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最近のエントリー

猫のフィラリア症

11年03月29日

犬糸状虫症(フィラリア症)は、代表的な犬の疾患として一般的に知られており、その予防も進んでいますが、「犬」糸状虫という名称にもかかわらず、猫にも感染することが分かっています。しかしながら、一般にはあまり知られておらず、またその予防も進んでいません。
猫のフィラリア症は、犬と同様に蚊が媒介しますが、その病態は異なります。通常、犬のフィラリア症は、犬糸状虫の幼虫が犬の体内で発育して成虫となり、その成虫が肺動脈に寄生することによって様々な症状を引き起こしますが、猫のフィラリア症では犬糸状虫が成虫まで発育することは少なく、実際に症状を引き起こすのは肺動脈に到達して死滅した未成熟虫体であると考えられています。死滅虫体が肺血管および間質に急性炎症を引き起こすことによって、発咳、呼吸困難、嘔吐などが認められますが、無症状の事もあります。また、一部の犬糸状虫は成虫まで発育し、慢性呼吸器疾患を惹起します。
診断には胸部X線検査、心エコー検査、抗体検査、抗原検査などが行われますが、これらの検査も幼虫から成虫まで様々な発育段階にある犬糸状虫を確実に検出できるわけではありません。複数の検査を繰り返し行ったりしてその結果を慎重に解釈する必要があります。
また、たとえ診断が確実に行えたとしても、治療は症状を緩和するに留まり、根治することは困難です。よって、犬と同様に予防することが非常に重要となります。予防はセラメクチン製剤の滴下剤を使用する事によって確実に行う事が可能です。前述の通り、猫のフィラリア症は症状が曖昧で、診断も困難であることからあまり重要視されず、予防もあまり進んでいませんが、犬のフィラリア症が認められる地域では猫での寄生も確実に存在すると考えられるので、積極的な予防をお勧め致します。

フェレットのインスリノーマ

11年03月22日

インスリノーマは膵臓のβ細胞腫ともよばれて、β細胞の過形成から腫瘍にいたる変化です。異常なβ細胞から過剰にインスリンが分泌され、低血糖を生じます。
臨床的な症状としては、元気消失、慢性的な衰弱、食欲不振、体重減少、異常な行動や動作が認められます。慢性的あるいは重度な低血糖は脳障害を引き起こします。
慢性的な低血糖や繰り返し低血糖を起こしている場合、明らかな症状を呈さないものも多いです。治療としては、大きく内科治療と外科治療があります。
内科治療の目的は、低血糖による症状の改善です。つまり、血糖値を正常化することではなく、低血糖症状の緩和です。食後の急激な高血糖によってインスリン分泌が刺激されるのを予防するために、グルコース吸収が徐々に行われるようなフードを給餌することが望ましいです。Hillsの猫のl/dが効果的であるといわれています。
食餌のみでコントロール不可能な場合、第一に選択されるのがグルココルチコイド療法です。グルココルチコイドは末梢組織におけるブドウ糖の取り込みを阻害するとともに、細胞レベルでインスリン作用に拮抗し、肝臓での糖新生に繋がります。
そのほか、グルココルチコイド療法でもよい反応が得られない場合や、副作用が認められた場合、ジアゾキシドというサイアザイド系利尿剤の使用が必要になる場合もあります。
外科治療の目的としては確定診断および病巣の減量です。確認不可能な腫瘤が存在していることも多く、根治治療とならない場合もあります。しかし、外科療法を行うことによって、内科治療の成功率を高め、生存率を延ばすことが期待できます。
インスリノーマは、根治は困難ですが、上手くコントロールできると、予後は悪くない病気です。フェレットには多く認められる疾患ですので、疑わしい症状が出た場合はご相談ください。

肺高血圧症

11年03月15日

肺高血圧症(PH)は、心臓から肺にいく動脈が、収縮期で30mmHg、平均の肺動脈血圧が20mmHg以上になることです。肺動脈の血圧が高くなる原因として一般的な病気は犬フィラリア症ですが、ほかにも僧房弁閉鎖不全症や猫の心筋症、先天性心疾患、肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症などといった原因で起こりうる疾患です。肺高血圧症症状は、ほとんどの症例で、発咳、呼吸困難、運動不耐性、嗜眠傾向、腹水や肝腫大による腹部膨満、失神、チアノーゼ、喀血などを呈します。重度になると、後肢の浮腫を生じる場合があります。検査では、原因や症例によっては右心房と右心室の間の三尖弁からの雑音が聴診されたり、肝酵素の上昇、チアノーゼ、赤血球増加症が認められたりします。レントゲンでは、一般的には右心室の拡大、肺実質の浸潤所見や、肺動脈の拡張が認められます。重度の肺高血圧症は、心電図でも異常が見つかりますが,心エコーが、肺高血圧症を診断する最も有効な方法です。一般的には右心房や右心室の拡大等の評価をします。
 治療法は、原因によって内服の種類は変わりますが、他に、強心作用のある薬や血管拡張薬を使用します。

線維軟骨塞栓症

11年03月01日

線維軟骨塞栓症は線維軟骨と呼ばれる物質が脊髄の血管に詰まってしまうため、脊髄の虚血性壊死を引き起こす病気です。その為、症状は急性に現れることが多く、痛みのない片側の不全麻痺を特徴とします。ミニチュア・シュナウザー、コッカ-スパニエル、シェットランドシープドッグなどでの発生が多いようです。
診断にはMRI撮影が必要となりますが、確定診断には病理組織学的検査にて脊髄血管内の線維軟骨の証明が必要になります。一般臨床では犬種や症状、MRI所見から線維軟骨塞栓症を診断します。
治療は内科的に行います。発症の初期にはコハク酸メチルプレドニゾロンの投与が推奨されています。また、他の脊髄疾患と同様に理学療法が重要となります。回復は脊髄障害の範囲によって異なりますが、一般的に2週間以内に機能的な回復を示す動物の予後は良好とされています。