診療コラム

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予防、病気、しつけ、行動学など、飼い主の皆様に役立つ情報などをコラム形式でご紹介。ぜひご覧ください。

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2020年1月11~12日 秋季合同学会 20年01月15日

先日、獣医療における4分野(循環器、画像診断、麻酔外科、内視鏡)の合同学会が大阪国際交流センターにて開催されました。

今回、私は循環器認定医講習会では大学講義でもなかなか聞くことができない心臓の発生過程から正常・異常心電図までを受講してきました。

ヒトにおいては胎生22日心臓が拍動しまが、そこに至るまでの詳細な発生過程は未だ解明されていない部分が多く残っており、特に心臓には左心房、左心室、右心房、右心室の計4つの部屋に分かれる理由も、その明確な発生機序も不明な部分が多々あります。ちなみにハツカネズミは妊娠期間が約20日間ため、その分化の過程はヒトとは比べ物にならないくらい早い速度ですね。

学会発表では、やはり猫の尿管結石に対する治療法が目立っていました。

最近では猫の尿管結石が増えており、その外科手術には尿管切開術、尿管膀胱新吻合術、ステント設置、SUBシステム設置があり、症例毎にふさわしい選択をしますが、近年では特にSUBシステム設置術が広まりつつあります。

当院においても猫の尿管結石に対してはSUBシステム設置術を選択することが多く、良好な経過を辿っています。

H.F

低温火傷 19年11月20日

寒くなってきましたね

「雪やコンコンあられやコンコン~♪」のフレーズでお馴染みのあの曲。「イヌは喜び、庭かけ回り、ネコはこたつで丸くなる」とのことでインターネットで調べてみると、こたつに入るかわいいワンちゃん、ネコさんの動画や画像がヒットしますよね?今回は冬に使われる暖房器具に関してのお話です。

暖房器具といえば?こたつ!ストーブ!ホットカーペット!などなど様々ですが、火や電気を使うものはある程度の注意が必要です。イヌやネコも人と同じように火傷の危険性があります。また、低温やけどという言葉を聞いた人も多いでしょう。低温やけどとは、ホットカーペット・湯たんぽ・ストーブ・こたつ・ヒーターなどに、6~10時間温められた状態で起こるやけどです。やけどをすると、以下のような症状があらわれるので注意深く観察するようにしましょう。

・やけどした場所を気にしている

・やけどをした場所の皮膚が赤い

・やけどをした場所に水ぶくれができている

・皮膚の皮が剥けている

・筋肉が見えている

やけどには軽度~重度ものもがあり、軽度であれば少し皮膚が赤みを帯びるくらいですぐに治癒するのですが、水ぶくれの場合は治癒に10~14日、皮膚の皮が剥けている場合は1ヶ月以上、筋肉が見えている場合は皮膚移植が必要となる場合もあります。暖房器具の場合、ケージやサークル内であると行動範囲が狭まるので低温やけどのリスクが高まります。ホットカーペットの上にケージやサークルをおいて長時間ホットカーペットを使用したり、ヒーターの熱を直接当たるようにするなどは避けましょうね。

K.G

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第66回ハワイ獣医師会年次大会 19年11月14日
11月7日から10日まで、ハワイ州のホノルルにて開催されました第66回ハワイ獣医師会年次大会に参加しました。
様々な分野で活躍される先生方のご講義を受講することができました。
講義のあった8日から10日まで、特に印象に残ったトピックについて1日ずつ書き留めておきたいと思います。
8日:Clandestine Hidden Common Dental and Oral Disease(Dr.Stepniuk)
題名の通り隠れた、麻酔下で検査しないとわからない歯科疾患について実際のケースを紹介して頂きました。
外側からは歯垢、歯石、歯肉炎なく、歯周ポケットも外側は問題ない、通常の口腔レントゲンでも問題ない、臨床症状としては軽い咳がでる、という症例で、口蓋側のみの歯周ポケットが深く、口鼻腔瘻があった、という症例は驚きでした。麻酔をかけて口腔内の検査をしなければ診断の不可能だった症例です。
他に紹介のあったケースには短頭種で、埋れたままになっていた臼歯が嚢胞となって周囲の歯や骨を溶かし、外科的な処置が必要なものがありました。
そこまで悪化する前に発見されて抜歯していれば、大掛かりな処置は必要なかったであろうため、欠歯、また数が多い歯についてのレントゲンの重要さのわかる症例でした
AHAの現在のガイドラインでは犬猫は年1回の歯科レントゲンを推奨しているようですが、国内では行なっていることのほうが少ないでしょう。麻酔のリスクもあるためなかなか今すぐに健康診断的に取り入れられない部分もあるのではと思われます。まずは避妊・去勢時に、欠歯等の異常があれば、歯科レントゲン撮影を行うことから始められるでしょうか。
9日:Feline infections Disease Hot Topics(Dr.Lappin)
米国では猫の経鼻ワクチンが使用されるようになりました。また、Dr.Lappinを含めたグループでFVRの経口ワクチンが開発途中です。
Dr.Lappin本人も10年前には不活化ワクチンは効力に不安が残るという話をしていたそうですが、エランコ社の発表で弱毒生ワクチンよりもよい抗体価を示したという報告もあり、(抗体価が高い≠防御できる、ではないと言及されていましたが)、ワクチンについても日々スタンダードが変わっていく様子を目の当たりにしています。
一番私が興味を持ったのは、経鼻ワクチンがナチュラルキラー細胞を活性化し、対象とするウイルス疾患以外の治療に効果が期待できるのではないか、という報告です。抗生剤等を用いた標準的な治療で上手くコントロールできなかった呼吸器疾患の猫で、インターフェロンを用いた群と比べて症状の改善に効果があったそうです。
他にも、猫の皮下注射による従来のワクチンには、接種部位肉腫というリスクがありましたが、経鼻ワクチンではそのリスクがないという点もメリットです。
今はまだ日本では認可されておりませんが、近い将来予防および治療に用いられるようになるでしょう。米国内の新しいワクチンの取り入れ方について、初めて聞いた内容も多く面白く感じました。
10日:MANEGING THE HYPERCOAGULABLE DOG(Dr.Li)
血栓症について、1コマ目は猫について2コマ目は犬についての講義です。動脈血栓は赤血球以外にも白血球、およびNETsと呼ばれる細胞から遊離したDNAなどからも構成されていることなどが最近の研究で分かっています。そのような血栓の成り立ちやフィルヒョーの三要素といった基礎から具体的な症例への治療までお話ししていただきました。
講義の中で、血栓症におけるヘパリンの使い方について、標準量を用いた群と、anti Xa levelを測定して個々に使用する量を設定した群で、血栓形成率が大きく異なるという2010年の報告が紹介されており、ヘパリンの使用量について再考する必要性が示唆されていました。
また、学会期間中に開催されましたカクテルパーティーでは楽しいフラやハワイ語紹介の余興もあり、今回の学会に参加されました全国各地の先生方とも交流させていただき、充実した時間を過ごすことができました。
M.K