南が丘動物通信

5月20日 志学会セミナー 16年05月20日

犬の僧帽弁閉鎖不全症

大阪府立大学獣医臨床センター 島村俊介先生

 犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、犬の循環器疾患の8割を占めており、発症すると外科手術以外完治することのない病気です。内科治療では薬等の服用によって症状の進行を抑え、QOLを高めていくことを目標とします。僧帽弁は左心房と左心室の間の弁であり、MRではこの弁の機能不全によって左心室から左心房への逆流、さらには血流の鬱滞によって肺高血圧、肺水腫へと進行していきます。

今回のセミナーでは心臓の解剖からMRの成因、症状による分類、臨床検査といった基礎を再確認するとともに、最新の知見を交えて講義していただきました。特に肺高血圧症の発生がMRに罹患した犬の予後に強い関連を示していることから、肺高血圧症、肺水腫の良好なコントロールが治療のKeyになることが示されました。プロスタサイクリン誘導体、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬のような血管拡張薬の他に、抗がん剤であるイマチニブが、低用量では血管平滑筋細胞に作用し、肺血管リモデリングを抑制することで肺高血圧症に有用であるという報告もあり治療の幅を広げられるようにこれからも勉強していきたいと思います。

S.K