南が丘動物通信

4月16日 志学会勉強会 21年04月16日

4月の志学会の月例会は、「犬猫のてんかん診療アップデート」という演題で行われました。講師は日本獣医生命科学大学の長谷川 大輔先生です。

てんかん発作とは、脳のニューロンが過剰に興奮し、けいれんあるいは焦点性運動性、自立神経性、行動的な特徴を有する異常のことをいいます。

細かく、いろいろな分類方法がありますが、今回は「特発性てんかん」について学んだことをお伝えします。

基本的な診断方法は、除外診断となります。

つまり、ほかの病気ではないことを証明することが、特発性てんかんの診断になるということです。

ほかの病気を除外するためには、24時間以上間隔をあけて2回以上の非誘発性てんかん発作があること、発作発症年齢が6カ月から6歳以下であること、発作間欠時に様々な神経学的検査・血液検査および尿検査に以上が認められないことを示さなければなりません。

さらに、MRIや脳脊髄液の検査、発作時の脳波の検査によって、より確定診断に近づけることができます。

「特発性てんかん」と診断された場合、目標をもって治療が開始されます。

その目標とは、「発作を3カ月に1回以下の頻度にコントロールすること」です。

もちろんゼロになるのが理想的ではあるのですが、このペースでの発作コントロールが現在の獣医療の目標とされています。

つまり、3カ月に1回以下のペース、例えば半年間に1回発作が起きる程度であれば、必ずしも治療を開始する必要はないということになります。

しかしながら、愛犬が発作を起こす姿を目撃することは飼い主にとっては衝撃的で、辛い出来事です。

多くの飼い主さまが、発作を起こしたあと急いで来院されますが、果たしてそれが本当に発作だったのか、または別の行動異常であったのか、診察台の上での再現は困難です。

したがって、愛犬が発作を起こしているのを見つけた際には、落ち着いて動画を撮影していただき、前後の状況や発作が続いた時間などを記録していただけるとスムーズに診察が進む場合がございます。

決して珍しい病気ではない「特発性てんかん」、うちの子に当てはまるかも?と感じた場合はぜひご相談ください。S.K

10/7   OPU-VMC Webセ ミ ナ ー 第1回    21年04月07日

胃幽門部の外科手術ーこの症例に外科介入は必要か否か?ー

大阪府立大学 秋吉 秀保先生

今回は秋吉先生の「胃幽門部の外科手術」という内容のセミナーを受講しました。

 胃の疾患の中には内科的な治療では完治せず、外科的な治療が必要なものがあります。今回はその中でも胃の幽門という部位に焦点をあてた内容でした。症例は頻繁ではないが嘔吐を繰り返すことを主訴に来院したワンちゃんで胃潰瘍の原因となる内服等は服用していない、やや高齢のチワワさんでした。鑑別診断としては腫瘍(腺癌、平滑筋腫、リンパ腫、GIST、平滑筋肉腫など)、炎症(好酸球性、肉芽腫性など)、良性の幽門筋肥大、幽門前庭部の粘膜肥大などが挙げられます。検査として有用なのはEcho検査で、この症例では粘膜層の全周性の肥大が疑われました。

 幽門狭窄症には幽門筋肥大によるものと、粘膜が肥大するものがあります。幽門筋肥大は若齢の犬、短頭種の猫に多いといわれ特にシャム猫で多いと言われています。胃前庭部粘膜肥大は高齢の小型犬で発生が多く、粘膜が非腫瘍性に肥大し前庭部がヒダ状、ポリープ状を呈する疾患です。

 この症例では内視鏡で生検を行いましたが、病理診断では粘膜の過形成でした。治療法としては幽門部の肥大を改善しなければならないため、手術で胃の内腔を大きくし肥大部を切除する方法が複数あり、重症度に応じて手術法を選択します。

 今後、今回のセミナーで得た知識を治療に活かし内科的な治療だけでなく、必要ならば外科的な治療すすめられるよう一層努力しようと思います。

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