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9月25日JAHA腫瘍学(オンデマンド)を視聴しました

23年09月25日

リンパ腫から固形癌まで、困難な腫瘍との戦い方

腫瘍内科再診アップデート

松山 新 先生
米国獣医内科専門医(腫瘍科)
アジア獣医内科学専門医(腫瘍科)
サスカチュワン大学 助教

リンパ腫や肥満細胞腫など普段の診療でよく遭遇する腫瘍に対する内科的なアップデートについて講義していただきました。 

内容としては基礎的なグレード分類から最近の論文を含めた抗癌剤の治療成績に関してのお話や、実際に先生がどのような治療を行っているかなどより実践に即した内容まで幅広い内容を聞くことができました。 

癌という病気は完治するものではなく、また抗がん剤に関してもどうしても後ろ向きな感情を持ってしまいがちではあります。きちんとした根拠を説明させていただき納得した上で、病院と飼い主様とで協力しながら治療を行っていけたらと思っております。 

そのためにも今回勉強したことをしっかりと吸収し、フィードバックしていくとともに、今後もしっかりと勉強してきたいと思います。 

 

S.A 

KYOTO ARセミナー  前十字靭帯断裂に対するTPLO法

カテゴリー:セミナー

23年09月24日

前十字靭帯断裂に対するTPLO

岩田 宗峻 先生 東京医科歯科大学

  KYOTO AR主催の実習型セミナーに参加してきました。近年では模型を用いたドライラボが盛んになっており、講義だけでなく実際に手を動かして技術を学べるセミナーが増えております。今回は前十字靭帯断裂に対するTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)についてのセミナーでした。

 前十字靭帯断裂は動物病院でよく遭遇する疾患で、前十字靭帯の変性、断裂により後肢の跛行を呈するものです。手術法がいくつか考案されており、ラテラルスーチャー法やTPLO法が手術法として選択されます。人の脛骨は大腿骨に対して垂直に位置していることからもともと前十字への負荷が少ないらしいですが、動物の脛骨は大腿骨に対して斜めに位置しており、そのせいで脛骨が前方へ滑るように負荷がかかるため前十字靭帯への負荷も増大します。TPLO法は、大腿骨に対して斜めだった脛骨を、水平方向になるように骨切り・移動させることで脛骨の前方変位の力を低下させ膝関節を安定化させる手術法です。つまり人の膝に近づける手術、ということになります。

 TPLO法には独自の器具が必要であり、理論もそうですが器具の扱いにも慣れが必要です。講師の岩田先生は前半部分では理論の説明を分かりやすく講義していただき、後半部分ではTPA測定や術式を解説していただきました。実際にはランドマークとなる部位が見えないことや、重要な血管を傷つけないようにするなど各種注意点も指導していただきました。

 このような実習型セミナーに参加すると良い刺激をもらうことができます。これからの診療に活かしていこうと思います。

 T.S.

9月18日 志学会年次大会に参加してきました

23年09月18日

今までの術後管理に外科代謝栄養のエッセンスをプラスしよう!

酪農学園大学 鳥巣 志道先生 

志学会の獣医師セミナーに参加してきました。 

今回のご講演は、たびたび志学会で講義をしてくださっている鳥巣先生による外科代謝栄養に関して詳しくお話していただきました。 

外科代謝栄養というと聞きなれない言葉ではありますが、外科手術において麻酔やそれ自体がどのように体の代謝に影響を及ぼし、それに対してどう付き合っていけばよいのか。

高齢の動物に対する麻酔にかんして等、普段の経験で確かにあるある!でも具体的に説明するとなると難しい。

といった事を理論的に説明していただきました。 

そのうえで外科手術時のみではなく、肝リピドーシスや栄養失調時に不足し、転嫁するべきビタミンなどに関してのお話していただき、栄養学の知識のアップデートできたと思います。 

普段の診療ではあまり気にしていなかった分野の情報になるので今までの治療にプラスして意識していきたいと思います。 

 

S.A 

猫の大動脈血栓栓塞症(肥大型心筋症)

23年09月17日

猫の肥大型心筋症に伴う大動脈血栓栓塞症は緊急性を伴う病気です。症状は閉塞する場所によって様々ですが、鞍状血栓症が最も多く突然両後肢が動かなくなり痛みのためかほとんどの症例で大きな声でニャアニャア鳴き続けるます。治療は内科療法や外科療法での血栓の摘出があります。治療法に関しては、うっ血性心不全や肺水腫、低体温、DIC,不整脈のため手術をしても予後が不良ではないかという考え方から血栓溶解療法を指示する考え方もあります。しかし内科療法では、残念ながら死亡率は2/3と高く、後肢が壊死してしまう可能性もあるため安易にお勧めできません。心臓の中に血栓がある場合摘出してもすぐ再血栓を起す場合があるため要注意ですが、早期の摘出により経過が良好なケースが多くあります。症例によって判断が必要ですが当院でいままで行った手術の経過は9割が順調に退院しており、長いものでは6年以上も生存してくれた猫ちゃんもいます。再灌流症候群のこともありできるだけ早期の治療が必要です。写真の血栓は、先日診察にこられ緊急で摘出した大動脈血栓です。無事退院してくれました。もし後肢が動かなくなりニャアニャア鳴き始めたら大動脈血栓栓塞症を疑いできるだけ早い診察をお勧めいたします。 S.S

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慢性腎臓病で貧血に?

23年09月05日

ネコちゃんにおける代表的な病気として「慢性腎臓病」があることは知っている方も多いと思います。その腎臓病によって生じる貧血、いわゆる腎性貧血という病態があるということをご存知でしょうか?

腎臓は尿を生成し老廃物を体外に排出するだけでなく、たくさんの機能を有する臓器です。そのひとつとして、造血機能の促進があります。腎臓の間質で生成される「エリスロポエチン」というホルモンは、赤血球の前駆細胞に働きかけ赤血球の産生を促します。慢性腎臓病が進行すると、エリスロポエチンの産生が不十分となり、貧血を起こす場合があります(腎性貧血)。

腎性貧血になると、全身に十分な酸素を送れず、歯茎や目の粘膜が青白くなることもあります。また、赤血球は酸素を運んで体温を維持する働きがあるので、腎性貧血になると体温が下がって冷えやすくなります。結果として、ネコちゃんは元気がなく動かなくなり、食欲が落ちて痩せてくる可能性があります。これらの症状は慢性腎臓病の症状だと勘違いする方も多いため、当院では定期的な血液検査で腎機能をチェックするとともに、貧血が進行していないかも確認しています。

腎性貧血の治療としては鉄分の補給とともに、不足している「エリスロポエチン」のホルモン剤を使うことで貧血の進行を防ぎ、症状を和らげることができる可能性があります。これまで、犬猫用のエリスロポエチン製剤は開発されておらず、ヒト用のものを代用して治療を行っていましたが、先日『エポベット』という猫のエリスロポエチン製剤が世界初で承認されました。エポベットは2週間間隔で注射をすることが推奨されており、これまでのヒト用製剤と比較して投与間隔が長いことが特徴・メリットです。これまでの研究では、エポベットを2週間間隔で6回皮下注射することで8割以上の猫ちゃんで貧血の改善が認められたとの報告もあり、今後腎性貧血で悩む猫ちゃんの新たな治療薬として使用されることが期待されます。

D.N.

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