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SCCEDS
16年10月30日
SCCEDSとは難治性角膜潰瘍、再発性上皮びらん、無痛性角膜潰瘍、また、遺伝的にボクサーに多いためボクサー潰瘍角膜ともよばれる角膜潰瘍の特殊な病態です。実質の表面に無細胞の硝子膜が形成されているために、角膜上皮と角膜実質の境界となる基底膜が存在せず、潰瘍周囲の角膜上皮は実質に接着しないまま不整に増殖している病態であると定義されています。普通の角膜潰瘍とは一見似ているものですが、角膜への外傷等で起こる一般的な角膜潰瘍と違って、角膜の上皮と実質の間に隙間がある状態なので、角膜上皮と実質の間の接着分子の異常等が原因であると考えられていますが、実際の原因は未だ不明です。
そのため、普通の角膜潰瘍と治療法が異なります。SCCEDSは点眼薬だけでは治癒せず、びらんした角膜上皮のデブリードメントが必要です。また、角膜格子状切開や表層性角膜切除等の外科手術を併用するのが一般的です。また、普通の角膜潰瘍に格子状切開は禁忌であるため、SCCEDSと普通の角膜潰瘍との鑑別がとても重要となります。難治性と名のある通り治るのに時間がかかり、治療を行わないと長期にわたり症状が続くものであるため、最近目をショボショボさせている、角膜が剥がれている等症状に気づきましたら、早めに診察にいらしてください。
S.K
犬の糞食行動
16年10月23日
外出注意!猫の白血病
16年10月16日
猫白血病ウイルス(FeLV)はレトロウイルス科ガンマレトロウイルス亜科のウイルスであり、主な感染経路は接触感染によるものです。毛づくろいや共同で飲食することによって成立し、唾液や鼻汁が媒体と考えられています。また、その他にも、経胎盤、経乳汁および性交感染によって成立します。感染猫は屋外飼育の猫が多く、感染した猫の多くは4年以内に死亡すると言われています。
FeLV感染症の猫の症状は様々です。一般的には食欲不振、体重減少、沈鬱といった非特異的な症状が見られます。FeLV感染症では、しばしば免疫不全症が発生するため、口内炎が発生しやすくなります。また、前縦隔洞や腎臓にリンパ腫が発生しやすく、その場合には呼吸困難や腎臓腫大、尿毒症などが認められます。造血器腫瘍が発生しやすいため、発熱、可視粘膜蒼白、出血傾向が見られることがあります。さらに眼のリンパ腫によって、縮瞳、眼瞼痙攣、眼球混濁が発生します。その他、FIP、トキソプラズマ、クリプトコッカスに重感染した場合には、神経症状が見られることもあります。
FeLVの診断は血清中のウイルス抗原をELISAもしくはIFAにて検出することによって行われます。現在は簡易型キットが普及しており、迅速にFeLV感染の検査ができます。
治療に関してはFeLV感染症によって発生する疾患が多彩であるため、個々の疾患に対して適切な処置を行うことが重要です。
予防法としては、猫を室内飼育にし、FeLVとの接触を防ぐことが最も良い予防法であります。飼い主様にはきちんと病気を理解していただき、室内飼育を積極的にしていただけたらと思います。
D.T
水晶体偏位
16年10月09日
水晶体は眼球の中のレンズの役割をしており、前房と硝子体の中間に毛様小体に支えられて存在しています。しかし何らかの原因でこの毛様小体が損傷してしまい、水晶体が前房あるいは硝子体に脱臼してしまう状態のことを水晶体偏位といいます。
水晶体の後方偏位、つまり水晶体が後ろの硝子体の中に落ちている場合は、軽度のブドウ膜炎が起こることで結膜の充血を認めることがありますが、基本的に保存的治療によって経過観察をしていくことが多いのですが、逆の前方偏位、つまり水晶体が瞳孔を超えて前に出てきてしまうと問題になってきます。というのも前方偏位は緑内障を併発してしまうことにあります。ただし、緑内障から眼圧の上昇によって水晶体が前方偏位してしまうこともあるので診断には十分な注意が必要です。たとえば両目の眼圧が上昇しており、片方のみ偏位が起こっている場合は、原因は緑内障であると考えられます。逆に両目の偏位があって片方だけ緑内障になっている場合には原発性の水晶体偏位と考えていきます。また、瞳孔をしっかり開かせておき、水晶体を自然に戻しておき、そのあと再発しないかあるいは眼圧がちゃんと下がるかといった経過観察でも推察は可能です。
水晶体の前方偏位がある場合は通常急性流や眼瞼痙攣が起き、充血がみられます。涙がいつもより多く、お目目が真っ赤っかになっている場合には水晶体の問題があるかもしれません。緑内障になってしまう前に早めに診察にいらしてくださいね。
S.A
門脈体循環シャントの手術
16年10月08日
猫の甲状腺機能亢進症 手術週間?
16年10月08日
新規の腎機能マーカー:SDMA
16年10月02日
慢性腎臓病(CKD)は私たち臨床獣医師が日常の臨床現場でよく遭遇する疾患です。その評価には血中尿素窒素(BUN)、血中クレアチニン(Cre)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)をはじめとした血液スクリーニング検査、尿中タンパク/クレアチニン比(UP/C)を含めた詳細な尿検査、X線検査、超音波検査などが用いられています。CKDをはじめとした各種腎疾患の病態把握には、糸球体濾過率(GFR)の測定が最も正しく評価できると言われていますが、手技や測定の煩雑さから、あまり実施されていないのが現状です。
近年、獣医療における新たな腎機能マーカーとして対称性ジメチルアルギニン(symmetrical dimethylarginine:SDMA)の有効性が注目され、日本でも2016年7月からアイデックスラボラトリーズ株式会社でSDMAの測定が開始されました。
SDMAは生体における細胞内代謝のうちのL-アルギニン‐NO経路を調節する因子の一つであり、その90%以上が腎臓から排泄されるため、SDMAの測定はGFRを間接的に反映する検査としての有効性が示唆されています。また一部の報告では、BUNやCreよりも早期にCKDを発見できる腎機能マーカーであると言われています。
当院ではSDMAを含む血液スクリーニング検査も実施しております。伴侶動物の高齢化に伴い、CKDをはじめとした様々な疾患に罹患するケースは多くなっています。それらの疾患の早期発見を目的に定期的な健康診断をぜひご利用ください。
H.B.