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最近のエントリー

新型コロナウイルスはペットにも感染するか

23年03月30日

人における新型コロナウイルス感染症の初発は201912月のことです。早いようで人類とこの感染症の付き合いは今年で4年目に入ます。COVID-19は感染症としての呼称であり、COVID-19の病原体の名称はSARS-CoV-2です。同じコロナウイルス科に属し20022003年に猛威を振るったSARS現在もアラビア半島で犠牲者を生んでいるMERS病原体と近縁にあたります。SARS-CoV-2の起源はキクガシラコウモリの体内で変異したウイルスがハクビシンに感染し、ハクビシンからさらに人へ感染が広がったことであるとされています。

 SARS-CoV-2はアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を受容体として結合し、宿主の細胞に感染します。ACE2はあらゆる哺乳類が共通して保有する酵素であり、人ではほぼ全身の細胞に発現しています。ACE2がコロナウイルス粒子とどれだけ結合しやすいかは動物種によって差があります。ネコ科動物がSARS-CoV-2への感受性が高いとされるのはこのためです。フェレットは猫よりもさらに感受性が高いとされ、わずか1000個のウイルス粒子で感染が成立するといわれています。

家庭犬でSARS-Cov2に感染したという報告は海外でいくつもあがっていますが、感染した犬が明確な症状を示したという報告はありません。一方、人から猫へ伝播した思われる例は国内でも発生しています。昨年は北海道のとある家庭の飼い猫においてデルタ株への感染と発症が確認されましたこの猫の飼い主である家族もデルタ株に感染していました。猫が示した症状はくしゃみや鼻汁、目の充血でしたこの症例では呼吸器症状に対する一般的な治療で一定の効果が得られたそうです。

コロナ犬猫.JPG重要なポイントは、人から犬猫に感染することはあっても、その逆はないということです。また、猫がSARS-CoV-2に感染した場合、ウイルスを排出する期間は約1週間とされています。人のウイルス排出期間が約3週間とされ、人の中和抗体保有率と猫の中和抗体保有率が相関していると報告があります。気をつけることがあるとすればペットと触れ合う前後の手洗いなど至極一般的な衛生管理です。また、猫の場合は人にウイルスをうつすことはなくとも外出した際に野生動物にウイルスをうつすかもしれません。野生動物に蔓延し変異を遂げたウイルスが回り回ってまた人間に伝播する可能性もないとは言い切れません。よって猫の場合は完全室内飼育が推奨されます。 S.R.

参考資料:『SARS-CoV-2について 1.新型コロナウイルスの総論~犬や猫に何がおこっているのか~ 2.新型コロナの猫感染全国調査・・・2020年時点では猫がどの程度感染していたか?』(動物臨床医学31(3)83-88,2022)

犬にも花粉症ってあるの?

23年03月22日

 寒さも和らいできて春の訪れを感じるようになってきて、花粉症の症状が気になり始めた人も多いのではないでしょうか?早い人では2月ごろからくしゃみや鼻づまり、目の痒みといった症状に悩まされている人も出てきます。そんなつらいアレルギー疾患、花粉症は実は人間だけではなく、犬にもあることをご存じでしょうか?

花粉症とは、花粉によって生じるアレルギー疾患のことを言います。犬の場合、お散歩やお出かけなど、外に出る機会もありますので、どうしても花粉を浴びてしまいます。また、飼い主さんが持ち帰ってくる花粉で症状を起こすことがあります。しかし、人のように大衆的な病気ではありません。多少の症状で過度に花粉症を心配する必要はありませんが、犬は人のように自分で症状を訴えることはできませんので、飼い主さんが気付いて、対策をしてあげることが大切です。

犬の花粉症での主な症状は、実はくしゃみや鼻水のような鼻炎の症状よりも、皮膚のかゆみや発疹などが一般的です。また、頻度は不明ですが、花粉による喘息の発症も報告されています。

花粉症の原因となるアレルゲンは、犬では正確なデータはそろっていません。しかし、可能性のあるものとして、スギ花粉やブタクサの花粉などが挙げられます。動物病院ではアレルギー検査を行うこともできますので、花粉症を疑うときは、こうした検査も有効です。

