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最近のエントリー

シェパードの肛門周囲瘻

14年05月25日

肛門周囲瘻は、傾斜があり広い尾根部を持つシェパードやアイリッシュセッターに多く見られ、肛門周囲のびらん、潰瘍、瘻管形成により排便時の疼痛やしぶりが多くみられます。この原因については未だに解明されていませんが、埋没している肛門陰窩や肛門腺の感染により深部に向かって破裂することによって起きると考えられています。診断は身体検査および直腸検査によって行います。直腸検査では瘻管、肉芽腫、膿瘍が触知されることがあります。しかし直腸付近は動物が非常に痛がるため注意が必要です。
罹患した多くの犬は免疫抑制剤の投与により治癒します。免疫抑制剤は非常に高価で、体重が重くなるとそれだけ必要量も増加します。その場合、抗菌薬と併用することで免疫抑制剤の用量を減らしても効果が得られるという報告があります。また、低アレルゲン食で改善する場合もあります。内科療法に反応しない場合は外科手術が必要になりますが、手術は瘻管部分を完全に取り除き直腸を直接肛門に縫い合わせることになるので肛門が直腸に引っ張られて狭窄し便が出にくくなることがあります。肛門括約筋を切開した場合には術後に便失禁が見られることもあります。また、手術をしても再発することがあります。その場合には生涯にわたり最低用量の内科療法を継続や、繰り返しの外科手術が必要になります。
多くの動物は治療により改善をしましますが、予後は注意が必要な病気です。ですが、早期に発見して治療を行えば予後も良い事が多いので、日頃から動物の排便行動に異常がないかを注意して見てもらえればと思います。
                                                       M.M.

眼に異常が出る眼以外の病気

14年05月18日

 飼い主さんは犬猫の眼の異常に気づきやすく、眼がおかしい、見えてないなどの主訴で来院する患者さんは多くいます。もちろん眼の異常は存在するのですが、実はその異常が眼だけの問題でないことが多々あります。その代表的な病気を紹介します。
 糖尿病は人においても多くの合併症を引き起こすことで有名ですが、動物でも同じです。犬は糖尿病性白内障を呈し、75%が糖尿病を発症してから一年以内に白内障になると言われていますが、一夜にして水晶体が真っ白になってしまうこともあります。糖尿病では他にもぶどう膜炎、角膜治癒の遅延、網膜症なども引き起こします。
 高齢の猫は慢性の腎臓病になりやすく、その合併症として全身性高血圧があります。高血圧は網膜の出血、網膜剥離などの原因となり、その結果失明します。腎臓病以外にもクッシング症候群、甲状腺機能亢進症などでも高血圧からの失明を起こし、いずれの病気でも基礎疾患の治療が重要となります。
 ホルネル症候群は交感神経系の障害により、縮瞳、瞬膜突出、眼瞼下垂、眼球陥没という眼症状を呈する病気です。障害部位により一次、二次、三次性に分類され、また甲状腺機能低下症でも発症するため鑑別が重要です。
 以上のものはほんの一部です、眼に症状があっても常に他の部位の病気も考えなければなりません。
T.S.

毛包虫症

14年05月11日

毛包虫症は犬の皮膚に常在するニキビダニが過剰増殖した場合に発現する皮膚疾患の一つで、局所的に発症するものと全身に発症するものがあります。
局所性毛包虫症は内部寄生虫や栄養失調、免疫抑制剤の使用やストレスが起因し3~6ヶ月の子犬に多くみられます。顔に多く、皮膚の赤みや色素沈着、フケなどを伴った脱毛がみられますが、二次感染がなければ痒みはあまりありません。全身性毛包虫症は3~18ヶ月の若齢犬や副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、免疫抑制剤の使用、糖尿病などによって免疫力が低下している中年齢以上の犬でみられます。こちらは痒みを伴う前述のような脱毛が肢を筆頭に体のいずれの部分にも発症します。
いずれも免疫抑制剤や副腎皮質ホルモンの使用を停止するなどの免疫力を低下させている原因への対応、シャンプー療法やダニ駆除剤で1~2ヶ月かけて治療していきます。また表在性および深在性膿皮症を二次的に発症している場合、そちらの治療も必要となり、治療はさらに長くなってしまいます。さらに全身性のものは再発することが多く、根気よく治療し続けることが大切です。
K.Y