南が丘動物通信

志学会 月例会 23年03月17日

「ソレンシア」について

橋口順子先生(ゾエティス・ジャパン株式会社)

 今月の志学会月例会は、今年の2月に新発売されたソレンシアという注射薬についてのセミナーでした。すでに欧米などの世界では使用されているものですが、遂に日本にもやってきたという感じです。

 人では加齢とともに関節痛に悩まされますが、それは猫においても同様で、加齢、肥満、遺伝などにより関節に負担がかかることで変形性関節症に陥ります。12歳以上の高齢猫の関節疾患の罹患率は90%ととても高いにもかかわらず、猫はその症状が明白でなく、飼い主であるご家族でご自身の猫の関節炎を認識されている方はごくわずかといわれています。ジャンプをしなくなる、活動性の低下、グルーミングの減少、怒りっぽくなるなど日常動作に影響を及ぼしているのですが、それが単に加齢に伴うものと判断されているようです。

 ソレンシアはモノクローナル抗体による、関節症に伴う疼痛を緩和する治療薬です。いわゆるNSAIDsなどの痛み止めと異なり腎臓、胃腸などへの影響も最小限で、かつ1回の注射で1か月効果が持続します。猫は投薬が大変な子も多いため、この投与方法はご家族にとっては非常に利便性の高いものです。

 ソレンシアによる治療も大事ですが、まず猫の関節疾患をご家族に認知していただくことが重要かと思います。関節の痛みを発見するためのチェックシートなどもございますので、高齢猫を飼われているご家族は参考にされたら良いかもしれません。

 講義は動画も交えてとても分かりやすいものでした。今後の診察に活かしてまいります。

T.S.