南が丘動物通信

10/30  葉月会 麻酔・疼痛管理シリーズセミナー 局所麻酔の解剖学と臨床応用 20年10月30日

今回は伊丹貴晴先生の「局所麻酔の解剖学と臨床応用」という内容のセミナーを受講しました。

 動物の医療では人の医療と大きく異る点があります。それは、相手が動物であり、動かないでくださいと言っても動いてしまうという点です。手術ではもちろん、抜歯などでもできるだけ痛みを緩和うることで全身麻酔の吸入濃度を下げたり、麻酔後のスムーズな覚醒も可能になります。よって全身麻酔と局所麻酔を組み合わせることで動物にやさしく、安全な麻酔・処置を行うことが可能になります。

 局所麻酔を安全に実施するための3つのルールがあります。「中毒量算出」これは使用薬剤の濃度の違いに注意し理想体重で算出することを指し、犬では大型犬~小型犬~超小型犬まで体重は様々で、猫に関しては「猫は小さい犬ではない」という認識をもとに、猫として適切な麻酔濃度を算出する必要があります。「陰圧確認」これは投与直前に注射筒に陰圧を加え、血管内投与を避けることを指しています。局所麻酔薬は神経周辺に麻酔薬を投与する麻酔法なので血管にいれてはいけません。「抵抗確認」これは投与時に抵抗がないことを確認することを指し、目的の箇所に確実に投与し、確実な麻酔が行えるよう注意を払う必要性があります。

 局所麻酔の例をあげると、眼内手術や眼球摘出を行う際は全身麻酔に加え「球後ブロック」を行います。ネコでは上眼瞼の背側中央に20°ほど曲げた針を挿入し神経のブロックを行います。犬では下眼瞼の腹外側から挿入し、神経のブロックを行います。挿入部位の違いは解剖学的に犬と猫では目の位置が異なるためです。その他にも耳の手術をおこなうときには大耳介神経、耳介側頭神経とよばれる神経を局所麻酔でブロックし、歯の処置や口周りの手術、抜歯を行う際は上顎神経や眼窩下神経、下顎神経、下歯槽神経、オトガイ神経などをブロックします。ほかの部位にも同じような局所麻酔が存在し、手術の種類によって使い分けます。

 今後、手術や処置の際にはできるだけ動物の痛みを緩和し負担を軽くするため、必要性の有無を適切に判断し局所麻酔を使用するよう努力していこうと思いました。

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10月12日 IDEXX WEBセミナー 20年10月12日

腎臓の評価に自信を持つために ~初期診断から総合評価までの最新ポイント~

講師 小笠原 聖悟 先生

米国獣医病理学専門医(臨床病理)・アイデックスラボラトリーズ株式会社・小笠原犬猫病院

一生のうち少なくとも猫の3頭に1頭、犬の10頭に1頭が腎臓病にかかると言われており、猫では腎臓病が死因の№1、犬でもトップ3に入る、とても重要な病気です、というお話からセミナーは始まりました。腎臓病の動物に合わない日はないというくらい日々の診療で関わる病気です。

セミナーの内容で一番参考になったのは、尿沈渣標本の観察です。病理の専門医である小笠原先生の手技上のコツなどが詳しく聞くことができて良かったです。ふだん尿スティックでの検査がメインでなかなか尿沈渣はルーティンの検査として活用できていない部分がありますが、尿細管の障害を非侵襲的に、また、院内で尿円柱としてとらえられるのであれば、もっと日々の診療に取り入れたいと考えました。コロナ下でもセミナーが受けられるのはありがたいですね。

M.K

葉月会Webセミナー 臨床病理学シリーズ 20年10月11日

体表腫瘤に針を突いてみた―細胞診標本評価の基本―

講師 小笠原 聖悟 先生

米国獣医病理学専門医(臨床病理)・アイデックスラボラトリーズ株式会社・小笠原犬猫病院

葉月会WEBセミナーの臨床病理学シリーズ第2回は、細胞診の基本についてご講義していただきました。

日々の診療において、「○○にできものができました」という症例に遭遇する確率はかなり高いと感じています。

ご家族のおっしゃる「できもの」が腫瘍であるか、炎症であるかということはとても重要ですが、一見して判断できない場合も多数ございます。

その場合にはきちんと細胞診をし、見た目だけでなく根拠をもってして診断を下し、適切な治療につなげる必要があるでしょう。

今回の講義ではその2つの見極め方を詳しく解説していただきました。

より多くの症例に触れ、診断の精度を上げていけるよう精進いたします。S.L