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最近のエントリー

7月31日 葉月会内科学セミナー

18年07月31日

石田卓夫先生の、猫の内分泌に関するセミナーに参加しました。

今回は、猫の副腎皮質機能低下症について詳しく教えていただきました。

副腎皮質機能低下症とは、副腎というホルモンを分泌する臓器の機能が低下し、体の中のホルモンのバランスが崩れることによってさまざまな症状が現れる疾患です。

発生頻度はまれで、年齢に関係なく報告されています。

症状は、元気消失、体重減少、食欲不振、嘔吐、低体温、脱水といった、他の疾患との鑑別が難しいものや、血流量減少性ショックや虚脱といった急性の症状も見られます。

多飲多尿や、尿比重の低下といった症状は、腎不全と共通しているため、鑑別がとても大切になります。

急性の場合は、輸液を中心とした治療法になりますが、内服によって長期的に治療する方法が一般的です。

治療した場合、予後が良好であることが多いようです。

他にも、猫では稀な内分泌疾患について、いくつか紹介していただきました。

発生頻度が多くない疾患についての知識を蓄積していくことで、診察に役立てたいと感じました。

S.K

虫刺され

18年07月29日

季節は夏真っ盛りです。レジャー等で外に出かけられる方は多いでしょう。

外にいる際、嫌でも遭遇してしまう生き物の代表として「蚊」や「蜂」が挙げられると思います。

蚊に刺されるとご存知の通りフィラリア症が有名です。なので今回はその他の生き物による虫刺されについて説明します。

小動物で反応を起こす虫刺されは膜翅目(蜂や蟻)によって起こります。これらの昆虫毒はヒスタミンやボリアミンといったアレルギー性または中毒性反応を引き起こします。アレルギー性反応にもいろんなタイプがありますが、虫刺されによるものはⅠ型(即時型)アレルギーと言われています。また、中毒性反応とは毒中の酵素(ヒアルロニダーゼetc.)や血管作用物質による直性細胞毒性作用がメインとなってきます。

虫刺されの場面に遭遇された場合は、まず針が刺さったまま残っていれば除去しイソジンで患部を消毒、もし腫れが重度であればステロイドを投与しする等の処置が必要となってきますので、すぐに近くの動物病院まで駆けましょう。

H.F

予防的胃腹壁固定術

18年07月26日

胃捻転胃拡張症候群は、胸の深い大型犬種にとくに起きやすい致命的になることが多い病気です。胃拡張がおき、悪化すると胃がねじれ血液循環不全、ショック症状、脾臓の捻転壊死、胃の壊死を起こします。非常に重篤で死亡率が高いことより、予防的に胃腹壁固定術を行うことを胃捻転多発犬種では推奨されています。グレートデン、グレートピレニーズ、セントバーナード、ジャーマンシェパード、ドーベルマンなどは代表的な犬種になります。去勢、避妊手術の際に胃腹壁固定術を行うことが多くなってきました。現在は腹腔鏡を用いた手術により小さな傷で開腹手術と同等の固定力を得られるようになり負担の少ない手術を受けていただくことが可能です。

S.S

IMG_6875.JPG

ハムスターの子宮蓄膿症

18年07月22日

 一般的に繁殖を望まないイヌやネコでは、高齢期に発生が予測される疾患の予防や発情に伴うストレスの軽減のために、健康な個体に対して精巣摘出術や卵巣子宮摘出術を行うことを推奨しております。しかし、ハムスターの場合は現実的に、手術によって得られるメリットよりも手術や麻酔に伴うリスクの方が勝っていると判断する獣医師の方が多いでしょう。

当院でも特にハムスターのメスの子宮蓄膿症は一般診療で出会う機会のある疾患です。 国内ではハムスターの生殖器疾患としては、メスの疾病のほうが多く報告されています。いつ急激な状態の悪化が生じても不思議ではない疾患ですので、まず異常に気づくことが大切です。

 まず、性成熟後のメスは4日ごとに発情周期を繰り返しますが、イヌのように発情出血はないため、出血が認められた場合は何らかの生殖器疾患の存在を疑うべきです。外陰部からの出血は他に泌尿器系の疾患から生じることもありますが、通常排尿痛やしぶりといった症状が伴います。

 ただ、発情周期に伴い数日ごとに膿とよく似た正常の膣分泌物が陰部から認められることはあるため、迷うようなときは膿であるのか(好中球があるのか)を顕微鏡下で鑑別することが必要です。

 他には食欲不振や痒みのない脱毛といった一見して生殖器の異常とは関係ない症状がまずみられる場合もあります。

M.K

単角子宮

18年07月08日

犬の子宮は両分子宮ともいわれ、子宮体から左右の子宮角に分かれるY字型のような臓器です。しかし先天的にその片側の子宮角と卵管をもたないワンちゃんもおり、単角子宮といいます。発現率は0.1~0.15%と言われています。この形態異常は実は残りの子宮角が正常であれば一度の産子数は少なくなるものの妊娠が可能です。

つい先日、出産経験のあるワンちゃんの人工授精時に偶発的に見つかりました。今までも普通に妊娠、出産してきた子だったので予期しておらずとても驚きました。うまいこと受胎してくれることを願っています。K.Y

ラフォラ症

18年07月01日

ラフォラ症は発作を起こす病気の1つとしてあげられる疾患です。この病気は遺伝性の疾患で、犬だと特にミニチュア・ワイアーヘアード・ダックスフントが好発犬種として知られています。常染色体劣性遺伝様式を取り、異常なポリグリコサンと呼ばれる物質が徐々に神経細胞内にたまっていくことによって起こる神経進行性疾患で、平均発症年齢は7歳と遅発性に発症します。光や音など外部の刺激によって、突発的なあごの振戦、しりもち、後退などの驚愕反応に類似した瞬間的な全身の突発性筋収縮(ミオクロニー発作)が認められます。発作以外の神経反応に異常は見られませんが、経過と主に頻度が増えていき、最終的には痴呆、運動失調、強直間代性発作が認められるようになっていきます。

診断にはMRI等が用いられますが、基本的にはほかの疾患を除外した上で遺伝子の変異の解析をすることによって確定診断とします。

治療は発作を抑えてあげることにより症状の緩和を目指しますが、完全に抑制することは難しく、また徐々に進行していくことを止めることはできません。ただし、ラフォラ症の進行自体が緩慢であり、長期間の生存例も多数報告されています。

S.A