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褥瘡(床ずれ)の管理

11年09月27日

 褥瘡(床ずれ)は通常、高齢になり、寝たきりの状態が続くことで、身体に持続的な圧迫が加わることによって血行障害が起こると発生します。これに全身状態の悪化や不適切な管理などが加わることによって更なる悪化に繋ってしまいます。
 褥瘡は、①高齢、②中型犬以上、③寝たきり、④同じ姿勢、⑤筋肉や脂肪の低下、⑥重度の基礎疾患、⑦硬めの素材の上で寝ている、などが発生要因として挙げられます。さらに褥瘡を悪化させる要因としては、①便、尿、涎による汚染、②不適切な除圧、③不適切な体位変換、④栄養状態の悪化、⑤基礎疾患の悪化、などが挙げられます。このように褥瘡は様々な因子が絡み合って発生し、悪化します。よって、どれかひとつだけを改善しても治癒には結びつかない事が多いですが、「除圧」、「体位変換」、「局所での処置」が褥瘡を管理する上で特に重要となります。ここでは、ご家庭でできる除圧および体位変換について紹介したいと思います。
 除圧は、圧を「点」ではなく「面」で受けて全体に分散させることが基本となります。除圧の際によく見られる誤りは、クッション材などを直接患部に当てたり、ドーナッツクッションを使って無理に患部を浮かせたりする方法です。これらの方法ではクッションを当てるポイントに新たな褥瘡を作りだすだけでなく、褥瘡周囲の組織の血行を障害して、かえって褥瘡を悪化させる危険性があります。エアクッションや低反発マット、ビーズクッションなどを使って「面」を作り出すことで除圧を行っていくことが重要となります。一般に、大型犬では柔らかすぎるマットに寝かせると、体が沈み込み過ぎてしまい褥瘡が悪化し、小型犬では硬めのマットや高反発のクッションでは、一部分に圧力が集中しやすくなり悪化させる危険性があるため、体格や体重に合わせて素材を選ぶことも重要です。
 体位変換は、持続的な圧迫を避けるためには不可欠なものとなりますが、必要以上の体位変換は褥瘡のなかった側にも新たな褥瘡を作ってしまう危険性があります。特に動物の場合は自分の好みと異なる向きに寝かされると、寝返りを打とうともがいたりして、かえって頬などに褥瘡を作ってしまう危険性があります。よって、除圧や局所での処置が適切に行われていれば、体位変換は必要最低限で良いとされています。
 褥瘡は、その発生要因の複雑さから100%予防する事が困難な場合もあり、また、一度治癒しても再発することも少なくありません。ですが、ご家庭でできる除圧や体位変換によって、褥瘡を少しでも軽減し苦痛を和らげてあげることは可能です。褥瘡でお悩みの方は一度ご相談ください。

幹細胞療法(再生医療)

11年09月20日

再生医療とは、通常では再生しない組織とその機能を、自己の細胞を用いて再生をはかる比較的新しい治療法です。幹細胞療法では、幹細胞と呼ばれる様々な細胞に分化可能な細胞を用います。骨髄液中の骨髄幹細胞、脂肪組織内に存在する脂肪幹細胞が、多能性間葉系幹細胞として良く知られています。実際に、骨・筋肉・血管などに再生することが期待されています。
幹細胞療法は基本的に、患者自身から採取した細胞を増殖し、目的にあった細胞に分化・誘導した後、患者本人に再移植します。そのため、拒絶反応などの副作用が起きる可能性が低いというメリットがあります。
現時点において、骨髄幹細胞の方が臨床応用の数が多く、脊髄損傷などで成果を挙げています。しかし、脂肪幹細胞の方が、入手法が簡便であることから現在研究が進められています。
治療が期待されるもの
・骨癒合不全…幹細胞が血管に分化、骨折部位の骨膜形成に寄与。
・脊髄損傷…幹細胞が血管に分化して損傷部位の血流を回復。神経細胞に分化するとい説も。
・炎症性関節炎…炎症部位に幹細胞が集積し、血管形成、軟骨に分化。
・腎不全…糸球体における血管形成、血流の回復。
幹細胞療法は、まだ臨床データは多くないですが、今後、治療が不可能、困難であった疾患への応用が期待できる治療法です。疑問・不明な点があればご相談ください。

