南が丘動物通信

8月22日 葉月学会特別セミナー~敗血症の治療戦略~ 16年08月28日

敗血症の診断と治療戦略

講師 : 米国獣医救急集中治療専門医 上田 悠 先生

本日はアメリカの専門医の先生の講義でした。敗血症の定義としてのSIRS(全身性炎症反応症候群)から丁寧に教えていただきました。犬、猫におけるSIRSの基準は以下のとおりです。

パラメーター

心拍数(回 / 分)

>120

<140または>225

呼吸数(回 / 分)

>20(もしくは>40

>40

体温(

<38.1または>39.2

<37.8または>40

白血球数(× 103 / μl

<6または>16

>19または<5

上記のうち2つ以上を満たす

上記のうち3つ以上を満たす

ですが、この定義に則った場合集中治療の必要のない症例も多く拾ってしまい、死亡率が10%のものと50%以上のものをひとくくりにしてしまうという問題点があります。

そこで、今年の2月に人医療では死亡予測(率)に重点を置いて臓器障害の有無に注目したqSOFAという 敗血症の新定義が発表されました。qSOFAは呼吸数の低下、精神状態の変化、血圧低下をパラメーターとします。しかし、動物では血圧の測定や精神状態の評価が難しいためqSOFAが獣医療で有用かどうかは懐疑的なようでまだSIRSの方が有用なようです...

敗血症の診断においてCRPの有用性はよく知られていますが、バイオマーカーとしてプロカルシトニン(PCT)が有用なようです。PCTは甲状腺C細胞で産生される、カルシトニンの前駆物質ですが、正常では代謝によりカルシトニンとして分泌されますが、重度感染症では甲状腺外でPCT産生し(全身が内分泌組織として働く?)、血中に分泌されます。PCTは発症後2時間から6時間で優位に上昇します。CRPの上昇は624時間後になるのでより早期の診断が可能になります。

敗血症はより早期(6時間以内)の感染巣のコントロールが動物の生死にかかわります。私たちも1匹でも多くの命が救えるよう迅速な診断・治療を心がけます。

M.M.