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冬のマダニ対策していますか?

18年11月25日

マダニは比較的大型のダニで、成長や産卵のために動物の血液を利用する節足動物です。一般的に越冬した大人のダニは春先から初夏にかけて吸血動物に寄生し、その雌ダニが産卵します。このため卵からふ化した子供のダニが秋に大発生します。この子供のダニが吸血・脱皮後に若ダニの状態で越冬し、春先になって活動を開始するというパターンをとります。つまりマダニは季節関係なく繁殖し成長しているので春先から初夏にかけてだけでなく秋から冬にかけても注意が必要です。

春先から初夏にかけては大人のダニと若いダニが、秋には子供のダニの活動が活発になります。マダニが繁殖しやすい温度は13℃以上と言われていますが、1年中活動しているマダニがいたり、最近では冬も暖かいため、冬でも対策は必要になってきます。

犬や猫の場合は複数の製薬会社からいろいろなタイプのマダニ予防薬が販売されており動物の体質や目的に合わせて選択する必要があります。皮膚に滴下するスポットタイプの薬剤は、投与が簡単であることと、刺咬自体を予防できる場合もあることなどの利点があり、経口タイプの薬剤は安定した薬効、皮膚炎兆候のある動物にも適応可能といった利点がある。どちらの薬剤も用量と投与期間を守ることが非常に重要です。投与期間が開いてしまうと、薬効が低下し、十分なマダニの防除ができなくなります。予防薬の使用は一年を通して行うことが望ましいですが、最低でも、ノミダニの活動が活発になる3月から真冬前の12月は予防の必須時期になってきます。

ただ、薬剤だけでマダニの刺咬を100%防ぐことは不可能です。マダニに対する薬剤の効果はノミと比べて効果の持続が低いため、マダニの活動が活発な時期は、追加的な投与、あるいは市販されている犬用の虫よけスプレーなどの併用が有効です。また、マダニの多い茂みにはできるだけ立ち入らないことや、茂みに入ってしまった場合はブラッシングを行うことが有効です。特に吸血前のマダニにはブラッシングが有効で、ブラッシングをすることで体毛についている幼ダニにも気づくことができます。

マダニに刺されたと気づいた場合、刺されたと思われる当日であれば先の細いピンセットなどで、できるだけ皮膚に近い部分をはさみ垂直に引き上げることで除去可能ですが、無理やり引き抜いてしまうと口器の一部が皮膚に残されてしまう場合も多く、そうなってしまうと皮膚切開が必要になってきます。マダニに刺されたと気づいた場合は慌てず本院にご相談ください。

マダニは公園や河川敷にもいて、ほぼ1年中活動していることを忘れてはいけません。茂みにむやみに立ち入らせず、マダニ予防薬だけでなく、犬用の虫よけスプレーを併用し、ブラッシングをこまめに行い, マダニがついていないかチェックすることが重要です。

Y.N.

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PDA(動脈管開存症)の手術

18年11月23日

胎生期には、酸素や栄養豊富な血液を胎盤から全身に供給するため、肺動脈及び大動脈は動脈管でつながっています。動脈管は生後数時間以内に閉鎖するのが本来ですが、この血管が閉鎖せずに残ったものをPDAと言います。すごく独特な連続性雑音のため聴診でも発見されることが多い特徴です。今回の症例の子は雑種6ヶ月齢でした。先日から飼い始めたとのこと。マルチーズ、プードルに多いと言われていますが、見た目はそんな感じかな。手術しないとほとんどの子が1年以内になくなってしまいます。手術に頑張って耐えてくれました。今日は抜糸です。とっても元気で順調な経過です。よいお家に飼ってもらってよかったね。元気で長生きしてね。S.S

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愛犬のお耳が気になったら...

