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太った猫で多い肝リピドーシス
10年08月31日
ストレスがかかる出来事、あるいは病気によって猫が食欲不振に陥ると、肝臓に脂肪が蓄積され脂肪肝になります。これを肝リピドーシスといいます。
食べ物から栄養を得られないために、体脂肪を分解してエネルギーを得ようとしますが、肝臓での脂肪処理能力には限界があるため、肝臓に脂肪がどんどん蓄積されることで脂肪肝になります。太った猫では動因される脂肪が多いために、肝リピドーシスが発生しやすくなります。蓄積した脂肪のために肝臓は腫大し、黄疸、体重減少、下痢、嘔吐、元気消失などが症状として現れます。
治療において最も重要なことは、基礎疾患の治療を行うとともに、栄養補給を行うことです。食欲刺激剤を与えたり、それでも足りない場合は経鼻カテーテルや胃瘻チューブを設置して栄養補給を行います。
糖尿病、腎不全、腫瘍などの病気で食欲不振に陥りますし、またある種の薬剤や毒物での肝障害で肝リピドーシスが起きる事があります。特に太った猫では要注意なので、猫がごはんを食べないというときはご相談ください。
犬のアトピー性皮膚炎
10年08月24日
犬のアトピー性皮膚炎は皮膚のアレルギー疾患として最も多くみられる疾患で、一般的に1~3歳で臨床兆候が現れはじめます。初期には季節性の場合もありますが、次第に通年性になります。(ごく軽度の症例では、季節性のままの場合もあります)典型的な症状は、顔面、指趾、耳、鼡径部などの紅斑や痒みで、そのほかに皮膚や耳に感染症を伴うことが多いです。ほとんどの症例では環境アレルゲンが引き金となって症状が現れますが、食物アレルゲンや非アレルギー性(内因性疾患など)に症状がでることもあります。
アトピー性皮膚炎は環境アレルゲンや、皮膚の二次感染、食物アレルギーなどの増悪因子によって症状が悪化することがしられています。アトピーの治療は炎症と搔痒をコントロールするとともに、シャンプーや抗菌薬、食餌中のアレルゲンの特定、除去などをおこなうことによって増悪因子をコントロールすることが重要です。
さらに近年、皮膚のバリア機能の障害が増悪因子になっているという報告もあります。これは皮膚のバリア機能の障害によって、アレルゲンの浸透性が高まるからであると考えられています。さらにアトピー性皮膚炎が出やすい部位(顔面、指趾、耳、鼡径部など)は他の部位に比べて浸透性が高いことも知られています。これらのことから、皮膚のバリア機能の改善を行うことがアトピー性皮膚炎の予防につながるのではないかと考えられます。
ネコの糖尿病
10年08月17日
ネコの糖尿病の発生には、年齢、体重、性別、遺伝的素因、基礎疾患、その他多くの要因が関与していると考えられていますが、これらの要因がインスリンの感受性を低下させて高血糖を生み出し、持続的な高血糖がインスリン分泌細胞の機能不全を招くことによってインスリン不足になり、さらなる高血糖を生み出すという病態をとります。つまり、中年齢以上の雄に発生が多く、肥満は糖尿病の発生率を3~5倍にすると考えられています。また、食事もネコの糖尿病の発生要因と考えられており、炭水化物を多量に含む食事はインスリン感受性を低下させるために糖尿病発症のリスクを高めると考えられています。さらにネコの糖尿病は、慢性膵炎や腎不全、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症など他の疾患から二次的に起こる「二次性糖尿病」の発生も少なくありません。
糖尿病の初期では、飲水量が増える、尿量が増える、食欲が増す、痩せてくる、毛づやがなくなる、などの症状が認められます。さらに進行すると糖尿病性ケトアシドーシスという状態になり、元気がなくなる、食欲がなくなる、嘔吐するなどの症状が発現します。
診断は、症状、血液検査による高血糖、尿糖の確認によって行われます。
治療は、インスリンの注射が必要となる場合が多いです。一部では食餌変更、経口血糖降下剤、併発疾患の治療によってインスリンを使わずに維持できる場合もあります。
糖尿病は、初期の段階で発見することが難しく、状態が悪くなってから病院に連れてこられる場合が多い疾患です。普段からこまめに体重のチェックをしたり、水を飲む量や尿量に気を配ったりする事が早期発見に繋がると思われます。
天疱瘡
10年08月10日
天疱瘡は、ヒトのみならず、犬、猫、ウマ、ヤギなどにも発症する自己免疫疾患であります。犬の天疱瘡は、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡とに大別されます。犬尋常性天疱瘡は、粘膜、粘膜皮膚境界部、皮膚のいずれかに、水疱、糜爛が認められます。犬落葉上天疱瘡では、皮膚に限局した膿疱、びらん、痂皮が認められます。病理組織検査では、尋常性天疱瘡では、皮膚基底層直上に、落葉状天疱瘡は、表皮上層において表皮細胞間接着の傷害による表皮内裂隙の形成が認められます。また症例の70〜80%で表皮細胞間に免疫グロブリン沈着が認められますので、ヒトと同様に、天疱瘡は、角化細胞同士の接着が自己抗体によって障害された結果、皮膚や粘膜に水疱、膿疱、びらんが形成されると考えられています。犬では、落葉状天疱瘡がもっともよく認められる自己免疫性疾患であると報告されています。その臨床症状は、病変が皮膚に限局されていることであります。よく認められる症状は、顔面、特に鼻稜、眼瞼、耳介皮膚における膿疱、発赤、痂皮形成です。また足底の角質増多が認められることが多くあります。尋常性天疱瘡の臨床症状は、口腔粘膜での水疱およびびらん形成が特徴であり、落葉状天疱瘡と異なり顔面の症状は少ないです。他に肛門周囲、性器周囲の粘膜皮膚境界部に皮診を認められることも多く、腋窩、そけい部にびらん、潰瘍が認められます。水疱は脆弱です。
天疱瘡の診断は、膿疱の細胞診、皮膚病理組織学検査、免疫学検査があります。
治療法はステロイドを主流とした、免疫抑制療法であります。その治療は一生にわたります。また日光をさけることで、症状が軽減する場合もあります。
喉頭麻痺
10年08月03日
喉頭麻痺は喉頭の動きが上手く動かなくなり、上部気道が閉塞する病気で、中年齢から高齢の犬に多い疾患です。好発犬種として、ラブラドール・レトリーバーやアイリッシュ・セッターなどの大型犬があげられます。病因としては、原因不明なことが多いですが、神経疾患や自己免疫疾患、内分泌疾患や腫瘍などが背景にあるものもあります。
症状としては乾いた咳、声の変化、呼吸時の雑音などがみとめられ、徐々に進行していくものですが、興奮、ストレス、環境等によって急性の呼吸困難をひきおこします。チアノーゼなどを引き起こし、死にいたることもあります。呼吸困難時の迅速な気道閉塞の解除が必要であり、それに引き続いて状態の安定化が重要です。
治療として、外科的な処置が有効です。軽度の場合には、環境の改善および安静の上、コルチコステロイド療法で管理できることもあります。