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最近のエントリー

心臓病患者の栄養管理

21年09月25日

 近年は犬の高齢化に伴い慢性疾患が増えており、特に小型犬では僧帽弁閉鎖不全症が多く、当院でも多くのワンちゃんがお薬を飲んでいます。心臓病では痩せているほうが良いと思われている飼い主さんも多いのですが、それは間違いです。どの病気にも言えることですが、痩せていると体調が悪く、体格が良いと一般状態も良好と判断することができます。

・体格の目安

 悪液質とは病気のせいで体重、特に筋肉量が減り、代謝不全や免疫機能が低下する状態です。心臓病ではステージCの54%が悪液質と言われ、生存期間の短縮につながってしまう悪い状況です。体格はボディ・コンディション・スコア(BCS)と言われる評価法を用いて評価します。肋骨が触って分かるか、腰のくびれがあるかなどで評価する方法で、これを記録して変化が見られれば原因を調べていきます。

・必要カロリー

 目安となるカロリーは体重1kgあたり60kcalと言われています。これは現在の体重ではなく、理想体重における目安です。食事を温めたり、ウェットフードを混ぜたり、色んな種類のものをローテーションを与えることで適切なカロリー摂取を目指していきます。

・栄養素

 人でも心臓病の方は塩分制限つまりナトリウム制限を行いますが、ワンちゃんでは進行した心不全の患者においては低ナトリウム食がすすめられています。人の食べ物はワンちゃんにとってはとても塩分が強く、健康な子であっても控えるようにしましょう。心臓病療法食をご提案する場合もあります。また重度な慢性腎臓病を患っている場合を除き、十分なタンパク摂取もすすめられています。

 近年では魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったω3脂肪酸が心臓病の食欲不振や悪液質、不整脈を改善したとの報告もあり、サプリメントとして与えることも有意義です。

 高齢犬であるからこそ、心臓病以外にも慢性腎臓病や膵炎、腫瘍などを併発している子も少なくありません。その子に合った食事内容を診察した上でご相談できたらと思っています。

T.S.

sinzou.JPG

心臓病の犬は太らせた方が良い?!

21年09月20日

2001年にヒトの心不全患者を対象にした大規模研究がありました。

心不全患者を低体重、理想体重、高体重、肥満の4群に分けて死亡率を調査した結果、理想体重および低体重群の死亡率が、高体重および肥満群と比較して悪かったというものです。

この現象は「Obesity Paradox」と呼ばれ、肥満は心臓病患者にとってリスクであるという従来の考えを覆す可能性が出てきました。

イヌにおいても心不全犬の追跡調査が行われ、脂肪細胞からの分泌物質が予後を左右しているという説もあります。

しかし、一般的に肥満は心不全以外に呼吸器、内分泌、運動器、尿路疾患などのリスク因子であるため、適正体重を目指した方が安全かと思われます。

H.F

褥瘡について

21年09月02日

ワンちゃんは高齢、腫瘍、起立困難となるような神経疾患、その他全身性疾患が原因で起立不能になると、人と同様体表に褥瘡(いわゆる床ずれ)が生じることがあります。一般的に、褥瘡は寝たきりによって、持続的に体表の一部に体重がかかることによって骨と皮膚ひぃ表層の軟部組織への血行障害が生じ、皮膚が変色、損傷し、場合によっては筋肉や骨組織にまで達する事もあります。出来やすい部位は肩、腰(後肢あたりの骨が出っぱているところ)です。褥瘡は、感染とそれに伴う滲出液、そして疼痛を伴う為、動物達のQOLを著しく下げてしまう疾患ですので、もし動物たちが寝たきりになった場合は、褥瘡も気をつけながら管理していく必要があります。

現在の獣医学領域では褥瘡の予防方法や治療方法が明確に確立されているわけではないが、その部位での感染のコントロール、患部をなるべく湿潤に保つ、体圧分散が基本となります。感染のコントロールについては抗生剤を使用し、患部を湿潤に保つためには、ドレッシング剤を貼付、その他軟膏を塗布する場合もあります。自宅での管理がメインになるので、最も重要なのは、"体圧分散"になります。この場合、褥瘡部位に圧力がかからないように、ドーナツ状のクッションを引いたり、低反発マットレスを引くことで圧力が全身に分散させて負重を軽減するようにします。ただし、圧の調節だけでなく通気性や摩擦力も因子として関わってくる為個体によって最適条件を考慮しながら見ていく必要があります。ある報告では、体重が重い個体において低反発マットレスでも圧のコントロールがうまくいかなかったので、エアマットレスを使用すると良くなったとあります。エアマットレスは内部が空気なので、底つきを起こさないので、体重が重いワンちゃんに関してはエアマットレスを考慮すべきだと考えられます。逆にドーナツ状のクッションは穴のあいた部位の体圧は軽減されるが、周辺部への圧負荷が大きくなるので使用は慎重に検討すべきとかんがえられます。

このように褥瘡はそのグレード、部位、個体によって対応を考慮する必要があるので、

まずは動物病院を受診し、相談した上で管理していくことをオススメします。

RI