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最近のエントリー

葉月会 第13回犬の臨床病理シリーズ

19年10月23日

血液化学検査 内分泌編(アジソン病)

米国獣医病理学専門医 アイデックスラボラトリーズ株式会社 小笠原犬猫病院

小笠原 聖悟先生

今回の講演では前回、クッシング症候群・アジソン病の血液検査における変動とその理由に関してお話しいただいたことをしっかりと復習させていただきました。

実際の症例の血液検査の結果を用いて、どんな異常があるのか・そこにどんな意味があるのかを質問形式で受講者が答えていき、それに関して再度詳しくあるいは+αして説明いただく。といったいつもとは異なる形式での講演で、ちょっと抜けてしまったところをしっかりと根付かせていけたかと思います。

アジソン病はクッシング症候群と比べて症例数の多い病気ではありません。しかしながら一生涯にわたって付き合っていかなければならないという点で一致しており、飼い主様へのインフォームドコンセントがとても重要な疾患です。診断自体はつきやすいものの、その疾患によって今どういう状態なのか、また今後どういう状態が引き起こされる可能性があるかに関して今回の講演を通してさらに理解されやすいお話ができるようにしていきたいと思います。

S.A

10月14日JAHA年次大会2019

19年10月22日

東京大学でJAHA年次大会が行われました。残念ながら10/13は台風のため中止になりましたが、14日はなんとか無事行われました。年次大会の委員の方々には感謝いたします。JAHA流ラウンドに参加しました。猫の救急:循環器科、歯科の救急を聞きましたがなかなか興味深い知見が多く役に立ちました。子猫が感電し火傷を口腔内に負った症例は、骨壊死までおこしとても印象に残りました。猫ちゃんわんちゃん達コードをかじらないでね。認定医を目指すための症例発表会で当院も「猫の甲状腺機能亢進症における上皮小体の位置と手術法」62症例の発表をいたしました。まだまだ手術をされる病院がすくなく発表後質問を多くいただきました。残念ながら1日は中止になりましたが年次大会に参加できてよかったと思います

S.S

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生肉食フードについて

19年10月15日

最近のScience誌の記事で、生肉フードの危険性について取り上げられました。タイトルは Want to put dog on a raw meat diet? It could be dengerous for both of you 、わんちゃんに生肉フードを与えるの? わんちゃんもあなたも危険にさらされるで、とのことですが

内容としては、生肉ペットフードを調べると、規制を超える菌量が確認され、63%で薬剤抵抗性を持った菌が確認された、サルモネラが4%で見つかったことなどが報告などが挙げられています。2005年にもアメリカでサルモネラ感染症と不適切な生肉フードの関連が報告され、適切に調理されていない、人間の消費に適さないと判断された肉が用いられていることが原因ではないか、と言われていました。

特に、問題は薬剤耐性を持った菌です。わんちゃんもそうですが、そのフードを触ったオーナーがそのまま接種することで大きな問題になることは想定されます。家族に小さい子供や老人、免疫力の低下している人が含まれる場合はなおさらです。

日本で通常販売されているフードではあまり関係のない記事かもしれません。しかし、今は個人で外国製のフードもインターネットで比較的容易に手に入るようになりました。もちろんすべての生肉フードが不適切である、という報告ではありませんが、わんちゃんの健康はもちろん、オーナーさんの健康もたいへん大事なことですので、紹介させていただきました。避けられるリスクは避けた方が良いでしょう。

M.K

一緒に暮らす愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断されたら 

19年10月10日

どんな病気?

僧帽弁閉鎖不全症は犬の代表的な心臓病で、特に8歳齢を過ぎた小型犬で多発傾向が多い心疾患である。僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁に粘液腫様変性という病変が生じることで、心臓の弁が上手く閉まらなくなってしまう疾患です。なぜ中年期以降の小型犬の僧帽弁にこの病変が好発するかは不明です。

僧帽弁逆流の悪化に伴い運動不耐性、疲れやすいなどの症状が出てくるが、徐々に進行する症状であるため、気づきにくい変化です。散歩時の様子は当然の事、自宅内や院内の様子も重要で、若いころしていた・できていたことのうち、最近しなくなったことを注意深く観察することは重要です。

さらに僧帽弁逆流が悪化すると、心臓が拡大してくることで気管や気管支を圧迫して頑固な咳が出てくるので、咳がなかなか治まらない場合は要注意です。

一緒に暮らすときの注意点は?  

