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最近のエントリー

猫の抗甲状腺剤による痒みの副反応

13年06月24日

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猫の甲状腺機能亢進症においてメチマゾールやチアマゾールの内服薬で皮膚に痒みの副反応が出ることがあります。写真は16歳の猫ちゃんです。内服開始後4~8週間後に発症すると書かれた本がありますが今回の症例では内服開始後3か月半後に発症しています。目の上や、耳根部の毛が薄くなったあたりによく出ます。
副反応がでたら内服薬を止めて手術することがお勧めされています。

深在性膿皮症

13年06月24日

 皮膚において細菌が増殖する膿皮症は、表在性膿皮症と深在性膿皮症に分けられます。このうち皮膚の深部、主に毛包より下に起きる感染症を深在性膿皮症といいます。
このタイプの膿皮症は病変部の炎症が強く、痒みだけでなく強い赤みや痛み、熱感、浮腫、浸潤が認められることもあります。痂皮の下には潰瘍化や瘻孔(穴)が見られ、出血や、膿が排出されます。
毛包炎に続発するものや、咬傷などの外傷、異物に起因して起きるものなどがあります。
深在性膿皮症は表在性のものと比べてやっかいなことがしばしばで、治癒には時間がかかり、1か月以上かけて粘り強く治療していくことが必要です。また、動物が患部を気にして舐めることによって悪化させてしまうので、内服や消毒だけでなく、しっかり治るまで舐めないようにすることも重要です。場合によっては外科的処置や基礎疾患の探索のために全身状態の評価も必要となってきます。
皮膚病とは言えども侮らず、最後まで根気よく頑張ることが大切です。

やかんの把手(とって)

13年06月19日

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肘の部分にできる腫瘍は手術を行うことが大変な症例が多くあります。大きくなって来院されることがよくあり、腫瘍自体が肉腫、血管周皮腫、肥満細胞腫といった悪性度が非常に高い腫瘍が出来やすい場所でもあります。おまけに足の部分は皮膚に余分がなく苦労致します。やかんのとってと言われる手術方法が役に立つことがあり、数頭続いてこの方法で事なきをえております。肩に近い部分の皮膚を剥離し筒状にして肘に縫合します。生着した後、取っ手の部分を切り取って終了です。

脱毛症X(アロペシアX)

13年06月10日

 ポメラニアンに多く認められ、頭部・四肢端以外の非炎症性の両側対称性脱毛症を脱毛症Xと言います。ホルモンレセプターの異常などが原因として考えられてはいますが。はっきりした原因は不明です。ポメラニアンの他に、サモエド、ハスキーなどの北方犬種に多くみられます。初発では頸部や大腿部のアンダーコートのみが脱毛しますが、次第に体幹全体が脱毛し、色素沈着も生じます。頭部と四肢端の毛は残り、また傷を負った部位では毛が再生するというのも特徴的です。
 皮膚症状は特徴的なのですが、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症の除外も重要です。毛包は委縮し休止期になっています。
 3歳未満の未去勢雄に多く、性ホルモンの関与も考えられていることから避妊・去勢手術が治療法のひとつになります。またトリロスタンという副腎皮質ホルモン合成阻害薬も有効です。投薬量を減少することはできても、中止すると再び脱毛するのが普通なため、生涯にわたる治療が必要なことが一般的です。しかし継続しても効果のみられない症例もあります。

重症筋無力症

13年06月05日

 重症筋無力症は、骨格筋の神経筋接合部におけるアセチルコリンの伝達障害よって引き起こされる易労性の筋虚弱が認められる疾患です。先天性と後天性のものがあり、多くは後天性です。
 先天性重症筋無力症は、遺伝的なアセチルコリン受容体の機能障害が原因となり、幼若齢(1歳未満)で発症します。ジャック・ラッセル・テリア、スプリンガー・スパニエル、サモエド、スムース・フォックス・テリアおよびシャム猫や雑種猫などでの報告があります。
 後天性重症筋無力症は、免疫介在性あるいは腫瘍随伴性にアセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生され、アセチルコリン受容体の絶対数が減少することが原因となり、比較的若齢(1~4歳)および高齢(9~13歳)で発症することが多いです。
 症状は、運動に伴って徐々に発現する局所的(顔面筋や後肢など)あるいは全身的な筋力低下から四肢不全麻痺、嚥下障害、流涎や吐出、巨大食道症などです。典型例では、しばらくの休息後には一時的に回復し、またしばらく運動すると脱力すような症状が見られます。
 診断は、特徴的な臨床兆候から歩行検査や眼瞼反射などを反復して行い、徐々に反応の低下が認められ、休息後に反応が戻ることに再現性がみとめられれば本症を疑うことが出来ます。その他、簡易で比較的信頼性の高い検査として、塩化エドロホニウム刺激試験(テンシロン試験)や抗アセチルコリン受容体抗体の測定などがあります。
 治療は、抗コリンエステラーゼ阻害剤や免疫抑制剤などが使われます。重症筋無力症は、は前述の通り、嚥下障害や巨大食道症が認められることがあるため、内服が困難な場合は注射による治療が必要な場合もあります。