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最近のエントリー

犬のキシリトール中毒

19年06月20日

 キシリトールといえば甘いのに低カロリー、お口の健康も守ってくれて眠気も覚める。といった1度で2度も3度も美味しい成分。というようなイメージがあります。しかしながら人でこそあまり毒性は見られませんが、これがわんちゃんの口の中に入ってしまうと大変な状況に陥ります。1つはインスリンが大量に分泌されることによる低血糖、もう1つは肝壊死からの肝不全および血液凝固不全です。これはどちらも生命の危機に瀕する大変危険な状態と言えます。わんちゃんがキシリトールを摂取した場合と、同じ量のブドウ糖を摂取した場合を比較するとなんと6倍のインスリン濃度のピークが認められたという報告があります。このため糖を摂取しているのにもかかわらず血糖値は上がることはなく下がってしまうのです。肝壊死に関しては明らかな原因は解明されていないものの、キシリトールの代謝物が肝臓のアデノシン3リン酸を枯渇させるあるいは細胞を傷害するのではないかと言われています。

 さて、どのくらい食べると大変になってしまうのか。というとわんちゃんの体重と含まれているキシリトール成分による。ということになっているのですが、ガム1粒の含有量は多くても1.3/粒となっているそうです。低血糖は0.1gkg以上で起こる可能性があり、肝壊死に関してはその数倍量食べることによって起こってくる可能性があると報告されています。そこから計算すると10kgのわんちゃんでも1粒食べれば低血糖になるリスクがある。ということになりますで、眠気覚まし、ガムの置き場所には重々注意してくださいね。

 もしも食べてしまった場合は早くて30分で症状がでることもあれば12時間経って出ることもあります。食べてしまったかもとなった場合は早めの診察をお願いします。

S.A

6月14日 葉月会 腎・泌尿器学シリーズセミナー第7回 急性腎不全の治療

19年06月15日

宮田優一先生 日本獣医生命科学大学 獣医内科学教室第二 講師

第7回 1から始める腎臓病のはなし 

腎・泌尿器学シリーズセミナー第7回のテーマは『急性腎不全の治療』に関してでした。

急性腎不全は腎毒性物質の摂取、感染症、尿路閉塞などの原因で本来尿として排出される成分が過剰に体内に急速に蓄積されてしまい、乏尿、無尿になると最悪死に至る疾患です。

 急性腎不全になると①脱水②腎臓の血流の低下③電解質の変化 が問題になり、これらを是正するためには輸液が大切になってきます。ただし、闇雲に輸液をすればいいというものではありません。①どのくらい脱水しているのか?②どのくらいの量、速度で輸液をすればいいのか?③電解質の是正をするために一番適している輸液剤はどれか? をしっかり考慮して、輸液数時間後に体重測定や血液検査を行い、最適な治療が行えているかを評価し、その上で今後の治療の方針を決めていかなければなりません。特に急性腎不全のときは必ずといっていいほど代謝性アシドーシスに陥っています。アシドーシスの程度がひどい場合はすぐに治療しないと高K血症に繋がり不整脈など心機能に影響が出る場合もあります。

急性腎不全の場合、病気の評価や輸液、薬剤の選択を誤れば死に直結することもあります。そのことをしっかり自覚して治療を行わなければならないことを強く感じました。

K.G

猫は点眼薬に弱い?

19年06月10日

点眼薬は内服薬や注射薬と異なり、あまり副作用について重要視されない傾向にあります。症状の改善がみられないと、他の点眼薬に切り替えたり、点眼薬を増やしたりして治療することが多いです。

しかし、いずれの点眼薬にも副作用があり、重度な場合にはショックを起こすこともあります。一番多くみられる副作用は、点眼後にまぶたの周りや内側が腫れていたり、しみるなどの刺激を訴えることが多いです。

犬・猫の眼の病気の治療にはさまざまな治療薬を使用しますが、結膜の充血や刺激などの副作用をあらわす場合があります。

その中でも猫は、犬に比べて点眼薬による副作用が原因で治療が遅れているケースを診療する機会が多いです。その場合、防腐剤を含まない点眼薬に変更すると、ほとんどの症例で症状が落ち着くことが多いです。 

点眼薬には容器中に細菌やカビが繁殖しないように防腐剤が使用されています。その多くがベンザルコニウム塩化物という物質で、ベンザルコニウム塩化物は細菌の細胞膜に作用して効果を表しますが、角膜の細胞質にも作用してたんぱく質を変性してしまうため、角膜に障害を起こします。

また、点眼治療を行っていてもなかなか治癒しない、再発する場合には点眼回数の問題もあります

点眼の回数は、決められた回数を守って使用すべきで、自己判断で回数を増やしたり、減らしたりすることで、治癒が遅れたり、治癒しなかったり、悪化する場合があります。

・点眼回数が多い  :まぶたの皮膚の炎症や重度涙焼け、角膜炎、角膜潰瘍等

・点眼回数が少ない :治療効果がほとんどあらわれない

最後に点眼薬の長期投与にも注意が必要です。

どんな薬でもそうですが、長期投与することで副作用が現れる場合があります。 点眼薬は、薬剤のすべてが眼内に入るわけではないため、余分な点眼薬は眼瞼より外にあふれて皮膚に接触します。あふれた薬剤を拭き取らず、長期間そのままの状態にしておくと皮膚炎を起こす場合があります。

いろいろ書きましたが、点眼治療は獣医師に相談の元、適切な治療を行いましょう。どんな些細な質問でも、獣医師が丁寧に対応いたします。

適切な治療で、愛犬・愛猫の眼の健康を守っていきましょう。

Y.N

マイクロチップについて

19年06月05日

動物の虐待防止や動物の適切な取り扱いなどを定めた「動物愛護法」が、2019年の通常国会で改正されることになりました。いくつか改正点がありますが、今日は「販売用犬猫へのマイクロチップ装着の義務化」についてお話したいと思います。

マイクロチップとは、長さ10mm、直径2mm程度の円筒状の電子タグのことで、ひとつひとつに15桁の番号が振り当てられています。体内に埋め込んだこのマイクロチップを専用の機械で読み取ることによって、登録された情報を確認することができるシステムになっています。

今回の改正における対象者は、繁殖を生業とするブリーダーやペットショップなどで、飼い主の手に渡る前にマイクロチップを埋め込むことが義務化されます。すでに飼育されている動物たちへの装着は「努力義務」にあたり、これは、罰則などはないものの「できるだけ装着するように努めなければならない」という意味になります。

そこで、マイクロチップ装着の利点をいくつかご紹介させていただきます。まず第一に、有事にすぐ情報が確認できるということです。したがって、動物が保護された際にすぐマイクロチップを確認することによって、データベースから情報を検索し、飼い主に連絡をすることができます。首輪などはいつ外れるとも限りませんが、一度埋め込んだマイクロチップはよほどのことが無い限り外れたり失ったりしないとされています。

二つ目は、動物の身体への負担が少なく安全性が高いということです。マイクロチップは、採血などに使う針よりも少し太い専用の針を用いて首の後ろの皮膚がたっぷりある部分に挿入します。鎮痛剤・麻酔等は使わず行うことが一般的ですが、避妊・去勢手術の際に同時に装着される方も多くいます。犬では生後2週間以上経つと装着が可能です。マイクロチップ装着による副作用などの報告はひとつもありません。

当院でも、マイクロチップの装着を行っています。大震災などもしものときのために、マイクロチップは大いに活躍するということを知っていただければと思います。S.K