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最近のエントリー

ねこちゃんの眼が黒くなっています

19年08月20日

 猫ちゃんの虹彩に黒い模様がでてくる。といった病気はいくつかあり、純粋に色素が沈着している良性のもの(虹彩色素沈着症)から悪性の虹彩黒色腫までその病態も様々です。

 今述べた2つの疾患は初期は虹彩表面に色素班が生じるところまでは同じ病態をたどりますが、色素沈着症の進行がゆっくりで瞳孔異常を起こさないことに対し、悪性虹彩黒色腫は進行が早く広がっていくだけではなく、隆起したり、新たな色素班が生じていきます。このことによって二次的な緑内障やブドウ膜炎を起こすと痛みを生じます。また、遠隔転移することもあり、迅速な診断と摘出が望まれます。

 同じような瞳孔の形がおかしく、黒く隆起したものが見える。という場合に虹彩毛様体嚢胞というものがありますが、こちらは良性の病気になります。虹彩の前から出ているのか後ろから出ているのか、あるいは中身が空っぽなのか充実しているのかによって診断は可能です。同じような症状に見えてもいいものと悪いものは鑑別可能なことがほとんどです。もしもおうちの猫ちゃんの眼に黒いものが見える場合、さらに広がっているのではないかなと感じたら一度ご相談ください。

S.A

猫伝染性腹膜炎の新薬

19年08月15日

 猫伝染性腹膜炎(FIP)は、経口や経鼻から比較的容易に感染が広がることが知られている猫の感染症の中でも有名な病気ですが、根治を期待できる治療法は確率されておりません。また、発症した猫の予後は極めて悪いとされ、診断から数日~数か月で死亡・または安楽死。その中央値は9日間という報告もあります。さらに、有効なワクチンも確立されておりません。

 その極めて治療の難しい病気であるFIPについて、今年の2月にカリフォルニア大学デイビス校の研究が発表されました。GS-441524 というウイルスの複製を阻害する新薬が猫伝染性腹膜炎に有効である、という内容で、話題になっております。31匹の猫での報告で、そのうち26匹の猫が12週間の投薬期間を完了しています。また、その26匹においては、治療開始すぐに発熱や食欲の低下、活動の低下といった臨床症状が改善しているとも報告がありました。

 まだまだ日本国内の一般臨床で用いられる段階ではありませんが、不治の病とされていた病気に対して希望の持てる新しい話題は嬉しいものです。教科書のFIPのページから、予後不良の文字が消える日が来るかもしれませんね。

M.K

愛犬がハチに刺された時の対処法

19年08月10日

これからの時期、愛犬と一緒に出掛けてアウトドアを楽しんでいるときなど、愛犬と共にハチに遭遇する機会が増えてきます。また住んでいるところによっては自宅周辺に巣を作られてしまうケースも年々増加しています。最近では愛犬と一緒にキャンプに行ったり等、ハチによる被害の件数が増えてきています。

犬は好奇心が旺盛な動物なので、ハチに関わらず、飛んでいる虫を走って追いかけることが大好きです。しかし追いかけられた虫は自分の身を守ろうと追いかけた犬を指してしまうことがあります。

通常、犬が虫に刺されやすい体の場所は足だと言われています。それは犬が歩いているときに気づかずに虫を踏んでしまうことが多いからです。あとは興味のあまり顔を近づけすぎて顔を刺されるケースも多く、虫にかみつこうとしたり、口で捕まえようとしたり、舌や口の中、のどを刺されることもあります。口の中、喉、舌などを刺されると、腫れて気道をふさいで呼吸ができなくなることがあるので注意が必要です。

ミツバチやスズメバチの針には毒があり、痛みは刺された小さな傷からくるのではなく、刺された時に注入される毒から来ます。ミツバチは一度針を刺すとミツバチの体から針が外れ、刺した皮膚に針がとどまる作りになっています。スズメバチはそういったことがなく、何度も刺すことがあるので注意が必要です。

たくさん刺されてしまった場合、強い炎症を起こしてしまう場合があり、通常であればその毒による炎症が死に直結することはありませんが、つよくアレルギー反応が出た場合は要注意です。これをアナフィラキシーショックと言います。ハチの毒に関わらず、様々な物質によるアレルギー反応で知名度の高い言葉なので聞いたことがある人がほとんどだと思います。