犬のレプトスピラ病

11年09月13日

レプトスピラ病は、スピロヘータ目レプトスピラ科に属するグラム陰性細菌であり、12遺伝種(または13種)と分類が確定していない4つの遺伝群に分類され、さらに免疫学的性状により250以上の血清型に分類されます。レプトスピラ属には非病原性のものも存在しています。また家畜伝染病予防法により届出に指定されている血清型は7血清型だけです。犬のレプトスピラ症は、血清型CanicolaおよびIcterohaemorrhagiaeによるものが多いとされていますが、その他の血清型による感染症もおこります。環境中のレプトスピラは、中性付近の淡水中や湿った土壌内で長時間生存出来きます。病原性レプトスピラは、人を含め、ほとんど全ての哺乳類動物に感染する事ができ、感染後多くの動物がレプトスピラを保有すると考えられています。病原性レプトスピラは、動物の腎臓に定着し、尿中に排泄されます。排出期間は動物種によってことなります。レプトスピラは、熱(50度で10分で死滅)や乾燥、酸(ph6.8以下)に弱いとされています。また、感染は、尿との直接的な接触の他に、汚染された水や土壌によって経口、または経皮感染が成立します。感染の初期は、血中にも存在しますので、血液も感染源になります。また髄液や組織も感染源になります。犬のレプトスピラの症状は、急性または、亜急性で、亜急性が多いとされています。血清型Canicolaの感染症による亜急性型は、腎炎症状を示します。急性型は、嘔吐、脱水、血便、尿毒症が認められ、発症後36時間から4日で死亡する事が頻繁にあります。血清型Icterohaemorrhagiaeは、亜急性型では、腎炎症状のほかに、黄疸や出血の頻度が高く、発症から数時間から2、3日で死亡しうる甚急性型もあります。一方不顕性感染も多いとされています。ヒトでは、急性熱性疾患であり、軽症から、黄疸、出血、腎障害を伴う重症型まで多彩な症状を示します。ヒトはレプトスピラの保菌者とはならず、ヒト同士での感染も稀です。
診断には、1病原体の分離、2血清診断法、3遺伝子の検出などがあります。
現在犬での予防はワクチン接種が上げられます。三田市周辺は、やはり野生動物からの感染の危険性が高い地域と考えられます。犬で問題になっている病原体の2もしくは3種類に対するワクチンがありますので、ぜひ当院にご相談下さい。

犬と猫の血圧測定

11年09月08日

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人間であれば健康診断のひとつとして血圧をはかることはあたりまえのことと考えられています。しかし犬と猫の無麻酔時の正常血圧を計測することの難しさなどからあまり計測されませんでした。犬や猫の血圧が近年になって注目を集めています。
20年くらい前よりダイナマップという商品が売り出され腎蔵疾患などにおける評価の重要性が言われるようになり、治療に役立つようになってきました。また麻酔時の血圧などの評価の重要性からいろいろの麻酔モニターに使われるようになりました。
特に5年くらい前にpetMAPといわれる商品が売り出され、無麻酔時でもより正確な値が測れるようになり高血圧の疾患が評価できるようになってきました。当院においてもダイナマップの時代より色々な機械を使用し、血圧の計測をおこなっておりましたがpetMAPとくに新製品のpetMAP grafficになってからは患者様の負担をすくなく早く計測できるようになっています。
犬猫の高血圧:収縮期血圧180~200mmHg以上 拡張期血圧120mmHg以上
犬猫の低血圧:収縮期血圧80mmHg以下 平均血圧60mmHg以下
高血圧の兆候
突然の失明(網膜剥離、散瞳、眼内出血)、多飲多尿、体重減少、食欲減少、心悸亢進
高血圧を起こす疾患
腎疾患:子宮体腎炎、慢性間質性腎炎、アミロイドーシス、多発性囊胞腎、子宮体硬化症
副腎疾患:副腎皮質機能亢進症、褐色細胞腫、高アルドステロン症
甲状腺疾患:甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
その他:僧帽弁閉鎖不全症、貧血、高脂血症、糖尿病、高エストロゲン症
人間の場合は本態性高血圧が多く、動物の場合は二次性高血圧が多いのが特徴で血圧測定より病気が発見できる可能性があり、特に高齢における血圧測定が推奨されます。
当院でも毎年高血圧症による突然の失明が何頭もあり、計測していればよかったのになあという症例もおおく、慢性腎疾患、慢性心疾患、糖尿病での併発症の予防、病気の早期発見にやくに立つと思われ、ぜひ血圧測定をお勧めいたします。

吐くという症状

11年09月06日

「吐く」と表現される症状は、正確には吐出と嘔吐に分けられます。おおまかに言うと吐出は食道の内容物が口から出てくること、嘔吐は胃の内容物が口から出てくることです。「吐いている」という症状が吐出であるか嘔吐であるかによって原因が全く違うため、行う検査が異なってきます。したがって吐出であるか嘔吐であるかを判断することは非常に重要です。
吐出は一般的に食後それほど時間が経っていない時に起こり、出てくるものは未消化物であるというのが特徴であると言われています。しかし例外はあり、食後すぐでも消化されている食べ物なら嘔吐により胃から出てきたものですし、吐いた物が未消化物であったとしても、消化を受ける前に胃から出てきた場合や胃の消化機能が異常である場合が考えられます。吐出と嘔吐でより信頼できる判断基準は吐くときの様子です。吐出では前兆がなく突然食べ物を吐き出し、努力なしに受動的に吐きます。
一方嘔吐では食後時間が経ってから、消化されたものが吐き出されます。しかし前に挙げたような例外があるため注意が必要です。嘔吐には前兆があり、そわそわする、立ち上がってかまえる、よだれが出るといった様子が見られます。また、吐くときは腹部が大きく収縮し、能動的に物を吐き出します。
以下に見分け方のポイントをまとめましたので参考にしてください。

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食道に問題があるときに起こる吐出の原因には食道炎、食道の物理的な閉塞(異物、狭窄、腫瘍、血管輪、食道周囲の腫瘍による外側からの圧迫)、巨大食道症などが挙げられます。嘔吐の原因はたいへん多く、様々な病気を疑う必要があります。想像しやすいのは消化器疾患ですが、嘔吐の中枢は脳にあるため脳の炎症や腫瘍、前庭の異常から起こっていることも考えられます。さらに肝臓や腎臓の病気によって血液中の有害物質が増えて嘔吐が起きている場合もあります。
以上のように吐出と嘔吐では考えられる病気が異なるので、わんちゃんや猫ちゃんが「吐いている」ときは、その様子をよく観察してみてください。