南が丘動物通信

7月31日 戸島篤史の画像診断教室 第3回Webセミナー 21年07月31日

今回は咽喉頭の画像診断に関する内容でした。猫での咽喉頭の疾患では呼吸時の異常音(ズーズー)が主訴であることが多いです。腫瘍は咽頭部が多く、鼻咽頭ポリープかリンパ腫が類症鑑別に入ってきます。鼻咽頭ポリープは先天性、後天性(ウイルス感染が多い)があります。5歳以下で多く、レントゲンでは咽頭部は空気を含む部分であるため普通黒く抜けますが、腫瘍がある場合喉頭の部分の不透過性が亢進します。

 鼻咽頭ポリープは表面が繊維質で固く、ここがリンパ腫との大きな違いです。鼻咽頭ポリープは2パターンあり、咽頭に伸びるタイプか耳の方に伸びるタイプがあります。どちらも外科的な切除(引っこ抜く)が治療法として挙げられます。外科的切除すると術後ホルネル症候群、斜頸になる可能性があるので事前のインフォームが大切です。数週間したらホルネルの症状は改善することが多いとされています。リンパ腫であれば表面がグズグズで牽引できず、切除したものを顕微鏡で見ることで診断ができます。線維肉腫も類症鑑別に上がりますが、若齢では可能性は少ないため年齢を含めた総合的な判断が必要になってきます。耳管の近くにできるのもであれば鼻咽頭ポリープを疑い、若齢でも耳管と関連していないものはリンパ腫を疑う必要があると考えられます。

 腫瘍以外でも同じ症状を呈するものに鼻咽頭狭窄があり、猫では鼻咽頭の異常で胸腔が陰圧になり、食道裂孔ヘルニアになる症例、呑気による食道拡張を併発する症例では食欲不振で削痩する症例もいるので注意が必要です(鼻咽頭ポリープでも同じ症状を呈する症例もいる)。pet_echo_kensa_cat.png今回のセミナーを通して鼻咽頭の画像診断の新たな知識を得られたので今後の診察に活かしていこうと思います。

K・G

2021/7/27 鍼灸や漢方をどのように生かすか臨床例のご紹介 21年07月27日

国際中獣医学院日本校 講師 豊永先生

 頚椎椎間板ヘルニアのリハビリとして中医学を用いた症例でした。8歳のメスのドーベルマンで頸部椎間板ヘルニアの手術を受けるも2ヶ月経過しても起立ができずにいました。治療としてはビタミン剤の投与と漢方の処方、頸部に温灸を週1回で計20回の施術を行っていました。漢方は血液の流れをよくする目的で真武湯・疎経活血湯を使用していました。温灸で使用したのは風池、後肢少陽胆経、天柱、後肢太陽膀胱経、頭百会、督脈、大椎、大序、環跳でした。風池は目、鼻、口、耳などの動きを改善する作用があり頭や目をすっきりさせる働きがあります。認知症などにも効果があるとされています。後肢少陽胆経は後肢麻痺やてんかん、目の疾患に効果があるとされています。天柱は熱を抑え、頭と目をすっきりさせ、頸部・後頭部がこわばって痛むときに使用されます。後肢太陽膀胱経は脊髄疾患、関節疾患、泌尿器疾患、眼科疾患に効果があるとされます。頭百会は脳を覚醒させ眩暈、震え、痙攣などの症状を改善します。督脈は胃腸炎、肝胆疾患、免疫力増強、気管支炎、肺炎、脊髄疾患など様々な効果があります。大椎は呼吸器系や肩・腰背部の痛みなどに効果があります。大序は強筋壮骨作用、環跳は消炎解熱作用があります。経過としては8回目の施術で起き上がろうとする仕草がみられ、14回目の施術で後肢を支えると前肢で歩けるようになり、20回目の施術で不安定ながら歩行できるようになったそうです。西洋医学が部分的な治療を行うのに対し、中医学では体全体の働きを高め、動きや作用を補うことで治療を行います。中医学ならではの働きにも目を向けこれからの診察に生かしていければと思います。

K・G

7/9 葉月会 感染症学シリーズセミナー 第一回 21年07月09日

今回より新しいシリーズセミナーがはじまりました。東京大学農学生命科学研究科 付属動物医療センター 特任助教 茂木朋貴先生による感染症学のセミナーを受講しました。

今回のテーマは「感染症診療の基本とグラム染色」とうい内容の講義をしていただきました。

感染症診療の基本ということで、耐性菌がどのくらいの速度で増えていくのか、そのまま耐性菌を放置するとどうなるのか、動画を交えてとても分かりやすかったです。

感染症における抗生物質の治療は経験に基づくものだとばかり考えていましたが、患者背景の理解→感染臓器の特定→原因微生物の特定→抗菌薬の選択→適切な経過観察といった原則を守ることが大切だとわかりました。

正しいグラム染色のやり方も動画で分かりやすく解説していただき、原因微生物の特定にかなり役立つ染色方法だと理解しました。グラム染色により、感染細菌がどのような特徴を持つ染まり方をするのかクイズも交えながらとても分かりやすかったです。

グラム染色の正しいやり方を再度確認できたので、感染細菌をきちんと特定した上で抗生物質を選択できるように、今回のセミナーで得た知識を実際の診療に活かしていこうと考えています。

実際の感染症の診察に繋がり、抗生物質の処方を今一度考えるとてもいい機会となりました。

Y.N.