18年11月18日

「耳を掻きすぎて出血している」「耳から嫌なにおいがする」

こういった主訴でご来院される方が多くいらっしゃいます。

外耳炎は獣医師が最も多く遭遇する犬の疾患だと言われています。外耳炎の子の耳の中を検査させていただくと、多くの症例ではカビや細菌が増殖していますが、そもそもの原因は別に存在することがほとんどです。

最も多く見られるのがアレルギーなどの体質によるものですが、ダニの寄生や、草・木の枝といった異物の侵入、内分泌疾患、免疫疾患、腫瘍・・・。

人間も同様ですが、本来、耳には「自浄作用」と呼ばれるものが備わっていて、耳垢(じこう)は自然に耳から排出されます。しかし、身体に何らかの異常が存在し、自浄作用がうまく働かない場合、耳垢が溜まり、外耳炎を引き起こすことがあります。

外耳炎は、放置すると中耳炎や内耳炎を併発してしまったり、痒みがひどい場合に繰り返し耳を掻いたり頭を振ったりすることで、耳介が内出血を起こす耳血腫(じけっしゅ)になってしまったりします。中耳炎になってしまうと、場合によっては外科手術が必要です。

大多数のわんちゃんは耳を触られるのを嫌がるため、耳の疾患は発見が遅れがちです。小さい頃から耳の中を定期的にチェックさせてもらえるよう訓練しておくことが重要です。

愛犬のお耳が気になったら、お気軽にご相談くださいね。S.K

カプノサイトファーガ感染症

18年11月11日

 先日犬から舐められただけでうつるとテレビで放送され、注目されているカプノサイトファーガ・カニモルサス感染症というものがあります。犬猫からうつるとか、最近この手のニュースが多い気がしますが、適切な触れ合いで発症するケースはごくまれです。

 以前から報告されており、特別新しく発見されたわけではなくカプノサイトファーガは犬猫の口腔内に常在している細菌です。また種は違いますが人の口腔内にも歯周病菌として存在しているようです。噛んだり引っ掻いたりすることで、この細菌が人に入ることで感染するようですが、発症すること自体が珍しいようです。発症するリスクの高いケースは、糖尿病、がん患者、自己免疫疾患などの基礎疾患を有していて免疫力が低下していることと言われています。重症化すると敗血症や髄膜炎、DICなどを呈しますがこれはこの感染症に特徴というわけでなくどの感染症でも重症化するとだいたいこうなりますし、何回も言うようですが重症化は極めてまれです。

 感染・発症する可能性は低いですが、動物と暮らすということはカプノサイトファーガだけでなく様々な感染症の恐れがあるのは事実でしょう。しかし適度な距離やコミュニケーションを保ち、きちんとした衛生管理(口移しはしない、手洗いを徹底する)を実施することでそれらは心配ないはずです。かわいいワンちゃん、猫ちゃんと気持ちよく暮らしていくために正しい知識を持っておきたいですね。

T.S.

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視覚障害の診断の難しさ

18年11月04日

外観異常を示す眼科疾患(眼が白いetc.)は、異常を指摘して飼い主に詳しく説明することができるため、診断評価を客観的に示すことができる。

しかし、これに対して視覚障害を示す疾患では、綿球落下試験や障害物試験等の視覚機能検査の結果を飼い主が認めた視覚異常に関連づけて診断することは難しい。

理由として

  1. 来院理由となった視覚異常の状況把握が飼い主の説明によって左右される

  1. 検査時における動物の状態によって再現性が不安定になる

  1. 眼に外観的異常(腫瘤や混濁etc.がある際、実施できない検査項目がある

などが挙げられます。

一般的に失明した犬、猫は無表情になると言われており、これらの動物は眼を使って物に対して集中し認識する「固視(アイコンタクト)」があります。

つまり、犬猫における視覚障害は飼い主に向けた仕草や行動に異常を示すことが多くなる。

このような観点から、飼い主ができる犬猫の視覚評価は

  1. ものに注目するときに示す姿勢や仕草

  1. 飼い主へ向けた表情

  1. 固視点の存在

を調べることで把握することができます。ぜひ注意して見て下さい

H.F

左:飼い主へ向けた表情   右:無表情(両側性網膜剥離)