南が丘動物通信

動物のS F T S 臨床像と対策について 20年06月17日

鹿児島大学共同獣医学部 付属越境性動物疾病制御研究センター 松鵜 彩 先生

今回のセミナーは、動物だけでなく人にも感染する人獣共通感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の動物における臨床像とその対策がテーマでした。SFTSは、ブニヤウイルスというウイルスが原因の疾病で、それらはダニの吸血の際に人や動物に感染します。感染すると致命率は人で30%(重症化するのは高齢者が多い)、猫で60%という報告があり、致命的な疾患です。SFTSの罹患報告が多い時期は4月〜10月で、これはマダニの活動時期と一致しており、四国、九州など比較的温暖な地域で症例数が多くなっています。兵庫県内でも現在までで4匹の罹患が報告されています。

猫におけるSFTSの感染ルート、症状とその経過、検査所見、診断時の治療や対応に焦点を当てて講義していただきました。マダニによる咬傷が主な感染ルートです。さらにそこから感染した猫による咬傷や、体液の付着によって人や犬猫に感染が拡大するといった様式で我々の生活環境内に存在しています。実際、屋外に出ることがある猫やマダニの駆除歴がない猫が有意に感染していることが確認されています。感染すると発熱、消化器症状、汎白血球減少などがみられ、先述したように猫での致命率は60%という報告があります。SFTSは遭遇することが少ない上に、特異的な症状がないので、見逃してしまう可能性が高い疾病です。そうなってしまうと、動物の命に関わってくるだけでなく、感染が拡大して人やその他の動物にも影響してきます。今回のセミナーを通して、マダニの予防の重要性をご家族の皆様にしっかりと説明し、予防をすすめていく必要性を感じたとともに、今後動物たちを診察していく中で遭遇した際に、対応をスムーズにできるように注意しておきたいと感じました。

RI