予防、病気、しつけ、行動学など、飼い主の皆様に役立つ情報などをコラム形式でご紹介。ぜひご覧ください。
猫の肥大型心筋症に伴う大動脈血栓栓塞症は緊急性を伴う病気です。症状は閉塞する場所によって様々ですが、鞍状血栓症が最も多く突然両後肢が動かなくなり痛みのためかほとんどの症例で大きな声でニャアニャア鳴き続けるます。治療は内科療法や外科療法での血栓の摘出があります。治療法に関しては、うっ血性心不全や肺水腫、低体温、DIC,不整脈のため手術をしても予後が不良ではないかという考え方から血栓溶解療法を指示する考え方もあります。しかし内科療法では、残念ながら死亡率は2/3と高く、後肢が壊死してしまう可能性もあるため安易にお勧めできません。心臓の中に血栓がある場合摘出してもすぐ再血栓を起す場合があるため要注意ですが、早期の摘出により経過が良好なケースが多くあります。症例によって判断が必要ですが当院でいままで行った手術の経過は9割が順調に退院しており、長いものでは6年以上も生存してくれた猫ちゃんもいます。再灌流症候群のこともありできるだけ早期の治療が必要です。写真の血栓は、先日診察にこられ緊急で摘出した大動脈血栓です。無事退院してくれました。もし後肢が動かなくなりニャアニャア鳴き始めたら大動脈血栓栓塞症を疑いできるだけ早い診察をお勧めいたします。 S.S
ネコちゃんにおける代表的な病気として「慢性腎臓病」があることは知っている方も多いと思います。その腎臓病によって生じる貧血、いわゆる腎性貧血という病態があるということをご存知でしょうか?
腎臓は尿を生成し老廃物を体外に排出するだけでなく、たくさんの機能を有する臓器です。そのひとつとして、造血機能の促進があります。腎臓の間質で生成される「エリスロポエチン」というホルモンは、赤血球の前駆細胞に働きかけ赤血球の産生を促します。慢性腎臓病が進行すると、エリスロポエチンの産生が不十分となり、貧血を起こす場合があります(腎性貧血)。
腎性貧血になると、全身に十分な酸素を送れず、歯茎や目の粘膜が青白くなることもあります。また、赤血球は酸素を運んで体温を維持する働きがあるので、腎性貧血になると体温が下がって冷えやすくなります。結果として、ネコちゃんは元気がなく動かなくなり、食欲が落ちて痩せてくる可能性があります。これらの症状は慢性腎臓病の症状だと勘違いする方も多いため、当院では定期的な血液検査で腎機能をチェックするとともに、貧血が進行していないかも確認しています。
腎性貧血の治療としては鉄分の補給とともに、不足している「エリスロポエチン」のホルモン剤を使うことで貧血の進行を防ぎ、症状を和らげることができる可能性があります。これまで、犬猫用のエリスロポエチン製剤は開発されておらず、ヒト用のものを代用して治療を行っていましたが、先日『エポベット』という猫のエリスロポエチン製剤が世界初で承認されました。エポベットは2週間間隔で注射をすることが推奨されており、これまでのヒト用製剤と比較して投与間隔が長いことが特徴・メリットです。これまでの研究では、エポベットを2週間間隔で6回皮下注射することで8割以上の猫ちゃんで貧血の改善が認められたとの報告もあり、今後腎性貧血で悩む猫ちゃんの新たな治療薬として使用されることが期待されます。
D.N.
