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最近のエントリー

肩関節不安定症

15年08月31日

肩関節不安定症は内側および外側の肩甲上腕靭帯や肩甲下筋靭帯への軽い慢性外傷(すべりやすい床など)に起因するとされ、負重性の跛行や肩関節を外転させたときの角度が正常より大きくなります。様々な年齢や犬種でみられ、一般的なレントゲン検査よりも関節鏡検査が有用です。治療に関して外科的療法として関節鏡や関節切開術を行うことがありますが、主にはまず運動制限と理学療法での治療を行います。痛みが落ち着くまでは鎮痛剤と安静、場合によっては固定を行い、徐々に肩関節の周囲の筋肉の増強と関節の可動域を保つためのリハビリテーションを行います。変形性関節症などの併発などによって予後はさまざまですが、根気よくリハビリテーションしていくことが重要になります。

K.Y

気管支拡張症

15年08月23日

 気管支拡張症とは、気管支が嚢胞状、円柱状に不可逆的な拡張を起こす疾患であり、犬および猫では珍しい病気とされています。レントゲン所見より播種性気管支拡張症と限局性気管支拡張症に分けられます。

 播種性気管支拡張症は感染症炎症性肺疾患、アレルギー性気管支炎、好酸球浸潤などの合併症が原因とされています。

 限局性気管支拡張症は管腔ない異物による局所性の刺激・閉塞、壁外の気管支腫瘍、気管支周囲の肺組織の瘢痕形成から生じる内腔の狭窄などが原因とされています。

 症状は吐き気様動作、喀痰、運動時の呼吸困難などがみられます。

 治療法は抗菌薬、去痰剤、気管支拡張薬、ステロイドの投与があります。ただし、咳を完全に消失させることは困難であり、症状の進行を止めることが目的とされています。

D.T

原発性上皮小体機能亢進症

15年08月16日

原発性上皮小体機能亢進症

原発性上皮小体機能亢進症は中高齢以上で見られる疾患で、原因として過形成、上皮小体腺腫、上皮小体の癌が挙げられます。

上皮小体は上皮小体ホルモン(PTH)を分泌する組織で、甲状腺内あるいは甲状腺の近傍に存在し、副甲状腺とも呼ばれます。PTHはカルシトニンやビタミンDと相互に作用してカルシウム、リン酸、マグネシウムの恒常性の維持を担っており、血中のカルシウム濃度が高いときは低用量で骨形成を増加させ、逆に低いときには高容量では骨再吸収を増加させると同時に腎臓でのカルシウムの再吸収を骨再吸収に一緒に吸収されるリンの排泄の増加を促します。

原発性上昇体機能亢進症では機能性の細胞が増えていくことによってこのPHTの分泌が過剰になり、高カルシウム血症、骨吸収、カルシウム腎症が生じます。多くの症例では高カルシウム血症性腎症により多飲多尿状態になります。他の症状としては骨折や、便秘や食欲不振。腎結石、筋力の低下が見られます。

診断としては高カルシウム血症が見られる場合で原発性上皮小体機能亢進症を疑いますが、高カルシウム血症は他に腎臓病や、腫瘍からの上皮小体関連タンパク(PTHrP)の分泌によっても見られその鑑別診断が必要となります。腎臓病での高カルシウム血症は血液のリン濃度が上昇することによって血中のカルシウムイオンとリンが結合し、遊離カルシウムイオンが減少することによってPTH分泌が増加します。この結果、高カルシウム高リン血症となります。原発性上皮小体機能亢進症ではPTHが過剰分泌されることによってカルシウムの再吸収とリンの排泄が促進されるため高カルシウム低リン血症になることで鑑別が可能です。また、腫瘍による高カルシウム血症は腫瘍からのPTHrPにより生じるのでPTH自体は増加しないため、PTHの測定により鑑別が可能です。

治療は外科的手術が第一選択になります。摘出後過形成、腺腫、癌の鑑別は病理組織検査を行わなければ鑑別は不可能ですが、癌であった場合でも転移の確率は低く予後は術後の血中カルシウム濃度管理をしっかりと行えば予後はほとんどの症例で良好となります。

S.A

慢性腎不全における高リン血症の管理

15年08月09日

生体内のリンは主に腎糸球体濾過を介して排泄されるため、糸球体機能の低下に伴い、血清リン濃度は上昇します。この上昇が慢性的になると腎性二次性上皮小体機能亢進症が発生し、軟部組織への石灰沈着を促進させます。腎臓の石灰化は間質の炎症や線維化を引き起こし、さらに腎機能を低下させてしまいます。

最近の研究では、猫ではリンが1mg/dl上昇する事に死亡リスクは11.8%上昇することや、高リン血症がみられる猫の腎臓病は、そうでない猫よりも進行が速いなど、高リン血症は慢性腎臓病の猫の生命予後と相互に関連することが報告されています。

高リン血症に対して積極的にアプローチすることにより、動物の予後を改善し、慢性腎不全の進行を遅らせることが期待できます。食事中のリンの制限は高リン血症の管理に有効なことは既に多く報告されていますが、食事療法のみでは高リン血症は適切に管理できない場合もあり、このような症例ではさらに水酸化アルミニウムや沈降炭酸カルシウムといったリンの吸着剤の内服が適用されます。

H.B.

ネコの注射部位肉腫

15年08月02日

 ネコの注射部位肉腫とは、薬剤を接種した部位付近に悪性の腫瘍が形成される疾患です。これまでに注射部位肉腫と関連があるものとして狂犬病ワクチン、猫白血病ワクチン、FVRCP±Cワクチン、長期作用型ペニシリン、メチルプレドニゾロンなどが報告されています。これらの薬剤と肉腫の発生についてのメカニズムは明確には解明されていませんが、ワクチンについては混合されているアジュバントが、その他の薬剤については薬剤自体が注射部位に慢性炎症を引き起こし、その結果腫瘍が形成されると考えられています。
ネコの注射部位肉腫は非常に局所浸潤が強く、病理検査にて完全切除と診断された場合でも数ヵ月後に再発することもあります。また遠隔転移も10~24%起こるとされています。
 治療は、外科手術が第一選択となりますが、局所浸潤が非常に強い腫瘍であるため、腫瘍の大きさや浸潤度合を、CT検査やMRI検査にて術前に把握することが非常に重要となります。また、前述の通り、完全切除と判断された場合でも再発率が高い腫瘍であるため、術後に抗癌剤による化学療法や放射線治療が用いられることが推奨されます。また、最新の治療として、IL-2遺伝子を導入したカナリア痘ウイルスベクターを腫瘍を切除した付近に注射し、抗腫瘍免疫応答を促す方法が行われています。