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最近のエントリー

ファンコーニ症候群

15年09月27日

 ファンコーニ症候群とは、何らかの原因によって腎臓の近位尿細管上皮細胞のエネルギー産生が低下することにより、糖やアミノ酸、リン酸、その他のミネラルの再吸収や排泄が正常に行われなくなり、腎障害や体液不均衡による全身障害を引き起こす疾患です。
 原因としては、ヒトではネフローゼ症候群や中毒のような後天性要因、あるいはフルクトース不耐性やClチャネル異常のような遺伝性疾患が知られていますが、イヌでは、上皮小体機能低下症、腎盂腎炎などの基礎疾患に続発する例が知られています。またバセンジーは好発犬種であり、甲状腺、副腎皮質などの内分泌異常に伴う尿細管機能低下をもたらす何らかの遺伝性素因が推定されています。
 ヒトでの症状は、リン酸の再吸収低下による低リン性くる病が特徴ですが、イヌでは骨格の異常は必ずしも認められず、主な症状は多飲多尿で、進行すると食欲不振や元気消失などの全身症状が見られます。
診断は、血液検査(低K血症、高Cl血症などの電解質異常や代謝性アシドーシスなど)や尿検査(汎アミノ酸尿、腎性糖尿、蛋白尿など)により行います。その他、原疾患を特定するために甲状腺ホルモンや上皮小体ホルモン等の検査を検査を行います。
 治療は、アシドーシスの補正、リン酸、Kの補給、ビタミンDの投与などを行います。二次性の発症の場合は基礎疾患に対する治療を行います。

顔面神経麻痺

15年09月20日

顔面神経麻痺の臨床兆候とは眼瞼を閉じられない、口唇や耳を動かすことができないことです。顔面神経麻痺の原因として多いのは炎症、感染、腫瘍から二次的に生じた中耳内の顔面神経分枝の損傷です。中耳炎や内耳炎は通常細菌性外耳炎が波及して起こるため、コッカ―・スパニエルやジャーマン・シェパードなど外耳炎の好発犬種では注意が必要です。外傷や草木などの異物、悪性腫瘍、中耳領域の鼻咽頭ポリープも顔面神経麻痺を起す原因となります。犬の甲状腺機能低下症ではときおり顔面神経麻痺が認められます。しかし、犬の75%、猫の25%は原因不明で、顔面神経麻痺以外に特別な異常はありません。

中耳疾患による顔面神経麻痺の場合は、中耳と内耳領域内で神経が近接しているので末梢性の前庭系障害やホルネル症候群も併発することが多いです。また、顔面神経麻痺では顔面神経刺激による涙腺の分泌不足により乾性角結膜炎を発症する可能性もあります。

特発性の顔面神経麻痺はその他のすべての原因を除去して初めて診断されます。血液検査での全身的な検査、脳神経障害や運動失調がないかどうか、甲状腺機能低下症の有無などを評価する必要があります。

特発性顔面神経麻痺に対する特効薬はありません。麻痺は永続することもあれば26週間で自然に回復することもあります。鍼による刺激や顔面の筋肉のマッサージが効果があるとも言われています。

先日、3か月齢の子犬さんが突然瞬きできなくなって来院されました。特発性の顔面神経麻痺と診断し、ビタミン剤の内服と週2回のオゾン療法(注腸法)に通ってもらい、治療を始めて1か月になりますが、今ではかなりしっかり瞬きできるようになっています。

M.M.

口蓋裂

15年09月13日

 口蓋裂とは硬口蓋と軟口蓋の不完全な閉鎖であり、多くは先天的なものです。

 猫よりは犬に多く、ブルドック、ペキニーズ、ボストンテリアなどの短頭種に多いです。十分な哺乳ができないとすぐに死んでしまいますが、そうでなくても食物や唾液などで汚染したり誤嚥したりします。そのため鼻汁、発咳、成長不良、鼻炎や誤嚥性肺炎などを引き起こします。

 手術に耐えられるまでは誤嚥などに注意します。手術はタイミングが早いと再裂開や骨の変形が起こるために、できるだけ56カ月齢までは待ちます。猫ではランゲンベック法、犬ではサンドイッチ法が優れているようです。サンドイッチ法とは一側に粘膜骨膜弁を作成し、反対側の硬口蓋と粘膜骨膜のあいだに挿入してマットレス縫合するものです。しかし大きな欠損孔では複数回の手術が必要になることもあるために注意が必要です。

 術後は軟らかい食事を与え、硬いもので遊ばせないようにします。最も多い術後の合併症は手術部の裂開ですが、修復できた動物は予後良好です。またこの疾患は遺伝性疾患なので、罹患動物は繁殖させないようにしなければなりません。

T.S.

ブドウを食べると犬や猫は死亡する?

15年09月10日

ブドウのおいしい季節となってきました。

ただ、犬にとっては危険な季節がやってきたことになります。

玉ねぎ、ねぎはだめだと知っていてもブドウが危ないとご存じない人がおられるようですね。

干しブドウを食べるのも同様に危険です。ぶどうのなにが中毒作用をおこさせるのかは詳しくはわかっていません。

しかし、ブドウを大量に食べることにより腎機能不全をひきおこして死亡している犬や猫が多数報告されています。

おいしいからうちの子にもたべさせようと考えないでくださいね。

ついでに危険な食べ物を下に記しておきます。

アルコール:昏睡、急性中毒     アボガド:含有成分ペルシン」による嘔吐下痢 

調理した骨:胃腸の穿孔、破裂    クルミ、マカデミアンナッツ:神経、筋肉の損傷  

タマネギ、ニンニク:溶血による貧血 乳製品の食べ過ぎ:下痢、嘔吐

油っぽい食べ物:膵炎        チョコレート:心臓、神経に有害

キシリトール:肝不全、低血糖    カフェイン:嘔吐、下痢、心臓、神経に有害

解熱鎮痛剤:腎不全、胃腸潰瘍、壊死

S.S