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最近のエントリー

体性高血圧症

13年07月29日

 安静時の収縮期血圧が150~160mmHg以上であった場合、体性高血圧症と定義されます。
 高血圧症は本態性および二次性に分類され、イヌやネコでは本態性はまれで二次性に発症する高血圧症が多く、特に腎不全、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能亢進症、糖尿病などに関連するものが多く見られます。
 病歴としては、急性の失明、食欲不振、嘔吐を呈する場合もありますが、ほとんどが基礎疾患に由来する臨床症状を呈します。
 ネコでは中等度以上の高血圧で網膜病変が発生します。高血圧症を治療することによって眼病変が改善する可能性はありますが、視覚障害が起こって48時間以内に治療が行われなければ、多くの例で視力回復は望めません。また、多発性の大脳動脈硬化症に起因する神経症状が見られることや、左心肥大が認められることもあります。
 イヌでの高血圧症の二次的変化は、主に腎疾患の悪化、僧帽弁閉鎖不全症の悪化です。鼻出血を伴うこともあります。
 診断は、血圧測定によって行われます。通常は、非観血的血圧測定法(オシロメトリック法もしくはドプラ法)によって測定されますが、動物が興奮状態にあっては180mmHgであっても高血圧症ではない場合があります。よって、測定にあたっては動物の安静を維持する環境が必要となります。
 治療は、まず原因疾患を特定し治療することです。原因疾患が適切に管理できない場合や再発するような場合は、高血圧症に対しての降圧薬の投与が必要となります。 
 高血圧症は前述のとおり他の疾患から二次的に起こることが多く、血圧測定はそういった疾患の早期発見につながる可能性もあります。健康診断の一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。

薬剤耐性菌について

13年07月22日

最近、MRSAなどの耐性菌が問題になっています。
薬剤耐性菌というのは、薬に対して抵抗力を持ってしまい、薬が効きにくくなった菌のことです。
つまり、この菌に感染してしまうと、薬を使っても病気が治らなくなったりします。
薬剤耐性菌は日本に蔓延してきていると言われています。
実際に免疫力が低下している場合に敗血症になり、重篤な状態になることもあります。

耐性菌を減らすためには、環境の改善も重要です。
身近な手洗い、汚染源の洗浄も有効です。
院内でも、手洗い後はペーパータオルを使用したり、感染源となりうるものを消毒した場合、破棄できるような使い捨てのものを使用しています。
また、治療においても、抗生物質が必要な場合、きちんと菌がいなくなるまでしっかり投与し、
必要なくなればきちんとやめていくということが重要です。
また、効きが悪い場合、耐性菌が疑わしい場合は、どの抗生物質がきちんときくのか薬剤感受性試験も積極的に行っていきます。
中途半端に薬剤を投与すると、耐性を持ってしまうことも多いです。

治りが悪い場合、感染を繰り返している場合、免疫力などの患者さん自身の評価も重要ですが、
細菌の評価も重要になってきます。
きちんとした状態の評価が必要ですので、治りにくい等あった場合早めにご相談ください。

鳥類の卵泌

13年07月15日

 鳥類の卵泌 いわゆる卵づまりは、比較的よく起こる疾患です。「卵形をした完成卵あるいは未完成卵が卵管から一定時間以上産出されない状態と定義されます。」一般的な鳥類は、排卵後24時間以内に産卵が行われます。つまり触診で卵が触れて24時間経過しても産卵されない時に卵泌と考えられます。
 原因は、機能的卵泌(低カルシウム、ビタミンE欠乏、、運動不足、環境の問題等)と機械的卵泌(卵の形成異常、卵管口の閉鎖等)に分類され、原因は様々です。
 発生年齢も様々で、通常の産卵は、1歳位までで始まりますが、8歳になってから産卵する鳥もいるようです。 卵泌の発症は、初めての産卵時に多く、次いで定期的な産卵が続いて、栄養などが使われた結果3歳くらいで発症することが多いです。
 症状は、無症状から、疼痛、痙攣、虚脱など危険な状態まで様々です。
  卵泌がおこった場合、一般状態が許せば、自分で産卵させるために、カルシウム剤を投与するなどして、補助を行います。産めなく、鳥が消耗していれば卵を取り出す処置を行います。
 大事なのは、発情させない、産卵をなるべくさせないことです。
 
 

犬の子宮蓄膿症性腹膜炎の血液透析症例

13年07月05日

DSC08343.JPG
子宮蓄膿症による腹膜炎は時々来院されます。卵管から微量ずつ漏れ出したものから、いっきに破裂漏出した症例までさまざまです。細菌の種類や感染状況によって腹膜炎に伴う無尿症をひきおこすケースもあり、早期発見早期手術が必須です。
先日子宮蓄膿症の破裂症例時間外で担ぎこまれました。発熱、虚脱、意識レベルが低下しています。緊急手術と特殊ドレーンチューブ設置で対応いたしました。感染のコントロールは4日目にはドレーンを抜去できました。
手術日より尿カテーテルを留置し、利尿を促進するように様々な処置をしておりましたが、翌々日よりほぼ無尿状態になり、その日より血液透析を行いました。尿毒症、黄疸は激しく予断の許さない状態です。輸血と血液透析6日間でなんとか11日後に退院し、現在貧血も徐々に回復し元気になってくれました。血液透析の有用性を再確認させてくれました。飼い主様の積極的な治療に対するご理解と熱意に感謝しております。
子宮蓄膿症に対する注意点。
①発情期のあとの黄体期(2か月以内)におきることが多い。
②未経産犬ではとくにおりものが出るとは限らない。
③多飲多尿になったら疑いましょう。
④腹膜炎を起こす前に早期の受診を。

播種性血管内凝固症候群(DIC)

13年07月01日

播種性血管内凝固症候群(DIC)とは何らかの原因により全身の細血管内に血栓を生ずるものです。また、血小板や凝固因子の消費による出血傾向も示します。DICを起こすと治療中の疾患の状態が急に悪化したり、多臓器不全を起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
 DICを起こしやすい基礎疾患としては血管肉腫、リンパ腫、子宮蓄膿症、レプトスピラ感染症、フィラリア症、膵炎、免疫介在性疾患などが挙げられます。
 診断方法は上記の基礎疾患が存在し、さらに血液検査により血小板の減少、FDPの増加、フィブリノーゲンの減少、PTの延長、APTTの延長、ATⅢの低下のうち4項目が当てはまることにより診断できます。
 治療方法はまず基礎疾患の治療が第一で、その他に輸血やヘパリンの投与、蛋白分解酵素阻害剤の投与があります。