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最近のエントリー

CT検査で分かること・できること

23年04月30日

 当院ではGEヘルスケアジャパン製の16列コンピューター断層撮影装置、いわゆるCT検査装置により日常的にCT検査を実施しております。一般的な画像検査であるレントゲン検査や超音波検査では分からない詳細な病変の検出が可能なため、現代獣医学においてはもはや必須といえるかもしれません。最近では動物病院でもCT検査装置を導入している施設が増え、身近な検査法となりました。当院では他院からの紹介の患者さんも多く来ていただいております。

 CT検査では体の周囲を装置が回転することで、断層像、つまり体の輪切り画像を得ることができます。これにより組織同士の重なり合いをなくし、腫瘍がどこの臓器から発生しているかなどを知ることができます。また細かい病変の検出も可能で、レントゲン検査では分からない微小な転移性病変を見つけることもできます。特に力を発揮するのは頭頚部腫瘍です。頭頚部とは、鼻腔、口腔、耳道、咽喉頭や頸部など、他の画像診断では観察が難しく、また構造が複雑なために詳細な解剖学的評価が難しい部位においてもCT検査はとても有用な検査になります。しかし脳腫瘍においては、頭蓋骨という骨に囲まれた領域であることからX線を使用したCT検査の有用性は限定的になってしまい、MRI検査のほうが優れています。

 手術の前の術前評価としてもCT検査を使用します。腫瘍がその周辺の臓器や血管にどのくらい接しているか、癒着していないのか、また原発部位以外に転移をしているのならば、そもそも手術適用になるのか?など手術をする意思決定をするためにCT検査を行うこともよくあります。

 CT検査は血管造影剤を併用することによってさらに情報を追加することが可能です。造影剤は主に腫瘍性疾患で使用しますが、各臓器や腫瘍によって造影剤の入り方や、その消失の仕方に特徴があります。造影剤を入れてからCTを撮影するタイミングを時間によって決定することで、どの時相で造影剤がこうなったから、これはこの腫瘍だろうというアタリをつけます。

 検査の特性上どうしても全身麻酔が必要になってしまうのが欠点かもしれません。しかしCT検査を実施する際に使用する麻酔薬の量は少量で、しかも検査自体も短時間で済むため、動物さんにそれほど負担にはならないと考えております。実施する前には十分に麻酔前検査を行い安全を考慮した上で実施させていただければ、とても有用な検査であると思います。

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T.S.

犬の新生子期の行動学

23年04月13日

今回は、新生子期の成長過程に関するコラムです。

新生子はどの子も母親に強く依存しており、その後の感受性に影響が出ます。

生まれたばかりの赤ちゃんの眼はまだ閉じており(犬で16日齢、猫で17日齢に開眼)、視覚も聴覚も未発達であり、音への反応はかなり鈍いです。唯一、嗅覚を頼りに母親さらに乳頭を見つけ出し、接近することで母乳を飲み始めます(吸乳反射)。新生子期の授乳は2−3時間毎であり、その後は1日5−10回程度になります。産後26日頃が最高泌乳量となり、犬では毎回違う乳頭に吸い付くことで大きく活発な個体はよく乳が出る乳頭を独占する傾向があるが、猫では生後2−3日齢で専用の乳頭を決定するそうです。

視覚としては16週齢で発達完了し、聴覚は平均4週間ほどで発達完了となります。それらの感覚による様々な刺激が脳の大脳皮質への刺激となり、感覚、感情や運動能への成長を促していきます。そのため、生まれて間もない頃の母親からの刺激は新生子において重要であると言えます。

出産後はなるべく母子は離さず近くにいる環境づくりが大切です。

H.F

唾液の分泌過多と神経症状

23年04月05日

唾液の分泌過多(流涎)は、主に口腔内疾患(腫瘍、歯周病、潰瘍など)、咽頭喉頭疾患、食道疾患(運動機能低下、閉塞性、食道炎など)、唾液腺疾患(唾液腺壊死、唾液腺嚢胞、唾液瘤、唾石)、神経疾患(ナルコレプシー、カタプレキシー、頭蓋内疾患、てんかん発作、重症筋無力症)など様々な要因から発症します。動物たちは喋ることができないため、これらの疾患を除外して調べていく必要があります。多くの場合は口腔内や唾液腺の問題であることが多いですが、今回は、この症状と神経系の関連をお話しします。

 フェノバルビタール反応性唾液腺症という疾患名をご存じでしょうか?当疾患は、人と犬で報告されていて、今のところ病態が明らかになっていない疾患です。症状は、食欲不振、流涎、悪心、吐出、嘔吐、ゲップ、必発ではないが両側性の唾液腺腫脹が認められることもあり、一般的な制吐剤や抗菌薬、胃粘膜保護薬にも反応しないが、抗てんかん薬であるフェノバルビタールを投与することで症状が改善することが判明しています。このことと、過去の報告では、一部の症例において、脳波でてんかん発作様波形が見られたことから、唾液の分泌の調節を担っている箇所の一部である"大脳辺縁系"における「焦点性てんかん発作」の型の一部あるいはそれに関連があると言われています。また、末梢自律神経性機能不全も疑われています。このように本疾患はフェノバルビタールの投与によって症状が改善するというシンプルなものであるが、「脳神経」というものの複雑性により病態が明らかに解明されていない疾患であります。まずは気持ち悪い、吐き気、口が痛いなどの症状を引き起こす原因疾患を除外した上で、内服の投与を検討すべきだと思われます。

R I

短頭種気道症候群の手術は暑くなる前がお勧めです。

23年04月02日

今年に入ってから短頭種気道症候群の手術がとても増えています。興奮すると失神する、暑くないのに熱射病という危険な状態での手術もありました。ブルドック、パグ、フレンチブルドックのような犬種は気道の通りが悪いため年齢が進むにつれて問題を起し易くなります。熱射病をおこしたり気管の狭窄をまねいたり、運動不耐性、失神、ゆくゆくは寿命に強く関わる病気です。鼻がペッチャンコのほうがかわいいということで品種改良をされているのですが、そのせいで外鼻腔狭窄、軟口蓋過長、喉頭小嚢の外反、気管低形成、喉頭虚脱、扁桃肥大が起こりやすくなっています。いびきをかく、おならをよくする、呼吸音がうるさい、呼吸困難などの症状がある場合は要注意です。年齢が高くなると手術をしても回復できないばあいもあり、時期的には若い時期が好ましく、4歳までにおこなうことが強く勧められています。短頭種を飼ってられる方はよく観察していただき該当するようなことがあれば手術も検討していただくことをお勧めいたします。

S.S  上写真:ファームプレス犬の診療のためのインフオームドコンセントアトラスより引用、下写真:左側が術前の鼻孔右側が術後の鼻孔

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