愛犬のために正しい熱中症対策が出来ていますか?人間だけでなく、犬や猫も熱中症になります。犬や猫が熱中症になると人と同じように、息苦しそうに呼吸をしたり(パンティン)、ふらつき、よだれ(流涎)、場合によっては嘔吐や下痢、さらに悪化すると筋肉の震えや痙攣が起こり、意識が無くなります。
私たち人間は快適な場所を見つけて自由に暑さをしのぐことができますが、行動範囲が限られている飼い犬ではそれがなかなかできない場合があります。愛犬が熱中症にならないようにするためにも、愛犬の立場になって過ごしやすい環境づくりを心がけましょう。
・どんな犬が熱中症になりやすいか
特に短頭種、シニア期、肥満の子は注意が必要です
短頭種とはフレンチブルドッグやパグ、シーズー、ペキニーズなどの鼻(マズル)の短い種類を指しており、鼻が短く、口腔の面積が狭い為、唾液を気化して熱を逃がすのが苦手です。あとは気管の入り口が反転していたり、呼吸が苦しい子が多いので、熱中症のリスクが他の犬種に比べてはるかに高くなります。
シニア期では体温調節機能の低下により暑さ調節が上手くいなかったり、肥満の子は体内に熱がこもりやすく、首のまわりの脂肪によって呼吸機能が低下するため、呼吸による体温調節が上手くいかなくなります。なのでこれらの体温調節が上手くいかないワンちゃんには冷房器具の活用や、直射日光の遮断、風通しの工夫が必要です。
・犬が熱中症にならないためには温度に気を付ける
犬にとって快適な温度は、一般的に20~22℃と言われていますが、犬種や健康状態によっても変わってきます。推奨されている部屋の温度は25℃前後で湿度は50~60%くらいです。
まずは25℃になるように調節して、それでも舌を出して呼吸していたり、冷たい床の上で腹ばいになっている等、暑そうな場合には愛犬にとって快適と思える温度まで下げてあげましょう。
・通気性をよくする
窓やドアを締め切った真夏の部屋はまるでサウナの様になることもあるので、換気扇を回したり、網戸にしたり、可能な限りで風の通り道を作ってあげましょう。
・クーラーだけでなく扇風機や冷風機を使用する
クーラーで室内が冷えすぎて心配という場合には扇風機や冷風機を活用しましょう、使用する際には風が直接愛犬の体に当たらないようにすることが大切です。特にお腹の毛が薄い犬ほど、ty苦節風が当たると身体が冷えやすくなります。
・ひんやりグッズを利用する
クールジェルが入ったマット、い草を使ったマット、ひんやり感があるマットやベッド、クールバンダナなど最近はホームセンターでも手ごろな値段で購入で決ます。
クールバンダナで首元を冷やす際には、首の後ろではなく前を冷やすことがポイントです。首の前には太い頸動脈が走っているので、この頸動脈を冷やすことで体温を冷やす効果が期待できます。
・カーテンを閉めて直射日光を防ぐ
日光が直接入ってくる窓のカーテンを閉めておくことで、室内の温度の上昇をかなり抑えられます。カーテンを閉めると暗くなってしまって嫌だという場合には、外にすだれやサンシェードを利用するといいでしょう。
・水を数か所に置いておく
愛犬が水分をこまめに補給できるように、数か所に新鮮な水を置いておきましょう
・散歩は早朝か夜にする
涼しい朝の時間帯(5~6時)または完全に日が沈んだ夜に散歩するようにしましょう。17時や187時でもアスファルトが熱を持っている可能性があるので注意が必要です。
「夏は危険!」でも夏以外は熱中症気にしていますか?
夏だけでなく、春に温かくなってきたころ、暖房も要らなくなり部屋を閉め切っていたりしても熱中症をおこすこともあります、また梅雨明けしたころも人間だけでなく、犬や猫も熱中症になりやすいです。また犬を車内に置いておくと年中いつでも熱中症になるリスクがあります。エンジンを切った状態で車内に愛犬を置いておくことはかなり危険です。注意しましょう。
・熱中症かなと思ったら
まず涼しい場所に移動しましょう。外であれば日陰や風通しの良い場所に連れていき、冷たいタオルや水で体温を下げます
冷やす場所は、首、脇の下、後ろ足の付け根になります。愛犬と外に出かけるときは、クーラーボックスに冷たい水が入った霧吹きやペットボトル、濡れたタオルを準備しておくといいですよ。
その後、愛犬に意識があるようであれば、少しでもいいので冷たい水を飲ませて、すぐに動物病院に連れていくようにしましょう。
今年も梅雨が明け暑い時期が続きそうです。犬の熱中症は毎年のように発生しています。
うちの子は大丈夫と油断せずに、熱中症予防の意識をしっかり持ち対策して、今年も夏を乗り切りましょう
Y.N.