南が丘動物通信

志学会 月例会 2023年7月21日 23年07月22日

「犬の多中心リンパ腫の診断」

米地若菜先生(奈良動物二次診療クリニック)

 今月の志学会月例会は、犬のリンパ腫の約80%を占める多中心型リンパ腫の診断についてのセミナーでした。

 多中心型リンパ腫は、体表リンパ節をはじめとする全身性のリンパ節腫大、脾臓や肝臓などへの浸潤を特徴とし、病理学的詳細および免疫組織学的特徴によりさらに細分化されます。大きくB細胞性とT細胞性に分けられ、一般的にはB細胞性の方が予後が良いとされますが、B細胞性の中でも進行が早いタイプと遅いタイプが存在します。分類により予後や治療法が異なるため、正確な診断が重要ですが、細胞診だけでは診断がつかないタイプも存在し、その場合は組織生検が必要です。

 また、ステージ(病期)によっても予後が大きく異なるため、腫大しているリンパ節の部位や数、肝臓や脾臓への浸潤、末梢血や骨髄を評価する必要があります。リンパ腫の動物がしんどいのはただリンパ腫だからではなく、リンパ節の腫れによる圧迫や腫瘍の肺浸潤、DICなどが原因であるため、ステージング(病期分類)により動物がなぜしんどいのかを把握し、治療において何を優先するかを決めることが重要です。

 今回の講義により、多中心型リンパ腫の詳細な分類やステージングはリンパ腫のわんちゃんやねこちゃんのしんどさを軽減するためにとても大切であることを再認識しました。

Y.O.

7月8-9日 WJVF 2023 14th Annual Meeting 23年07月11日

 7月8日・9日にホテルニューオータニ大阪で開催されたWJVF(West Japan Veterinary Forum)の年次大会に参加させていただきました。

4年ぶりの現地での開催で、たくさんの先生方や愛玩動物看護師の皆さん、学生さんと一緒に講義を受けることができ、とても有意義な時間でした。

 講義は基礎的な知識を固めるものがほとんどで、より理解を深めることができました。また、救急の現場で活躍されている先生方の講義も大変勉強になりました。

 塗木貴臣先生(TRVA動物医療センター)による「エマージェンシーの鑑別と初期対応」の講義では、意識障害の鑑別として医学において有名な「AIUEOTIPS」の語呂合わせをもとに、A(急性肝不全、アシドーシス、急性血管障害)、I(高/低血糖)、U(尿毒症)、E(脳障害、内分泌、電解質)、O(低酸素)、T(外傷、体温異常、腫瘍、中毒)、I(感染症)、P(薬剤)、S(痙攣・失神、循環不全、低栄養)のそれぞれの病態と初期対応を学びました。救急の現場では「手を動かしながら頭も動かす」ことが重要であり、そのためには正しい知識と深い理解が必要であると実感しました。

 森田篤先生(大阪公立大学獣医臨床センター夜間救急診療科)による「食べると危ない!〜身近に潜む危険な物〜」の講義では、異物や毒物を摂取した場合の対応について学びました。病院に着いてからの対応はもちろん、ご家族からの電話への対応のポイントを教えていただきとても参考になりました。電話では、「いつ、何を、どれくらい」食べたかを聞くことは簡単ですが、誤食物に合わせてプラスアルファの質問やお願いをすることで病院に着いてからの対応をより良いものにできます。

 例えば、キシリトールガムやチョコレートでは商品によって中毒物質の含有量が異なるため、「食べてしまったものと同じものを持ってきてください」とお伝えします。人の解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンは猫において犬より強い症状が出るため「動物種」を確認することが重要です。タバコの浸出液はタバコそのものより吸収が早いため、「来院までに水を飲ませない」ように伝える必要があります。またタバコは胃酸抑制薬により吸収が促進されるため「内服中の薬」があれば持ってきていただくと良いです。

 誤食物によっては毒性が強く、一刻も早く処置しないといけないものもあります。電話で聞くこと・伝えることは誤食物によって異なるため、毒物が引き起こす症状や特性を知っておく必要があると学びました。

 他にも多くの講義を受けることができ、良い経験になりました。今回得た知識を今後の診察に活かしていきたいです。

Y.O.