診療コラム

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予防、病気、しつけ、行動学など、飼い主の皆様に役立つ情報などをコラム形式でご紹介。ぜひご覧ください。

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内服薬の副作用がでた甲状腺機能亢進症の猫ちゃんの手術 20年10月20日

今回の猫ちゃんは13歳10ヵ月の避妊済みのメス猫ちゃんです。副作用のため血液の白血球がすくなくなり抗甲状腺薬(飲み薬)も使えなくなりました。白血球が少なくなると人間では発熱、全身倦怠感、咽頭痛などが起きると言われています。免疫がおさえられることによる弊害が起きてくるようです。内服量を少なくしましたが残念ながらダメでした。いつもは甲状腺の値を十分抑えたのち手術をするのですが、すこし高い値のまま思い切って手術を行うこととしました。CT検査では左側だけの肥大で悪性の疑いも低く、右側は小さめで、異所性甲状腺も認めず左側甲状腺摘出手術を行いました。上皮小体の温存状態も良好だと思われます。1週間後の検査ではT4は若干低めでありますが良好でまったく治療の必要がなくなりました。反対側の甲状腺が機能亢進症を起こす可能性は残されているものの現段階では内服や検査から解放され高血圧慢性腎不全の進行も抑えることができました。内服薬の副作用のおきる猫ちゃんではそのまま様子を見ておられる方も多いようですが多くの猫ちゃんが短命で終わります。思い切って手術することをお勧めいたします。S.S

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猫の便秘について 20年10月15日

便秘とは、排便回数が低下したり、宿便が長期間停滞し、しぶりを伴う排便困難が認められることを言います。犬にはほとんど便秘はないとされていますが、猫はいろいろな要因から便秘を起こすことがあります。猫の便秘は、器質的便秘もしくは機能的便秘の2種類にわけられます。器質的便秘とは、身体の構造の異常によって便の通過が妨げられることによって発生し、そのほとんどは骨盤狭窄によるものとされていますが、稀に消化管内や骨盤腔内の腫瘍による通過障害なども存在します。機能的便秘には、神経異常や消化管の運動性の低下によるものの他、排便を我慢しすぎたことによって直腸襞の刺激に対する感受性が低下することによるものがあります。秘はその期間が長ければ長いほど、宿便への水分の再吸収が起こる為、さらに排出しづらくなります。ひどくなれば、嘔吐や食欲不振といった消化器症状が認められることもあり、全身状態の悪化にもつながります。治療方法は、直接溜まった宿便を肛門から排出する用手排便、浣腸がメインとなります。それらの処置後、再発防止のために、便を柔らかくするお薬を使用します。骨盤狭窄による器質的便秘の場合には外科手術が適用となることもあります。S.K

様々な疾患に応用される幹細胞療法 20年09月25日

 当院では脂肪幹細胞療法による細胞治療を実施しています。皮下脂肪から幹細胞を取り出して培養・増殖後に、動物に投与します。現在最も使用されている疾患は脊髄疾患、特に椎間板ヘルニアや脊髄梗塞です。神経保護作用や血管新生作用により脊髄機能の向上を計ります。また、幹細胞療法は各種サイトカインの働きにより自己修復力の強化や抗炎症効果を得られるために、様々な疾患への応用がはじまっています。 

 期待される疾患が、自己免疫疾患です。獣医療では様々な自己免疫疾患が存在し、免疫介在性溶血性貧血、慢性腸症などは遭遇する機会の多い疾患です。これら疾患は免疫が暴走して間違って自己の組織や細胞を破壊します。治療の基本はステロイド剤や免疫抑制剤ですが、ときおり治療中の再発や反応せずに死亡する症例が存在します。このような疾患に細胞治療を行うことで、幹細胞のもつ免疫調整作用や抗炎症効果によって改善が得られたり、あるいはステロイドの使用量の減薬できると報告されています。さらに乾性角結膜炎(ドライアイ)も自己免疫疾患であり、点眼薬による従来の治療に反応しない症例において幹細胞の局所注入によって涙液量の回復と症状の改善が報告されています。 

 大事なことは、なんでもかんでも細胞治療というわけではなく、各種疾患へは治療を行ったうえで良好な反応が得られない、難治性の症例に適用することが基本になります。

 また幹細胞療法による細胞治療は期待されてはいますが、まだまだこれから研究が待たれる分野でもあります。作用機序や効果についてだけに注目するのではなく、もちろん安全性が担保されることが絶対条件になると思われます。当院では獣医再生医療学会の定めるガイドラインに則り、動物再生医療実施施設として登録されております。細胞治療についてご興味のある方は当院までご連絡ください。

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↑培養した脂肪幹細胞

T.S.