましたが近年では歯周病からの続発症としてこの病気も注目されています。日頃からのデンタルケアはこの病気の予防にもなります。デンタルケアも含めまして気になることがあればご質問ください。
T.S.

肝膿瘍

15年01月04日

肝膿瘍は肝臓実質に見られる膿の貯留のことで、血行性の感染、外傷、周囲のすい臓や胆管の炎症に起因する場合や、腫瘍に伴って発生します。食欲不振、嘔吐、発熱などの症状が見られ、発見には超音波検査が有用で、肝臓内に低エコーまたは無エコーの腫瘤がみられます。見つかった場合は腫瘍や結節性過形成との鑑別が必要で、細胞診によって可能です。肝膿瘍は破裂すると重篤な腹膜炎を起こし、生命にかかわることもあります。また外科的切除や長期間の抗生剤によって治療が可能です。一方で腫瘍であった場合、破裂すると癌性腹膜炎を起こし、一般に予後が良くありません。症状が伴った肝臓の腫瘤が見つかったら、精査をおすすめします。
K.Y.