1.塩分摂取量を抑える

塩分(正確にはナトリウム)の過剰摂取は血圧を上昇させ、心臓にも負担をかけることは一般常識である。「大した塩分量ではない」と思っても、小さな犬には過剰摂取であることが多く、実際に過剰摂取が原因で心原性肺水腫を発症した症例も多いため注意が必要である。

2.体重を落とさない

「脂肪(または肥満)」は心臓の負担になるから、心臓病の犬は減量すべき」という考え方は過去の事である。僧帽弁閉鎖不全症と診断されてから体重が増加した、低下した、不変だった犬の生存期間を解析した研究では、体重が増加した犬の生存期間が最も良好だった。この詳細な機序は不明だが、体重を低下させる際に、脂肪だけでなくたんぱく質も失われることが原因ではないかと考えられている。やや大げさに表現すれば、心臓病の犬がダイエットするということは、心筋にもダイエットを強いることになる。

3.たんぱく質の摂取を心がける

主にたんぱく質で構成されている心筋組織を栄養面でサポートするためには、十分な量のたんぱく質を摂取させることが好ましい。現状では、この「十分な量」が1日当たり何グラムなのかまでは調査されていないため、フードに何かをトッピングする際にはたんぱく質を優先して選べばよいだろう。

4.散歩に出かける

僧帽弁閉鎖不全症の重症度は無関係に、犬が散歩に行きたいアピールをするなら、できるだけ散歩に連れていた方が良いという考え方が広がってきている。その根拠は、①散歩が僧帽弁閉鎖不全症に有害であることは知られていないこと、②欧米の獣医心臓専門医は皆、散歩を推奨していること、③散歩は全身循環を改善し、排便を促す作用があり、同時に空腹感を刺激し、体重減少に抑制的に作用すると考えられること、そして④家族と犬の良好な関係を維持する上で重要と考えられること、などがある。家族の方がゆっくり歩くスピードに犬が小走りでついていく程度のスピードが理想で、時間は30分でも1時間でも構わないが、犬が散歩の意欲を示さない時は止めておきましょう。

5.犬糸状虫症を予防する

たとえ僧帽弁閉鎖不全症そのものは軽度であっても、犬糸状虫症に感染して心臓に新たな負荷が生じれば、心臓病は急速に進行する可能性が高まる。確実に予防すべきである。

6.自宅での安静時呼吸数を数える

これはきわめて重要で、犬の自宅での安静時呼吸数は体格や年齢に関わらず、40回/分を越えないことに加え、僧帽弁閉鎖不全症の犬では、この数値を上回った場合、非常に高い確率で肺水腫であることがこれまでの研究で明らかになっている。

僧帽弁閉鎖不全症は、食生活に関わらず、老化現象が心臓に出たようなもので、長生きしたからこそかかってしまう病気です。いままで書いてきた注意点に気を付けて、愛犬によく声をかけてほめるようにしてあげてください。家族が愛犬に話しかけたり、ほめることは犬の体調に良い影響を及ぼすはずです。そう信じましょう。

Y.N.

18歳で甲状腺機能亢進症の手術をうけられた猫ちゃんの経過

19年10月06日

5月末に甲状腺機能亢進症の18歳の猫の女の子がやってきました。薬を内服させるのですが頭や首に痒みの副作用で続けることができないのでなんとかなりませんかと遠方より来られました。甲状腺のホルモンT4値は8.0ug/dl以上あり2.92㎏と痩せています。高血圧のため網膜剥離を起こし眼は見えません。もともと250以上あった血圧は、血圧降下剤Caチャンネルブロッカーを内服していますが血圧も229あります。心拍数も抑えるお薬を内服しているものの253回/分と頻拍です。なんとか甲状腺ホルモンをコントロールしたうえで6月末に手術をさせていただきました。2週間後の検査では内服はやめた状態で心拍数は168回/分、血圧は200となり、体重は3.34㎏となっていました。9月末現在は、ACE-Iの内服のみですが心拍数、血圧も安定し、体重は4.50㎏になっています。腎機能は濃縮能力は低下しておりますが腎臓病用処方食で対処していただいております。ちょっと太り過ぎになってきましたので気を付けていただくようにお伝えしました。実はこの猫ちゃんの飼い主様より「うちの子のような猫ちゃんがいたら救ってあげたい。みんなに教えてあげたい」という申し出がありましてブログにあげさせていただきました。どうもありがとうございます。体重の増えた写真もとらせていただきました。もう痩せこけた姿はなくかわいくなっていますね。 

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SS