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最近のエントリー

犬の痴呆

11年06月26日

犬の痴呆の原因は、脳梗塞、脳出血、神経細胞の萎縮、βアミロイド蓄積(人でのアルツハイマー病)、酸化物質の増加などが原因と考えられていますが、未だ明確には分かっていません。高齢な犬に多く、犬種的には柴犬が多いと考えられています。この病気の治療目的は、進行を遅らせる、もしくは、症状を改善させる事であります。
サプリメントや、食事療法がありますが、まず、有効と考えられているのが、人でもサプリメントとして親しまれている脂肪酸です。魚油に多い、DHAや、EPA、DPAといった不飽和脂肪酸が、犬の痴呆にも注目されています。
また、犬の痴呆において、オーナー様の頭を悩ましてしまうのが、夜鳴きです。夜鳴きに対しては、メラトニンといった体内で作られている物質を与える事で、夜の睡眠を促すといった治療が行われる事があります。(メラトニンは夜に体内濃度が高くなります。)
症状が進行してしまってから、内服や、食餌を開始するより、早期の開始のほうが効果は期待出来ます。
病院では、他に漢方薬等がございます。
ご高齢なワンちゃんでの悩み事等ございましたら、当院にご相談ください。

膀胱の移行上皮癌

11年06月21日

膀胱には移行上皮癌、腺癌、扁平上皮癌、横紋筋肉腫などさまざまな腫瘍が発生しますが、その中でも最も発生率が高いものは移行上皮癌です。移行上皮癌は尿管と膀胱の吻合部、すなわち膀胱三角部での発生が多く、好発犬種はビーグル、シェットランドシープドッグ、スコティッシュ・テリア、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアとされています。
初期症状は非常に曖昧で、膀胱炎と同様の症状を示し、血尿や頻尿がみられます。エコー検査にて膀胱壁の不整、腫瘤性病変が見られた際に膀胱の腫瘍を疑います。しかし、これらの病変は慢性の膀胱炎でも見られることがあるため、注意が必要です。診断は尿中に含まれる細胞での細胞診、または膀胱鏡などを用いて組織検査を行います。
膀胱の移行上皮癌は非常に悪性度が高く、治癒は困難な腫瘍です。しかし、様々な内科療法、外科療法により、QOLの改善、また生存期間の延長は十分に期待できます。まず、非ステロイド系抗炎症薬の一種であるピロキシカムがあります。ピロキシカムの投与により、難治性の血尿や頻回少量尿が消失した、膀胱の疼痛が消失した(?)など、ピロキシカム投与後に明らか症状改善がみられるケースは少なくありません。また、ピロキシカム単独投与により平均生存期間の延長も認められています。
さらに抗癌剤療法も有効性が示唆されており、今後更なる症例の蓄積によって、その有効性がより明らかになると思われます。
外科療法も様々な方法が報告されています。膀胱三角部以外の部位に発生した膀胱腫瘍に対して行われる膀胱部分切除術、膀胱三角部に発生した腫瘍によってすでに水腎症を合併している症例に対する尿管転移術、また膀胱を尿道ごと摘出する膀胱全摘出術などが報告されています。膀胱全摘出術は膀胱をすべて摘出するので蓄尿排尿という機能がなくなり、尿失禁となりますが、膀胱腫瘍の根治治療としてもっとも可能性のある術式だと思われます。

子宮蓄膿症

11年06月07日

 子宮蓄膿症は高齢の未避妊雌犬で多発する病気で、子宮内に膿が貯留し緊急性の高い疾患です。猫では一般的ではありません。
 そもそも犬の生理は特殊なもので、発情、排卵のあと妊娠していなくても2ヶ月程卵巣には黄体が形成され続け、黄体ホルモンが産生されます。つまり偽妊娠状態が約2ヶ月続きます。黄体ホルモンは子宮内膜腺の増殖と分泌を刺激し、これが長期間、高濃度持続することで嚢胞状子宮内膜過形成になるといわれています。この状態では子宮内に液体が貯留し、細菌が増殖する温床となってしまいます。10歳齢以上では未避妊雌の4分の1程度が子宮蓄膿症になるリスクを持っているといわれています。
 膣からの排膿、発熱、食欲不振、元気消失、多飲多尿、脱水、嘔吐などが見られます。膣からの排膿がない閉鎖型だとより重度になります。卵管から膿が腹腔内へと漏れ、腹膜炎を発症することもあります。また合併症として腎機能不全、血液凝固異常(DIC)、低血糖、全身性炎症反応症候群などを伴うこともあります。
 診断は問診や身体検査、血液検査での白血球数の増加や貧血、また画像診断、特に超音波検査で液体に充たされた子宮を確認することで診断に役立ちます。
 治療の基本は一般状態の改善と、卵巣子宮摘出です。子宮蓄膿症の子宮は組織が脆弱であるため、手術は特に注意が必要となります。また近年では内科的治療法もいろいろと研究されているようです。黄体を退行させるプロスタグランジン(PG)やPG受容体拮抗薬などがあります。前者は嘔吐、低体温、発情回帰が早く再発してしまうことがあるなど副作用もあり、注意が必要です。後者は子宮を黄体期から脱して子宮を弛緩させ排膿させるもので、前者よりは副作用が少ないものです。しかしどちらもまだ一般的ではなく、そしてもちろん重症でより緊急性の高い場合には外科的治療が最優先となるのは言うまでもありません。
 犬では発情後にこの病気が多く発見されますので、発情後1~2ヶ月はよく様子を気をつけて見てあげて下さい。

ウサギの流涙症

11年06月01日

ウサギの流涙症の原因は大きく以下の2種類に分けられます。

①結膜炎や角膜損傷、眼瞼炎などによる涙の産生の増加。
 ②鼻涙管の狭窄や閉塞による涙の排泄障害。

ウサギでは鼻涙管の狭窄・閉塞による流涙症が多く、これらは上顎臼歯の歯根の過長・炎症などの歯の異常に起因することがほとんどです。鼻涙管の狭窄・閉塞に起因する流涙症は片側性に発生することが多く、やがて両側性になることも多いです。これは左右の臼歯を均等に使っていないことが原因で、右を使う癖のある場合は右の流涙症が先に生じると考えられます。通常結膜炎は見られませんが、鼻涙管狭窄から鼻涙管や涙嚢に細菌感染がおこると炎症が結膜に波及して結膜炎を起こすこともあります。

鼻涙管狭窄・閉塞の治療は鼻涙管の洗浄をすることによって行います。洗浄によって閉塞物が流し出せれば、流涙は改善消失します。しかしながらもとの原因が歯根にあることが多いので改善しない場合や再発する場合もあります。流涙が改善しない場合、涙による湿性皮膚炎を防ぐために涙を拭ってあげることが重要になります。