ではどんな症状を引き起こすのでしょうか。

アナフィラキシーショックとは、アレルゲン(アレルギーの元)を摂取・接触・吸入などの形で体内に取り入れた際に、体が急激なアレルギー反応に対するショック症状を起こすことをいいます。本来、体を守るための免疫系が、アレルゲンに対して過剰に反応することで、全身の機能悪化を招いてしまうのです。

アレルギー反応には以下のような症状が含まれます

・全身の脱力

・呼吸困難

・刺された個所から広がった広範囲の腫れ

重篤な症状がみられた場合は、ただちに獣医師の診察を受けてください。

犬がハチに刺された時の対処法

まずは愛犬がハチに刺された場合、その場から静かに離れ安全な場所まで移動してください

①針を確認して抜く

ミツバチに刺された場合は、まずは愛犬の体に針が残っていないか確認しましょう。確認出来たら、皮膚からできるだけ近い位置の針をもち抜きましょう。毛抜きやピンセットがあればベターです。指でつまんで抜くことは毒嚢とよばれる毒の入った袋をつぶしてしまい、毒液が体内に入るおそれがあるため注意が必要です。

②患部を水で洗い流す

スズメバチの毒素は水溶性なので水に溶けだしやすいと言われています傷口を流水で洗い流して、毒液を絞り出します。この時に口で毒液を吸い出すことは止めてください。ハチの毒は水溶性なので、唾液と一緒に体内に取り込んでしまい、飼い主さんの体に危険がおよぶ可能性があります。

③患部を冷やす

タオルなどを濡らして、傷口を冷やしましょう。患部を冷やすことが、痛み・腫れの軽減につながります。

これらの対処を可能な限り愛犬に施したら、すぐに動物病院を受診してください。

最後に、ハチの種類にもよりますが、主に5~6月に大量に羽化して、9~10月頃になると繁殖期を迎えるそうです。繁殖期は特に縄張り意識が強くなるので、通常より攻撃的になります。これからの時期、山や公園などハチをよく見かける場所へ出かけるときは注意が必要です。

野山へ行く際や、アウトドアを楽しむ際には、犬用の服を着せることも効果的ですが、夏の時期は熱中症に注意が必要です。犬用の虫よけスプレーなどの使用も効果的です。

外出時には害虫対策を忘れずに、またアナフィラキシーショックに対する知識を身に付け、愛犬をハチの被害から守ってあげてくださいね

Y.N.

犬の膀胱炎について

19年08月05日

膀胱炎は、膀胱内の粘膜に炎症が起きる疾患で、血尿、頻尿といった症状がみられます。「おしっこが出ていない」という主訴でご来院いただく方がいらっしゃいますが、その場合は頻尿によって常時膀胱が空の状態であるたトイレに行っても尿が出ない、ということがほとんどです。人間の膀胱炎で真っ赤な血尿が出ることがありますが、犬の血尿は真っ赤というよりも、尿の中に血が混じる、といった程度のものが多いようです。

膀胱炎はさまざまな原因により発生します。細菌感染の他、膀胱結石、腫瘍、外傷などが原因になることもあります。雌犬は尿道の入り口が肛門に近く、また尿道が短いため細菌感染を起こしやすいと言われています。一方で、雄犬は尿道が長く前立腺が細菌感染に対する防御機能を有しているため、雌よりも細菌感染による膀胱炎は発生しにくい傾向がありますが、前立腺炎などの前立腺疾患があると細菌感染をおこしやすくなることが知られています細菌感染による膀胱炎は、適切な抗生剤によって治療することができます。

膀胱結石や結晶が原因の膀胱炎は、それらが膀胱粘膜を物理的に傷つけることによって生じます。結石が尿道に詰まると尿道閉塞を起こしてしまう危険があるため、外科的手術や石を溶かす食事療法を行います

その他、はっきりとした原因がわからない特発性膀胱炎というものも存在します。特発性膀胱炎の大半はストレスによると言われています。もうじきやってくるお盆やお正月といった、普段いっしょに生活していない親族が大勢集まるような時期は要注意と言えます。S.K