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低温火傷

19年11月20日

寒くなってきましたね

「雪やコンコンあられやコンコン~♪」のフレーズでお馴染みのあの曲。「イヌは喜び、庭かけ回り、ネコはこたつで丸くなる」とのことでインターネットで調べてみると、こたつに入るかわいいワンちゃん、ネコさんの動画や画像がヒットしますよね?今回は冬に使われる暖房器具に関してのお話です。

暖房器具といえば?こたつ!ストーブ!ホットカーペット!などなど様々ですが、火や電気を使うものはある程度の注意が必要です。イヌやネコも人と同じように火傷の危険性があります。また、低温やけどという言葉を聞いた人も多いでしょう。低温やけどとは、ホットカーペット・湯たんぽ・ストーブ・こたつ・ヒーターなどに、6~10時間温められた状態で起こるやけどです。やけどをすると、以下のような症状があらわれるので注意深く観察するようにしましょう。

・やけどした場所を気にしている

・やけどをした場所の皮膚が赤い

・やけどをした場所に水ぶくれができている

・皮膚の皮が剥けている

・筋肉が見えている

やけどには軽度~重度ものもがあり、軽度であれば少し皮膚が赤みを帯びるくらいですぐに治癒するのですが、水ぶくれの場合は治癒に10~14日、皮膚の皮が剥けている場合は1ヶ月以上、筋肉が見えている場合は皮膚移植が必要となる場合もあります。暖房器具の場合、ケージやサークル内であると行動範囲が狭まるので低温やけどのリスクが高まります。ホットカーペットの上にケージやサークルをおいて長時間ホットカーペットを使用したり、ヒーターの熱を直接当たるようにするなどは避けましょうね。

K.G

neko kotatu.jpg

第66回ハワイ獣医師会年次大会

19年11月14日

11月7日から10日まで、ハワイ州のホノルルにて開催されました第66回ハワイ獣医師会年次大会に参加しました。
様々な分野で活躍される先生方のご講義を受講することができました。
講義のあった8日から10日まで、特に印象に残ったトピックについて1日ずつ書き留めておきたいと思います。
8日:Clandestine Hidden Common Dental and Oral Disease(Dr.Stepniuk)
題名の通り隠れた、麻酔下で検査しないとわからない歯科疾患について実際のケースを紹介して頂きました。
外側からは歯垢、歯石、歯肉炎なく、歯周ポケットも外側は問題ない、通常の口腔レントゲンでも問題ない、臨床症状としては軽い咳がでる、という症例で、口蓋側のみの歯周ポケットが深く、口鼻腔瘻があった、という症例は驚きでした。麻酔をかけて口腔内の検査をしなければ診断の不可能だった症例です。
他に紹介のあったケースには短頭種で、埋れたままになっていた臼歯が嚢胞となって周囲の歯や骨を溶かし、外科的な処置が必要なものがありました。
そこまで悪化する前に発見されて抜歯していれば、大掛かりな処置は必要なかったであろうため、欠歯、また数が多い歯についてのレントゲンの重要さのわかる症例でした
AHAの現在のガイドラインでは犬猫は年1回の歯科レントゲンを推奨しているようですが、国内では行なっていることのほうが少ないでしょう。麻酔のリスクもあるためなかなか今すぐに健康診断的に取り入れられない部分もあるのではと思われます。まずは避妊・去勢時に、欠歯等の異常があれば、歯科レントゲン撮影を行うことから始められるでしょうか。
9日:Feline infections Disease Hot Topics(Dr.Lappin)
米国では猫の経鼻ワクチンが使用されるようになりました。また、Dr.Lappinを含めたグループでFVRの経口ワクチンが開発途中です。
Dr.Lappin本人も10年前には不活化ワクチンは効力に不安が残るという話をしていたそうですが、エランコ社の発表で弱毒生ワクチンよりもよい抗体価を示したという報告もあり、(抗体価が高い≠防御できる、ではないと言及されていましたが)、ワクチンについても日々スタンダードが変わっていく様子を目の当たりにしています。
一番私が興味を持ったのは、経鼻ワクチンがナチュラルキラー細胞を活性化し、対象とするウイルス疾患以外の治療に効果が期待できるのではないか、という報告です。抗生剤等を用いた標準的な治療で上手くコントロールできなかった呼吸器疾患の猫で、インターフェロンを用いた群と比べて症状の改善に効果があったそうです。
他にも、猫の皮下注射による従来のワクチンには、接種部位肉腫というリスクがありましたが、経鼻ワクチンではそのリスクがないという点もメリットです。
今はまだ日本では認可されておりませんが、近い将来予防および治療に用いられるようになるでしょう。米国内の新しいワクチンの取り入れ方について、初めて聞いた内容も多く面白く感じました。
10日:MANEGING THE HYPERCOAGULABLE DOG(Dr.Li)
血栓症について、1コマ目は猫について2コマ目は犬についての講義です。動脈血栓は赤血球以外にも白血球、およびNETsと呼ばれる細胞から遊離したDNAなどからも構成されていることなどが最近の研究で分かっています。そのような血栓の成り立ちやフィルヒョーの三要素といった基礎から具体的な症例への治療までお話ししていただきました。
講義の中で、血栓症におけるヘパリンの使い方について、標準量を用いた群と、anti Xa levelを測定して個々に使用する量を設定した群で、血栓形成率が大きく異なるという2010年の報告が紹介されており、ヘパリンの使用量について再考する必要性が示唆されていました。
また、学会期間中に開催されましたカクテルパーティーでは楽しいフラやハワイ語紹介の余興もあり、今回の学会に参加されました全国各地の先生方とも交流させていただき、充実した時間を過ごすことができました。
M.K

キャットリボン運動

19年11月10日

 みなさんキャットリボン運動というのを聞いたことがあるでしょうか?これは猫ちゃんの乳がんについて多くの人たちに知ってもらうことを目的とした運動です。

 人の乳がんの啓発運動はピンクリボン運動として知られていますが、これは1980年代アメリカではじまり、行政や市民に対して積極的に働きかけたことにより今では多くの方の意識改革を果たしただけではなく、政府や研究機関も一丸となる大きな動きになりました。このピンクリボン運動からキャットリボン運動と名づけられました。

 多くの方は、猫ちゃんに乳がんがあることを知りません。猫ちゃんの飼い主さんたちでさえ、知らない方が多くいらっしゃいます。乳腺にしこりができた場合は80%が悪性(それもすごく悪性度が強いものが多い)で転移も多く、積極的な治療が望まれます。もちろん腫瘍が小さいほうが経過が良いです(2cmが大事なラインです)。そして早期の不妊手術が乳がんの発生率を低下させます。これらのことは、猫ちゃんの乳がんの基本知識ですが、これらをみなさんご存じでしたでしょうか?まずは猫ちゃんのご家族に知ってもらうこと、そして正しい理解をしてもらうこと。それを目的としてキャットリボン運動ははじまりました。

 この運動は一般社団法人日本獣医がん臨床研究グループ代表理事の小林哲也先生が主導されています。いまはホームページも開設され、自宅での乳がんのセルフチェックについても載っていますので、ぜひ参考になさってみてください。そしてもし猫ちゃんにしこりを発見したら、、放っておかずにすぐに動物病院へ行ってくださいね。

キャットリボン運動公式ホームページ

https://catribbon.jp/

T.S.