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最近のエントリー

猫の甲状腺機能亢進症の外科手術費用

21年11月27日

猫の甲状腺の摘出手術の費用に関してのお問い合わせが時々あります。症例によって金額に差が出てしまいますが、CT撮影+片側摘出+入院代で14万~(税別)CT撮影+片側2回の摘出手術+入院代で26万~(税別)くらいの目安でしょうか。入院時の状況や上皮正体の状況によって多少費用に差が出ます。決してお安い費用ではありませんが、毎日の投薬から解放され、完治や悪化の速度もゆっくりにできることを考えると、内服療法より外科療法をご検討していただく価値はあるのではないでしょうか。3分の1の猫が片側の異常ですが、片側の場合は特にリスクは極端に低くなります。当院では100個以上の甲状腺摘出を行っていますが現時点ではすべて良い経過をとってくれています。S.S

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蛋白尿と腎臓病

21年11月25日

 血液検査だけでなく尿検査もかなり重要な検査です。血液検査と組合わせることでさらに多くの情報をもたらしてくれるのですが、動物ではまず採尿が難しいことも相まってそれほど重要性が認識されていない印象があります。尿の濃さ(比重)や潜血など割と分かりやすい項目もありますが、尿検査の中でも特に蛋白尿については一般的に理解しにくいのですが異常がある場合は特に注意しなければならない項目です。

 そもそも尿中には蛋白はあってはいけないものです。腎臓のろ過装置である糸球体が壊れると蛋白が尿中に漏れることになります。人では腎性蛋白尿があることを腎障害というくらい尿蛋白は異常とみなされます。

 特に犬では糸球体疾患が多く、腎機能が低下するよりはるか前に尿蛋白が検出され、蛋白尿の出現によって腎臓の破壊が進みます。さらに高血圧を併発することが多く、高血圧はさらに糸球体を破壊することにつながります。そのため犬では蛋白尿の制御と同時に血圧の管理が腎臓病の進行抑制のために重要になります。一方猫では腎臓病のかなり後期に尿蛋白が出現することが多く、出現した場合には重症ということになります。

 蛋白尿になると腎臓病が進行するだけでなく、大事な蛋白質が体内から喪失してしまいます。その中でも特に血液凝固機能に関連する蛋白質が喪失してしまうことで凝固機能異常が発生し血栓症リスクが高くなります。つまり蛋白尿の治療を行うことは血栓症による突然死リスクを軽減することになりとても重要です。

 今回は腎臓病に関連する蛋白尿について述べましたが、蛋白尿は腎臓病以外にもフィラリア症、免疫介在性疾患や腫瘍性疾患など様々な疾患でも出現します。尿検査は動物に負担をかけることなく検査することができるため、ぜひとも健康診断でも取り入れたい検査です。採尿方法についてアドバイスできることもありますのでご相談ください。

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T.S.

猫の甲状腺機能亢進症の甲状腺両側摘出症例

21年11月18日

猫の甲状腺機能亢進症は甲状腺摘出により完治できます。甲状腺には副甲状腺と呼ばれる上皮小体が付着しておりこれがカルシウム濃度をコントロールします。両側甲状腺摘出が必要な場合は低カルシウム血症になり手術後大変になってしまうリスクがあることが手術を行う病院が少ない原因の一つとなっています。上皮小体の付着している位置はそれぞれ異なっています。そのことがさらに手術を複雑にしております。今回の症例は上皮小体が中心部にあり甲状腺が6個に分裂している症例でした。ピンセットの先にあるのが上皮小体です。この猫ちゃんも遠方の飼い主さまで両側摘出でしたが、低カルシウムの問題もなく無事終了しております。近隣の動物病院の先生と密に連絡をとりながら手術もさせていただきます。セカンドオピニオンをご要望の方もご連絡いただけますと対応いたします。この猫ちゃんは14歳でしたが。高齢の猫ちゃんも多く19歳以上の子たちの症例が続いております。S.S

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猫の肥大型心筋症による血栓症の手術

21年11月13日

猫は16%が肥大型心筋症に罹患するという報告があります。特にメインクーン、ラグドール、ブリティッシュショートヘアー、アメリカンショートヘアー、ペルシャで起こりやすいと言われています。心筋が厚くなり進行すると、左心室が狭小化しうっ血性心不全の病態を示します。聴診ではわからないことも多い病気です。また、この病気は動脈血栓症を起こすことでも有名です。血栓症の典型的な症状はいきなり後肢の麻痺をおこし歩けなくなってしまいます。多くの猫ちゃんでは大きな声で鳴き続けることが特徴にあげられます。今回の猫ちゃんは連れてきていただいた段階で後躯麻痺と軽度の肺水腫を起こしておりました。エコーとCTで動脈の後肢に分枝する部分(鞍状部)に血栓が認められたため緊急手術にて摘出いたしました。すぐに肺水腫も落ち着き、まだ完全ではありませんが後肢も動くようになり無事退院いたしました。心臓内に血栓を認めない鞍状部血栓症の場合、摘出することにより良い経過をとることが多いです。後肢が動かなくなり大きな声で鳴きはじめたらすぐに診察していただくことをお勧めいたします。飼い主様のご厚意により猫ちゃんと血栓を掲載させていただきました。

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帝王切開のおはなし。

21年11月07日

体が小さくてお産が大変、体位が悪くて出てこれない、子宮収縮不全、高齢犬、お産の日にちに満ちているのにまだ出てこないなどなど帝王切開が必要な子たちがいます。今、人気のフレンチ・ブルドッグやイングリッシュ・ブルドッグは鼻がペッちゃんこなのでお産が難しいタイプです。今回はフレンチブルドッグの帝王切開でした。無事8頭取り上げました。帝王切開はとても手術の時期が大切です。早すぎると仔犬が育っていない、遅くなってしまうと計画出産にならずリスクが増えてしまうということになります。交配の時期はあまり参考にならないこともあり、一般的に排卵後63日64日目が多くの症例でお産の日にちになります。プロゲステロンを測り正確な排卵日を知っておくことは理想的な交配適期を知るだけでなく、とても大きなお産の指標になるため排卵日検査はお勧めです。帝王切開はできるだけ胎児が麻酔で眠ってしまわないよう、特殊な麻酔や筋弛緩剤等を使用しておこないます。生まれたての赤ちゃんは、何とも言えず可愛いですね。  S.S

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