血液を用いて調べることが出来るので採血だけで調べることが出来ます。アレルギー検査はスギやブタクサだけでなくハウスダスト中のダニや環境中のアレルゲンにどれだけ反応しやすいか調べることが出来ます。

花粉症の治療は基本的に人と同様、根本的に治療することが出来ないので「対症療法」がメインになります。皮膚の痒みなどの症状を抑えるために、ステロイドや抗ヒスタミン薬が使用されます。

犬に掻いたらダメと言ってもやめてくれません。掻くと炎症が広がりさらに痒くなるので、エリザベスカラーや洋服の着用で悪化を防ぐ場合もあります。

しかし、最も大事な対処法は、アレルギー反応が出ないように予防することです。犬のための花粉症対策を紹介します。

・花粉の飛散が多い時間の散歩や外出を控える

・散歩の跡は愛犬の身体を拭いてあげる

・ブラッシングはこまめにしてあげる

・シャンプーの頻度を増やす

・飼い主さんが帰宅した際、花粉を家の中に持ち込まないようにする(家に入る前に花粉を払う、花粉がつきにくい服を着るようにするなど)

・家の中の掃除はいつも以上に念入りに

花粉症は人でも辛いですが、ワンちゃんもじつは痒がっている場合があります。春先や秋に限って痒みがひどくなるときは一度病院にかかり、出来ればアレルギー検査をして調べていくことをオススメします。

過ごしやすい時期になってきたので気持ちよく過ごせるようにしてあげましょう

Y.N.

オスの不妊治療

23年03月13日

精子が精祖細胞から発育し精液に現れるまでに55~70日かかります。オスの不妊症は精巣炎や前立腺炎などが原因になっている場合があり、根治させてから再検査までにこの間隔をあける必要があります。この間隔を繁殖活動休止することが重要な補助療法になり、またストレス、温度、繁殖への使用過多といった一時的な精細管へのダメージに対しても必要な治療法になります。したがって乏精子症や無精子症が永久的かどうかを断言する前には最初の検査から3~6か月後に再検査してからになります。K.Y

犬における胆嚢粘液嚢腫

23年03月05日

春になりフィラリアの予防シーズンが近づいてきました。多くのワンちゃんにフィラリア検査と一緒に健康診断を受けていただいています。この健康診断で血液検査の異常値を指摘されたワンちゃんもいるのではないでしょうか?今回はワンちゃんでしばしばみられる胆嚢の病気をひとつご紹介します。

胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)という病気をご存知ですか?人における胆嚢疾患では胆石症という病気が多いようですが、ワンちゃんではムチンという粘性物質が胆嚢内に過剰に蓄積することによって生じる胆嚢粘液嚢腫という病気がしばしばみられます。胆嚢内に過剰に蓄積したムチンは胆管にも蓄積して胆汁の流れを阻害します。また、胆嚢が過度に拡張すると血流を圧迫し、胆嚢壁あるいは胆管が壊死・破裂し、内容物がお腹の中に流出することで胆汁性腹膜炎を引き起こします。胆汁性腹膜炎は胆嚢粘液嚢腫が引き起こす最も緊急性が高い病態であり、外科的な治療が必須になります。

胆嚢粘液嚢腫の診断には超音波検査いわゆるエコー検査が最も有用であるとされています。下の画像のように胆嚢の断面像が「キウイフルーツ」様の切り口に見えるのが典型的とされています。しかし実際には、病気の進行度によってさまざまなバリエーションの超音波検査画像があり、治療介入すべきかの判断に苦慮する場合もあります。最近の研究では超音波画像によって6つの病期・タイプに分類できるのではないかと報告されています。しかしながら、6つの分類と臨床徴候の有無や胆嚢破裂の有無に明らかな関連性が認められなかったとの報告もあります。この病気の多くは慢性経過をとり、無症状である期間も長いですが、重篤な合併症を引き起こすリスクもあるため病期の推定は重要になると考えます。超音波検査による診断精度の向上のため、さらなる研究・検討が望まれます。

また、胆嚢粘液嚢腫を起こしやすい基礎疾患としては脂質代謝異常症(高コレステロール血症・高脂血症)、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などが知られています。また血液検査では通常、ALPやGPTなどの肝酵素値の上昇が認められます。春の健康診断でこれらの様な異常値が見られたワンちゃんは超音波検査などの精査をおすすめします。

D.N

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