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中耳炎

14年12月28日

犬では耳の疾患はとても多く、なかでも外耳炎は日常茶飯事に認められる疾患である。中耳炎はあまり多くないと思われるが、慢性外耳炎の半数近くにおいて併発しているという報告がある。中耳は外耳と違い診断しにくいことが少ないと思われる原因の一つであろう。
中耳炎は文字通り中耳の炎症であるが、その病態からヒトでは①滲出性中耳炎②急性中耳炎③慢性化膿性中耳炎④真珠腫性中耳炎等に分類されている。犬ではキャバリアで、時に、頸部椎間板疾患のような頭頸部痛が引き起こされることが知られている。犬では中耳炎は外耳炎から波及するのが一般的であると考えられ、ヒトのように耳管がその発生に関与している可能性は低いと考えられている。
中耳炎の臨床症状としては①悪臭のある多量の分泌液の排出②頭部を激しく振る③耳道の圧痛④開口痛等を示すことがあり、⑤顔面神経麻痺の症状がみられることもある。飼い主は聴覚異常を訴えるケースもある。慢性再発性の外耳炎の既往歴を有することが多く。この場合には外耳炎の症状が認められる。内耳炎を併発している場合には罹患側への斜頚、水平眼振等の中耳炎に起因する症状が認められる。
中耳炎の診断には、耳鏡検査や画像検査が必要になってくる。
中耳の評価には画像診断、特にCTやMRIが有用である、中耳の初期病変はX線上での変化が少ないので十分な評価はできないが、診断の第一歩として重要である。CTでは中耳の骨の状態評価及び鼓室胞内の軟部組織陰影の描出に有用であり、MRIは軟部組織や鼓室胞内の占拠物質の評価や内耳炎症状がある時に有用である。
当院では2月下旬より新病院への移転と同時にCTが導入されるので上記のような症状が認められるような場合はCT検査を是非ご利用下さい。 D.T

猫伝染性貧血(ヘモバルトネラ症)

14年12月21日

Mycoplasma haemofelis(Haemobartonella felis)が赤血球に寄生することにより起こる溶血性貧血である。病原体はダニやノミ、喧嘩による受傷により媒介されると考えられている。
本症は病原体の単独感染で重症が現れることは少なく、すでに感染している動物が、脾摘、免疫抑制剤の使用、ストレスなどにより症状を発現することが多い。主な症状は低体温、元気消失、食欲不振、呼吸速迫などが見られることが多い。
診断は血液塗抹標本での赤血球内の病原体の検索、PCR法による遺伝子診断が行われる。
治療はテトラサイクリンおよびドキシサイクリンが効果を示す。また、貧血が重度の場合は輸血も同時に行う必要がある。

D.T

角膜内皮ジストロフィ

14年12月14日

角膜内皮ジストロフィは突発性の進行性角膜浮腫がみられ、角膜内皮細胞の異常により発生します。好発犬種は、ボストン・テリア、チワワ、ダックスフンドで、発症年齢は5~13歳といわれています。角膜の中央または外側から混濁が発生し、角膜浮腫が顕著になると水疱を形成し、結膜の充血を伴います。角膜の中心から混濁は徐々に進行し、数か月~数年で角膜全域に混濁が拡大します。
角膜内皮細胞は、成長期以降再生しない細胞であるため、完全な治療を行うには、角膜の同種全層移植が必要となりますが、生きた組織を扱うため、移植組織の入手、保存方法などを考えると現状では根治的治療は困難です。そのため、角膜浮腫に対する対症療法として、浮腫を引かせるための輸入塩眼軟膏、角膜潰瘍を形成した場合には、テトラサイクリン眼軟膏やヒアルロン酸点眼液を用います。
H.B.

犬の毛、毛周期

14年12月07日

 犬の毛の土台となっているのは、毛包で表皮が真皮内に陥没して生じています。一つの毛穴から複数の毛が出ることとを複数毛包といいます。複合毛包は、中心にある一本の主毛(一次毛) 4本以内の中間毛、15本から20本の副毛(二次毛)で構成されています。犬の背中の毛は、硬く、つやのある毛並で、お腹の方の毛は、軟らかい毛なのはこの複合毛の割合が異なるためです。寒い時に毛が立ちますが、興味深いことに毛を立たす立毛筋は主毛にはついてて、副毛にはついていません。二次毛は体温維持のアンダーコートとして働きます。中間毛は、ヨークシャテリアなどの犬種ではない場合があります。 また犬の種類によって一次毛と二次毛の比率が異なり、プードルは二次毛が80%も占めるそうです。通常犬は、夏の日照時間が長くなると二次毛の脱落が進んで、二次毛が疎になり、逆に冬になると二次毛の伸長が進んで豊富になり断熱効果が高まります。
また毛の色は、毛球における色素細胞によって決められます。 産生される色素は、黒褐色の色素と黄赤色の色素の2種類でその比率で色が決定されます。
毛は、毛根の状態で、毛が伸長している成長期から、成長が止まって、毛が抜けるまでの間の退行期、休止期を経て脱毛していきます。 この脱毛は、同時期に起こらずモザイク状に起こるので、正常な犬では毛が薄くなったり、いわゆるハゲの状態にはなりません。
 犬の脱毛症は、この脱毛のサイクルがおかしくなったり、また毛軸が異常で抜けるのではなく折れて薄くなることがあります。先天的なものから、実は体の中のホルモン病であったりと原因は様々です。とくにホルモン病は、毛の異常から発見されることもあります。 病気によっては、残念ながら劇的に改善できないこともありますが、気になることがありましたら、ご相談ください。
                                       M.N