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最近のエントリー

陸ガメの鼻水にご注意

17年02月26日

鼻水症候群(Runny Nose Syndrome)は陸ガメに好発する病気の一つで、主症状は鼻汁であり片側または両側に起きます。重度の場合は元気消失、食欲不振を伴います。

鼻水症候群の原因は様々であり、伝染性のものもあるため、この病気にかかったカメはすべて隔離する必要があります。隔離したカメの周囲の気温は常に暖かくして換気も充分にする必要があります。また、鼻水症候群は屋内飼育場やビバリウムにおける、環境管理の不手際におけるストレスが原因ともいわれています。その他、砂塵、ハウスダスト、干し草、食べ物のカスなどの異物が鼻孔から入った場合や、ビタミンAの不足によっても起こりえます。

治療法は抗生剤の全身投与、点鼻薬による投与鼻孔の洗浄、ビタミンA補強により状態の改善がみとめられます。

生活環境を適切に保つことはストレスや異物による発症の可能性を低減させることが出来るので、可能な限り衛生的な環境を保ってあげましょう。

D.T

セキセイインコのマクロラブダス症

17年02月19日

 マクロラブダスは酵母の一種であるMacrorhabdusornithogasterの事を指し、同定以前はその見た目から、メガバクテリアと呼ばれていました。日本ではセキセイインコ、コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、キンカチョウ、マメルリハインコで感染報告されています。症状としては無症状のものから、マクロラブダスが胃、とくに前胃と砂嚢の接合部である中間体周囲に感染することで重度の胃障害が引き起こされ、嘔吐などの胃炎症状や、食事量は低下していないにもかかわらず、消化不良による慢性的な削痩がみられます。主に親鳥が給餌する際、マクロラブダスを含んだ餌を吐き戻してヒナに与えることに因って感染が起こっていると考えられていて、鳥同士での糞食や求愛性給餌によっても感染が起こり得ますが、一般家庭の環境中からの感染は認められていません。

 マクロラブダスは他の菌と比較して非常に大きく、糞便検査で容易に検出する事かが可能です。ただし、検出できなかったとしても感染を否定することはできません。治療は抗真菌薬で行うが、胃炎症状・消化不良への対処に関しても同時に行うことが重要になります。

.A

うさぎの尿石症

17年02月12日

うさぎはその尿の性質において犬・猫とは大きく異なります。うさぎは血中のカルシウムの濃度が高く、カルシウム代謝は腎臓で行われ、尿中にカルシウムが含有されるため尿は白濁します。またうさぎの尿はアルカリ尿が正常であり、カルシウム結晶がつくられやすく、常に尿の色調は黄色白濁~やや濁った茶褐色となります。この高い血中カルシウム濃度と特殊なカルシウム代謝経路により「泌尿器の結石」の生成率が比較的高いといわれています。

確定診断にはX線検査や超音波検査などの画像診断が有効で、血液検査・生化学検査によって腎機能の評価を併せて行うことで今後の治療方針の決定につながります。ストラバイトを主成分とする犬・猫の結石とは成分が異なるため、溶解させることは非常に困難なケースが多く、結石の位置や大きさにもよりますが、基本的に可能であれば外科的摘出がもっともよい治療法とされています。

また、尿中のカルシウム結晶はスラッジとよばれる泥状~砂利状の沈殿物を膀胱などに形成することがあり、このスラッジにより尿道閉塞や血尿を伴う慢性膀胱炎を呈することもあります。尿道カテーテルの挿入により膀胱洗浄を行うことが推奨されますが、1回の洗浄で完治することは少なく、外部からの膀胱内感染のリスクに注意しながら複数回の洗浄を必要とするケースも多いです。日常の食餌管理も重要です。灰分〇%以上といった表示があるようなカルシウム含有量の多いラビットフードは避けるべきで、チモシー牧草、チモシーペレットを中心にして、生野菜の給餌も方法の一つです。また泌尿器に対するサプリメントも症状改善の一助となる場合もあります。

結石やスラッジが膀胱の出口や尿道を閉塞した症例では排尿困難や努力性排尿、肉眼的血尿がみられることがありますが、それらの症状がみられなくても、著しい疼痛による食欲低下や元気消失などの症状や、トイレ以外での排尿や尿による陰部の汚れなどの問題も結石症例ではみられることがあるので、異変を感じられた場合はぜひご相談ください。

H.B.

僧帽弁閉鎖不全症の外科的治療

17年02月05日

 僧帽弁閉鎖不全症は、高齢の小型犬に最もよく認められる心臓疾患です。原因としては、弁膜の肥厚(粘液腫様変性)や弁を支える腱索の断裂が挙げられ、これらの弁輪装置の構造異常が血液の逆流を引き起こします。治療には内科的療法と外科的療法がありますが、現在のところ内科的療法が一般的です。しかし前述の通り、僧帽弁閉鎖不全症は弁輪装置の構造異常により引き起こされるものですので、内科的療法はあくまで病態の進行を緩やかにするための対症療法であると言わざるを得ません。一方、外科的療法は弁輪装置の構造異常を改善するため、根治を目的とした治療法となります。外科的療法には大きく分けて僧帽弁形成術と弁置換術がありますが、現在は僧帽弁形成術が外科的療法の主体となっています。

 僧帽弁形成術は、切れた腱索の代わりに縫合糸で心筋と弁を縫合する腱索再建術と、広がってしまった弁輪を弁同士が合うように縫い縮める弁輪縫縮術から成る術式で、医学においては、弁置換術に比較すると手術死亡率、左室機能の回復、術後合併症の発現率、長期予後などの点で優れるとされています。費用が高額なことと、心臓を一旦停止させて手術を行うため人工心肺装置が必須であり、術式も複雑であるため限られた診療施設でしか実施できないという欠点がありますが、比較的若齢で発症した場合や、進行が早く内科療法では維持が出来ない場合においては、僧帽弁形成術を実施することで、長期生存やQOLの改善が期待できます。

 当院においても日本大学の菅野信之先生、埼玉の動物循環器・胸部外科センター、葉月会と協力し、僧帽弁形成術を推奨しています。僧帽弁閉鎖不全症で悩まれている方は、一度当院までご相談ください。 

T.H.